[14]モルドバ

1.概  説

 91年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。独立以来、一貫して民主化路線を進んできており、97年以降は中道社会主義を掲げるルチンスキー大統領の下で穏健な改革が進められた。しかし、経済情勢の悪化を背景に、99年2月にチュプク首相が辞任、その後を受けた中道右派のストゥルザ内閣も12月に総辞職、紛糾の末に改革派のブラギシ経済改革省次官が首相に就任した。2000年7月、憲法が改正され、大統領が公選制から議会による選出となり、12月、大統領選挙が実施された。しかし議会は大統領の選出に失敗、ルチンスキー大統領は議会を解散した。2001年2月の議会選挙で、共産党が過半数の議席を獲得。4月、ヴォローニン共産党党首が大統領に就任した。共産党は、ロシア語公用語化、ロシア・ベラルーシ連合国家への参加を公約として掲げていたが、選挙後は、対外政策における現状維持等、現実主義路線をとる意図を表明している。
 モルドバにおける内政上の最大の懸案は、ドニエストル川東岸に住むロシア系住民の独立問題を巡る紛争の解決である。この問題は、ロシア軍の介入を招いたが、92年7月、停戦合意が成立し、97年5月には当事者間で関係正常化の覚書が署名されるなど、紛争の包括的解決に踏み出した。99年には、OSCEイスタンブール首脳会合において、ロシア軍が2002年を期限として徹底することが決議されたが、同決議は期限内に履行されず、解決には至っていない。
 外交面では、憲法に中立外交路線が明記されている。中・長期的にはEU加盟を目標に掲げつつ、西側諸国、旧ソ連諸国等、近隣諸国との関係も重視した現実的な外交を進めている。中でも隣国であるウクライナ及びルーマニア、そしてロシアとの関係が重要となっている。ルーマニアとは共通の言語体系を持ち、歴史的、文化的につながりが深い。しかし、国民の大半が独立を支持しており、ルーマニアとの統合問題は、現状では実現の見込みは低い。ロシアとの関係は、沿ドニエストル問題を巡り微妙であり、深刻なエネルギー債務の問題もある。
 経済面では、モルドバはGNPの約6割を農業が占める農業国であり、葡萄を主要作物としている。旧ソ連の産業構造に組み込まれており、独立後の貿易の相手国もロシアをはじめとする旧ソ連諸国が約半分を占めているため、ソ連崩壊後、同国の経済は混乱し、貿易量も縮小している。また、エネルギー面でも大きくロシアに依存している。沿ドニエストル紛争や度重なる洪水、干魃などの自然災害による被害もあり経済状態は悪化した。一人あたりGNPについては、95年の590ドルから97年460ドル、98年380ドルにまで低下している。98年のロシアの金融危機の影響により悪化した経済は依然として回復しておらず、失業問題、インフレ等の問題に加え、輸出低迷、主にエネルギー債務の増加等による財政赤字の問題も深刻化している。こうした苦しい経済情勢の中で、同国政府は市場経済化に向けての改革を積極的に推進しており、IMF等の国際金融機関と協調しつつ、輸出入規制の緩和、価格自由化、金融財政改革、民営化等の構造調整に努めている。
 我が国との関係では、92年10月にツユ外相、97年12月にグツ副首相、99年1月にタバカル外相が訪日している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) モルドバに対する政府開発援助の基本的考え方
 モルドバは旧ソ連地域と欧州の間という地政学的重要性を有し、同国における民主化・市場経済化に向けた改革努力はODA大綱の観点からも望ましいものとして、我が国はこうした動きを支援していく方針である。
 モルドバに対しては、同国が97年1月よりDACリストパートII からパートI に移行したことに伴い、我が国のODAによる協力を開始し、これまで総額約20億円の無償資金協力、技術協力を実施してきた。
 97年7月の政策協議で、モルドバの開発重点分野が、市場経済化支援、保健・医療等の基礎生活分野、農業分野(基盤整備を含む)であることを確認、これを踏まえ、98年1月には保健医療分野、また99年11月には地方給水分野において優良案件を発掘形成するためのプロジェクト形成調査団を派遣し、99年度、2000年度に、医療機材整備の一般プロジェクト無償を実施した。技術協力については、行政研修、輸出管理などの分野で97年より研修受入を開始している。また、市場経済化支援分野では、2000年度に初の専門家派遣として大統領経済顧問を派遣、高い評価を得た。なお94年及び97年の洪水被害に対する緊急無償援助も行った。
 モルドバに対して我が国は、91年より98年までにユニセフとの協調で、医薬品、医療機器、ワクチンなどを中心に約450万ドルの人道支援を供与しており、更に99年度より今後5年間にわたり、総額約2億円相当の供与を継続していく。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のモルドバに対する援助実績は4.78億円。うち、無償資金協力は3.0億円(交換公文ベース)、技術協力は1.78億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は19.52億円(交換公文ベース)、技術協力5.69億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力
 97年にDACリストパート1に移行したことから、無償資金協力を開始している。2001年度には食糧増産援助として3億円を供与したほか、ミハイ・エミニイスク記念国立劇場に対する音響機材供与のための文化無償資金協力を行っている。
(ハ) 技術協力
 97年7月の政策協議によって確認された重点分野(市場経済化支援、保健医療等の基礎生活分野、農業分野支援)を中心とした協力を行っており、2001年には、財政金融、産業政策、経済政策、人事行政研修、行政管理等の分野で6名の研修生を受け入れている。また、北部地域では、過去に農業生産向上のため化学肥料や殺虫剤が大量に使用されてきた結果、地方農村部住民の飲料水源泉である地下水等の汚染が進み、住民の健康にも影響を及ぼしつつあるため、飲料水水質改善・水資源開発にプライオリティを置き4都市を対象とした「北部地域給水計画調査」を実施、給水施設の改善にかかるマスタープランを策定するとともに、優先事業にかかるフィージビリティスタディを実施している。
3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度実施開発調査案件

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