[11]ポーランド

1.概  説

 89年の「東欧革命」以降、民主化・市場経済化を導入。大統領選挙、議会選挙も着実に実施され、政治面での民主化は完了した。
 政権は連帯系(89~93年)、旧共産党系(93~97年)、連帯系(97~2001年)と交替していたが、2001年に行われた総選挙の結果、「左翼民主連合(旧共産党系)・労働同盟」(SLD・UP)連合が第1党に躍進し、同年10月、第5党の農民党(PSL)とともにミレルSLD党首を首班とする連立政権が成立した。大統領は、95年にワレサ大統領から旧共産党系の現クファシニエフスキ大統領に交替している(2000年再選)。97年5月には、長年の懸案だった新憲法が国民投票で承認され、10月に発効した。
 経済面では、89年以降、一時鉱工業生産は急落したが、民間部門の振興、対EU貿易の活性化等により、92年には経済成長率がプラスに転じ、その後同成長率は、99年4.1%、2000年4.1%と高成長を維持。2001年は内需の低迷と世界経済の減速を背景に1.1%に低下し、2002年も1.3%となった。インフレ率は、2000年まで10%弱で推移していたが、石油価格の安定、国内景気の低迷等を受けて、2001年末時点で3.6%まで低下した。経済成長の原動力は外国直接投資であり、2000年は106億ドル、2001年は71億ドルを記録した。90年以来の累積で、全中・東欧諸国向け直接投資の約4割を占めている。課題として、国家財政の健全化、失業・経済対策、農業近代化(生産性の低さと農村過剰人口)等が指摘されている。
 外交面では、欧州への回帰を最優先課題としている。OECDには96年11月に正式加盟を果たし、NATOには99年3月正式加盟を果たした。EUについては、98年3月より加盟交渉を行っている。中・東欧諸国とは、中欧自由貿易協定(CEFTA)等を通じ良好な関係を維持している。ロシアとの関係では、2002年1月のプーチン大統領の訪問等、要人往来の活発化によって雰囲気は改善されてきている。
 我が国との関係は、伝統的に良好である。97年8月には池田外務大臣(当時)が訪問し、ポーランド側からは、98年2月クファシニエフスキ大統領、99年6月ブゼク首相(当時)、2000年2月ゲレメク外相(当時)が訪日した。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) ポーランドに対する政府開発援助の基本的考え方
 ポーランドは民主化、市場経済への移行の先駆的な役割を果たしていること等を踏まえ、環境、市場経済への移行等に資する分野を中心に技術協力を行ってきている。
 無償資金協力では89年度にWFP経由の食糧援助を実施したほか、91年度から文化無償を実施しており、文化施設に対して機材の供与を行っている。有償資金協力は、89年度に通貨安全基金への拠出(商品借款)を行っている。なお、95年11月に公的信用供与を再開したが、好調な外国投資、対外債務抑制策等を背景に、ポーランド側は受け取りに慎重な態度を取っている。
 技術協力は、89年度から本格的に開始した。生産管理、省エネルギー等の分野を中心に研修員の受入れを行っているほか、専門家の派遣、機材供与も実施している。92年度からは、青年海外協力隊員の派遣を開始している。
 また96年度より、市場経済化促進支援の一環として、産業政策分野での重要政策中枢支援を行い、また情報処理教育を主とする「ポーランド・日本情報工科大学」を設立するプロジェクト方式技術協力を実施しているほか、99年度より東欧地域を対象とした第三国研修を実施している。開発調査は、市場経済化促進支援、環境保全分野を中心に実施している。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のポーランドに対する援助実績は3.32億円。うち、無償資金協力は0.49億円(交換公文ベース)、技術協力は2.83億円(JICA経費実績ベース)である。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は213.92億円、無償資金協力は39.47億円(以上、交換公文ベース)、技術協力74.08億円(JICA経費実績ベース)である。
(ハ) 技術協力
 ポーランドへの技術協力は89年から開始したが、2004年5月のEU加盟を機に被援助国から援助国へと徐々に転換していくことが予想される中、同国は南南協力に関心を示していることから、これまでの我が国の技術移転を生かした同国の周辺国への協力についても支援しており、2001年2月より5年間の予定でワルシャワ経済大学において周辺国(ウクライナ、モルドバ、バルト三国、ブルガリア及びルーマニア)を対象とした第三国研修を実施している。
 また、農産物市場経済、総合的品質管理、省エネ対策分野において20名の研修員受入を行っている他、中小企業振興、生産者組織経営とマーケティングに関する専門家を6名派遣している。
3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件

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