3.我が国政府開発援助のあり方

 大洋州地域の位置付け
 島嶼国は、いずれも若い独立国として、何よりもまず「人材育成」を必要としていること、一次産業依存型経済であり農業・漁業分野の開発・振興が急務であること、基礎生活分野の整備が求められていること等の共通点を有している。しかし、その国家・経済規模、天然資源の有無、伝統的社会基盤、政府の開発計画立案・実務能力等が各国毎にかなり異なっているため、各国毎にその発展段階に応じて開発ニーズを把握し、そのニーズに即したきめ細かい援助を行っていく必要がある。
 また、戦前我が国の委任統治下にあり、我が国に対する重要な漁業資源の供給源でもあるミクロネシア三国(ミクロネシア、マーシャル、パラオ)は、米国との自由連合盟約下にあり、米国から多額の財政支援を受けているが、経済的自立に向けた基盤作りのため我が国からの援助への期待が一層高まっている。
 我が国の大洋州向け援助の基本方針
 大洋州地域は我が国との関係も深く、また、漁業、林業等の資源供給先として重要である。更に、広大な排他的経済水域を有していることから、漁業及び海底鉱物資源に対する期待は大きく、また我が国の海上輸送路という点でも重要である。
 これらの国々は国家規模が極めて小さいこと、一次産品に大きく依存していることから、天災や一次産品の国際市況といった外的要因に対して脆弱である。また、国土が広大な地域に散らばり、国内市場が狭く、国際市場から地理的に遠い等、開発上の困難を抱えている。更に、住民への適正な保健医療サービスの提供も課題となっている。
 このため、経済改革及び民間部門の育成による経済的自立達成の必要性が域内各国の共通認識となっており、各国は行財政改革に自ら努力している。
 以上を踏まえ、我が国としては、政府開発援助に関する中期政策において、次の諸点を重視して支援を行うこととしている。
(1) 経済・社会活動の基盤となり、島嶼国の抱える拡散性・地理的隔絶性を克服するための経済・社会インフラの整備(保健医療を含む)
(2) 経済構造改革への支援
(3) 民間部門の振興に資する人材育成
(4) 環境保全対策への支援
(5) 遠隔教育を通じた人材育成・技術移転等複数の域内国を対象とする広域的な協力の推進
 島嶼国は、概して人口・経済規模が小さく地理的に分散している。また、開発計画立案能力、プロジェクト形成能力、リカレント・コスト負担能力が十分でない場合が多く、立案段階から協力を進める等地域の特殊性を勘案した方法での援助を検討していく必要がある。
 島嶼国が拡散性、遠隔性を克服し、国際市場に参入するためには、運輸・通信手段の充実も不可欠であるが、大洋州地域を総合的に捉えたアプローチも不可欠である。具体的には、地域協力の枠組みで地域国際機関に対する協力として、88年度よりPIFに対し資金協力を行っている(2001年度は約40万ドルを拠出した)。島嶼国の経済的自立を支援するためには民間セクターの育成が不可欠であるため、96年10月我が国はPIF事務局と共同で東京に「太平洋諸島センター」(PIC)を開設し、島嶼国と我が国との間の貿易・投資・観光開発の促進に努めている。
 援助調整・協調
 大洋州地域では、比較的各国と国際機関・地域機関との結びつきが強く、我が国が援助を実施する際には、二国間協力における援助調整及びそれを補完する観点からのこれら機関との協調も重要である。多くの国で様々なレベルのドナー会合が開催されており、我が国もこれらに参加している。
 また、我が国の大洋州地域における援助協調の動きとしては、珊瑚礁保全やトンガ学校教育に関する日米協力、島嶼国の地域保健水準の向上に関する日豪協力があり、更に、南太平洋大学の遠隔教育に対する支援を豪州及びニュージーランドと共同で実施している。この地域における主要ドナーである我が国と豪州、ニュージーランドは、2003年5月の第3回太平洋・島サミットの機会に、沖縄イニシアティブに基づき、三カ国間の協力・協調を進めることとし、共同文書を発表した。
表―2 大洋州地域に対する我が国二国間ODA実績

図―2 大洋州地域及び全世界に対する我が国二国間ODAの形態別構成(2001年、支出純額)
表―3 大洋州地域に対する我が国二国間ODAの形態別・国別・年度別実績

(1) 有償資金協力
(2) 無償資金協力
(3) 技術協力
表―4 大洋州地域に対する我が国無償資金協力の分野別実績

(1) 全体内訳
(2) 一般無償内訳
表―5 大洋州地域に対する我が国技術協力の年度別・形態別実績
表―6 大洋州地域に対するDAC主要援助国の二国間ODAの推移
表―7 大洋州地域に対するDAC主要援助国の国別二国間のODA実績(2000年)
表―8 大洋州地域に対するDAC諸国・国際機関のODA実績
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