[8]ハンガリー

1.概  説

 89年の体制転換で、平和裡に議会制民主主義への転換が行われ、2002年には民主化後4度目の国政選挙が行われた。ハンガリーでは4年ごとの国政選挙の結果、常に政権交代がなされ、今次選挙においても、与野党拮抗の中、わずか10議席差で、政権与党を破り、社会党・自由民主連盟の中道左派連立政権が成立した。
 外交面では、一貫して「西欧への復帰」を最大の外交目標に掲げており、99年3月にはNATO加盟が決定、EU加盟についても2004年の加盟が見込まれている。また、近隣諸国に居住するハンガリー系少数民族の擁護のために「ステータス法」の制定に力を入れている。
 ハンガリーでは社会主義時代より比較的自由な市場経済を導入していたが、体制転換後、巨額な財政赤字と貿易赤字に直面した。95年より社会福祉削減等の財政緊縮政策を採り、当初は国民の反発をひきおこしたが、97年よりプラス成長に転換し、良好な経済パフォーマンスを誇っている。
 90年1月、海部総理大臣(当時)がハンガリーを訪問、また94年11月には高円宮同妃殿下、95年4月には河野副総理兼外務大臣(当時)が訪問された。
 ハンガリーからは、首相、外相、国会議長等閣僚が相次いで訪日している他、2000年4月にはゲンツ大統領(当時)が国賓として来日するなど、要人往来は活発である。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) ハンガリーに対する政府開発援助の基本的考え方
 ハンガリーがポーランド、チェコと並んで民主化、市場経済への移行の先駆的な役割を果たしていること、我が国との関係も金融、人的交流、本邦企業進出の面で活発化していることや、その開放的な外交政策等を踏まえ、G24の枠組みで援助国、国際機関等と協調しつつ、技術協力を中心に文化無償協力、環境分野の有償資金協力を行ってきている。
 ハンガリーへの初の円借款供与となった「ヴァルパロタ地域環境改善計画(地方自治体公共事業)」は、同地域の環境改善のため、上下水道整備及び地域暖房システム整備を行うものである。無償資金協力では91年度から文化無償を開始し、国立劇場等文化施設に対し機材供与を行っている。技術協力は、89年度から本格的に開始され、生産管理、経営管理、環境等の分野を中心に研修員の受入れを行っているほか、専門家の派遣、機材供与を実施してきている。また、91年度から青年海外協力隊の派遣を開始した。94年度から生産性向上についての同国に対する初のプロジェクト方式技術協力を開始し、我が国工業分野における生産性向上に関する技術移転を図った。90年度から開始している開発調査は、市場経済の定着及び環境分野への協力を中心に実施している。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のハンガリーに対する援助実績は3.95億円、うち、無償資金協力は0.46億円(交換公文ベース)、技術協力は3.49億円(JICA経費実績ベース)である。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は49.14億円、無償資金協力は5.52億円(以上、交換公文ベース)、技術協力65.46億円(JICA経費実績ベース)である。
 (ロ) 技術協力
 ハンガリーへの技術協力は、89年より本格的に開始されたが、現在では同国は東欧において高い経済発展にあり、今後被援助国から援助国へと転換していくことが予想されるなか、我が国としてもこれを支援するべく、95年から99年にプロジェクト方式で行われた「ハンガリー生産性向上計画」の生産性向上センターを拠点とし、2000年より5年の予定で、南東欧を中心とする中・東欧地域を対象とした「経営診断」技術の向上を図るための第三国研修を行っている。
 また、農産物市場経済、中小企業振興、産業環境対策、環境行政等の分野で28名の研修生を受け入れている他、環境保全支援の一環としてドナウーイヴァーバロシュ工科大学における環境技術者人材育成のための専門家や水質シミュレーションモデル、汚濁負荷量算定等に関する専門家を計10名派遣している。
 さらに、開発調査として、ブダペスト市を対象としてゴミの排出に関する将来予測、収集運搬、中間処理等を通じてゴミの減量化及び資源としての有効利用を目指し、同市の廃棄物システムの見直しを行うための「ブダペスト市廃棄物処理計画」を実施している。
 ハンガリーにとって国家課題であるEU加盟実現のためには、多くのシステムをEU基準に適合させる必要があるが、これらの中でも環境保護にかかる技術政策の適合を図ることは最重要課題の一つである。
3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件

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