南西アジア地域の貧困人口は5億人を超え、世界で最も貧しい地域の一つである。域内各国は困難な経済社会問題に直面しながら国内開発に取り組んでおり、援助に対する需要は高い。また、我が国との間には伝統的に友好関係が維持されており、同地域に対し経済社会インフラ整備から基礎生活分野に至る幅広い分野で積極的に支援している。我が国としては、引き続き南西アジア地域を援助の重点対象地域として位置付け、援助を行っている。
同時に、ODA大綱の原則(被援助国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向、民主化の努力等に注意を払う)に十分留意していく必要がある。
98年5月、インドとパキスタンが核実験を実施したため、我が国は両国に対し、新規無償資金協力の停止(緊急・人道的性格の援助及び草の根無償を除く)、新規円借款の停止、国際開発金融機関による対インド融資について慎重に対応することなどを決定した。
我が国は、両国に対しCTBTへの署名・批准等核不拡散への取組を強く申し入れるとともに、2000年8月には、森総理が南西アジアを訪問した際、インド、パキスタン両国にCTBT署名等を改めて求めたのに対し、両国からCTBT発効まで核実験モラトリアムを継続する旨の確認を得た。
2001年10月、両国の核不拡散上の取り組みを評価し、また今後のテロ問題への取組及び南西アジア地域の安定化に大きな役割を果たす両国に積極的な関与が必要との観点から、措置を停止した。
(2) 援助対象分野
政府開発援助に関する中期政策では、以下の分野を重点分野としている。
(ロ) 民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための人材育成、経済・社会インフラ整備等への支援
(ハ) 人口増加や経済成長と関連した環境負荷増大に対応した、環境保全対策のための支援
貧困削減と貧困層の生存の確保のための支援
南西アジア地域では、貧困に苦しむ多数の人口を抱えていることから、貧困対策に資する保健・医療、教育等の基礎生活分野の援助に対する需要は大きい。こうした分野に対しては、無償・技協のほか、NGO事業補助金や草の根無償によるきめ細かい援助により対応しており、人口・エイズの問題や「途上国の女性支援」(WID)へ配慮しつつ協力を行っている。人口・エイズについては地球的規模の問題として重視し、プロジェクト形成調査団の派遣等により積極的な案件形成に努めている。また、子供の死亡率改善の観点から、ポリオ等の予防接種を進めるなどの「子供の健康」への協力も進めている。WIDの関連では、国連の統計によれば、南西アジアは世界で妊産婦死亡率、識字率の男女格差の最も大きい地域の一つとなっており、我が国としてもこの地域での女性支援を強化していく必要がある。
民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための支援
また、南西アジアに対する我が国からの民間直接投資は増加傾向にあるものの、各国の経済社会インフラ、投資環境の未整備のためにいまだ低い水準にとどまっていることから、インフラ整備等への援助が呼び水となり、民間直接投資の促進に資することが期待されている。
環境保全対策のための支援
環境問題については、我が国はODA大綱において重点的に取り組んでいくことを表明しているが、南西アジア地域においても人口増加、貧困等を原因とした森林破壊や都市の生活環境悪化が見られる。こうした問題に対しては、従来より、森林保全や上下水道等の居住環境改善、また洪水対策等防災等の分野に対する協力を行ってきており、今後も拡充・強化していく方針である。
南西アジア諸国への援助に伴う問題点としては、援助対象国の政府部内の調整体制が一般的に不十分なこと、ローカル・コストを賄う予算が恒常的に不足していることなどが挙げられる。こうした状況に対し、我が国としては、現地日本大使館及びJICA事務所・JBIC事務所を通じ、援助政策、実施上の問題点、及びニーズ把握のための対話・協議に常時努めている。またこれに加え、各国との経済協力政策協議、各種調査団の派遣等の機会にも被援助国との緊密な対話に努めている。
政府は、これまでに、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、ネパールに対し、経済協力総合調査団を派遣し、中長期的観点から相手国との政策対話を行っている。