[10]ボスニア・ヘルツェゴビナ
1.概 説
(1) ボスニア・ヘルツェゴビナは、旧ユーゴの解体とともに独立したが、国内に3つの主要民族(ムスリム、セルビア系、クロアチア系)を抱え、独立に対する各民族の姿勢の相違から92年4月に戦闘が勃発、以来3年半以上にわたり各民族が全土で戦闘を繰り広げた。しかし、95年11月に国際社会の仲介によりデイトン合意が成立して戦闘は終息し、ボスニア・ヘルツェゴビナは中央政府の下に、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦及びスルプスカ共和国という2つのエンティティから構成される国家となった。
(2) デイトン合意成立後に開始された和平履行では、民生面を上級代表事務所(OHR)が担当し、また、軍事面ではNATOを中心とする多国籍和平履行部隊(IFOR、後にSFOR)が全土に展開し、治安の維持に当たるとともに、欧州安全保障協力機構(OSCE)も民主化等を任務としたミッションを展開している。和平履行は軍事面で一定の成果をあげ、民生面でも共同統治機構の成立等の進展はあるものの、当事者の敵対感情は依然として強く、多民族共存による真の民主的社会の成立にはほど遠い状況にあり、当初1年間と想定されていた和平履行プロセスは現在に至っても続いている。96年、98年、2000年と国政・地方選挙が実施され、2001年2月には中央政府及びボスニア・ヘルツェゴビナ連邦で初めての非民族主義政権が成立した。しかし、2002年10月の総選挙の結果、再び民族主義勢力が伸張することとなった。
(3) 外交面では、欧州の一員としての道を歩もうとしており、2002年に欧州評議会への加盟が実現した。近隣諸国との関係改善・強化など外交上の課題は多いが、中央政府が十分機能せず、本格的な外交活動を展開するには至っていない。国内の復旧・復興を促進する観点から、外国からの援助の受容が最重要の外交課題となっている。
(4) 経済面では、紛争によりほぼ壊滅状態に陥った経済が、国際支援により徐々に復興しつつあるものの、依然として膨大な対外債務と高い失業率といった深刻な問題に直面している。
(5) 我が国は、紛争中に多くの人道支援を実施した他、紛争終結後の96年に同国を国家承認し、外交関係を樹立して以来、3億ドル以上の復興支援を実施している。また、我が国は、和平履行評議会(PIC)への参加やOHRへの要員派遣、選挙管理・監視要員の派遣等、政治的にも和平履行プロセスに積極的に関与している。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) ボスニア・ヘルツェゴビナに対する政府開発援助の基本的考え方
旧ユーゴ問題は、欧州が主要な役割を果たす中で、国際社会が協調して取り組むべきグローバルな問題であるとの観点から、我が国は主として民生部門において応分の貢献を行ってきており、紛争発生当初より95年11月のデイトン合意までの間に、人道・難民支援を中心に約1.8億ドルの支援を実施してきた。
ボスニア・ヘルツェゴビナの復旧・復興支援については、デイトン合意の成立を受け、96年2月に経済協力政策協議を実施し、医療、上下水道分野等で優良な案件形成に向けて積極的な取り組みを行った。
96年3月には、紛争により影響を受けた経済の建て直しを早期に図ることが和平を促進する上で重要との観点から、他の援助国に先駆けて25億円のノンプロジェクト無償資金協力を供与するとともに、4月に開催された第2回ボスニア支援国会合においては、96年分の復旧・復興支援として少なくとも1.3億ドル、96~99年の4年間で5億ドル程度の支援を行う方針を表明した。
97年7月に開催された第3回ボスニア支援国会合においては、我が国は前年と同程度の1.3億ドルまでの支援を、98年5月の第4回及び99年5月の第5回ボスニア支援国会合においても復興・復旧支援を供与する用意がある旨表明した。
98年4月、今後の経済協力の方針について政策協議を実施し、98年8月には対人地雷除去、被災者支援分野での協力の可能性を探るため、プロジェクト形成調査団を派遣、2000年6月には地雷除去に対する無償資金協力を実施した。また、技術協力は96年度より研修員の受入れを中心に実施しているほか、市民生活の再建に資する案件、経済復興に貢献するインフラ事業を中心に98年から開発調査を実施している。更に、98年9月には、世銀との協調融資の下、初の円借款として約41億円の電力セクター復興支援を行っている。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度のボスニア・ヘルツェゴビナに対する援助実績は12.61億円。うち、無償資金協力は11.40億円(交換公文ベース)、技術協力は1.21億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は41.10億円、無償資金協力は228.66億円(以上、交換公文ベース)、技術協力15.77億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力
二国間無償資金協力では基礎生活分野、戦後復旧・復興の観点からのインフラ整備分野及び地雷犠牲者支援を重視しており、2001年度には、内戦で被害を受けた教育施設に対する支援として「初等学校建設計画」(9.92億円)を実施した他、除雷活動支援や帰還民支援、教育等の分野を中心とした草の根無償資金協力を29件、計1.38億円実施している。
(ハ) 技術協力
技術協力では、運輸交通、中小企業振興、医療器材管理・保守分野等について39名の研修員を受け入れている。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度実施開発調査案件
(参考2)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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