[6]セルビア・モンテネグロ

1.概  説

(1) (イ) 90年代初めの旧ユーゴ解体の際、その構成国であったセルビア及びモンテネグロは92年4月にユーゴスラビア連邦共和国を樹立した。しかし、同国は、国連安保理よりボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を理由に包括的な制裁を受けた他、国内の民主化、少数民族の取扱い(特にコソボのアルバニア系住民)が問題とされ、さらに、同国が旧ユーゴとの継続性を有する国家であるとの主張を撤回しなかったことから、国連等国際機関やIMF、世銀等の国際金融機関へのアクセスが認められず、国際的に孤立状態にあった。しかし、2000年10月にコシュトゥーニツァ政権が誕生したことを受け、国際社会は同国の民主化、国際社会への復帰に向けた努力に対する支援を表明した。その一環として、2001年6月には、世銀及びEU主催でユーゴ支援国会合が開催され、総額12億ドルを越える支援が表明された。
(ロ) ユーゴスラヴィア連邦を構成するモンテネグロ共和国では、独立をめぐって世論が二分されていたが、モンテネグロの一方的独立は、地域の不安定化をもたらすとの懸念から、EU仲介の下、2002年3月、ユーゴスラヴィア連邦をセルビア及びモンテネグロからなる緩やかな連合国家に再編することが合意された。右合意に基づき、2003年2月、連邦議会が憲法的憲章を採択・公布し、ユーゴスラヴィア連邦共和国はセルビア・モンテネグロに再編された。
(ハ) コソボでは、2000年6月のNATO空爆終了以降、民生部門を担当する国連コソボ・ミッション(UNMIK)と、軍事部門を担当する国際安全保障部隊(KFOR)の下で和平履行が進められている。UNMIKは2001年5月に暫定自治のための法的枠組みを公布、11月にセルビア系住民の参加も得て議会選挙が行われた。この結果に基づき、アルバニア系主要3政党で連立合意が成立し、2002年3月には議会で、ルゴバ大統領が選出され、レジェピ首相を首班とする暫定自治政府が承認され、一部権限の暫定自治政府への移譲が実現した。
(2) 外交面では、コシュトゥーニツァ政権誕生後、国際社会への復帰と近隣諸国との関係改善を優先課題として掲げ、国際社会との協調を重視する政策を打ち出した。その結果、2000年11月に、ユーゴは国連に新規加盟国として加盟が承認されたほか、OSCE、IMF、世銀への加盟も実現した。また、旧ユーゴ紛争当時より外交関係を持たなかったボスニア・ヘルツェゴビナ(2000年12月)、アルバニア(2001年1月)等と相次いで外交関係を樹立したほか、近隣諸国と自由貿易協定を締結した。このような外交政策は、国家再編後も維持されている。
(3) 経済面では、長期にわたる制裁と空爆によって国内経済は大幅に悪化したが、2000年の民主化以降、国際社会への復帰を果たし、深刻な状態を脱した。しかしながら、経済水準は90年の60%程度に落ち込んだままであり、多額の財政赤字及び対外債務が、経済発展の大きな障害となっている。これらの状況の改善のため、IMFとの間で2001年6月に総額2億4,900万ドルのスタンド・バイ・クレジットの供与が合意された。また、同11月、パリ・クラブは段階的に66%の債務削減を行うことを決定した。一方、現政権は構造調整の進展を優先課題としているが、民営化等の遅れ等これまでのところあまり成果は上がっておらず、今後の経済の再建には多大な努力を要するものと見られる。
(4) 我が国は、民主化後の2000年10月に緊急無償支援1,000万ドル(難民・避難民支援570万ドル、肥料支援430万ドル)を実施したほか、上述の対ユーゴ支援国会合において、最大5,000万ドルの無償資金協力、20名の研修員受入れ)を表明、実施している。また、コソボに対しては、1億7,804万ドル(周辺国支援6,263万ドルを含め総額2億4,067万ドル)の人道・復興支援を実施済みである。
 2001年2月及び2003年5月には、スビラノビッチ外相が訪日、2001年7月には田中外相がユーゴスラビアを訪問した。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) セルビア・モンテネグロに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、旧ユーゴに対して当初は商品借款等を行っていたが、同国が鉱山資源を豊富に産出し、また工業化も進んでおり、所得が比較的高かったことから、文化無償等若干の資金協力以外はプロジェクト方式技術協力、行政、運輸・交通、工業部門を中心とした研修員受入れや専門家派遣等の技術協力を行っていた。
 90年7月、G24は旧ユーゴを支援対象国と決定したが、その後のユーゴ情勢に鑑み、91年11月、G24は経済制裁を決定し、経済協力も停止された。我が国もユーゴに対し、人道的観点からの国際機関を通じた支援や草の根無償資金協力を除き、援助を停止した。しかし、2000年9月の選挙でコシュニトゥーニツァ政権が誕生し、民主化、市場経済化に向けた努力を開始したことを踏まえ、G24は経済制裁を解除した。我が国も国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対して拠出する旨表明した難民支援570万ドルと合わせ、越冬対策等支援のため、とりあえず1,000万ドルを上限として対ユーゴ緊急支援を実施することとし、翌2001年2月に経済協力の停止を正式に解除した。
 その後、2001年6月にはプロジェクト形成調査団をユーゴに派遣し、その結果を踏まえ、同月末に開催されたユーゴ支援国会合において、最大5,000万ドルの無償資金協力および研修員受入等の技術協力などの実施を表明した。これに基づき同国国民の生活基盤、経済基盤の復旧、復興を支援するため、電力、公共輸送、保健医療、都市環境、農業、社会福祉等の分野を対象とした支援を実施している。
 我が国は、コソボに対する人道及び復興支援として、現在までに、総額約1億8,700万ドルの支援を表明しており(全額拠出済み)、EU(EU加盟各国の二国間支援を除く)、米、英、独に続き第5位のドナー国となっている。具体的には、第1に、UNHCR、WFP等の国際機関に対する8,700万ドルのコソボ難民等への緊急人道支援、第2に、UNDP、UNMIK、UNICEF等の国際機関に対する約1億ドルの復興支援(住宅修復、電力供給、独立メディア支援等)の拠出を実施した。また、2002年度には研修員受入れを実施した。
 また、コソボ周辺国支援として、コソボ難民の受入れ等により経済的影響を受けたマケドニア旧ユーゴ及びアルバニアに対して2年間で約6,000万ドルの支援の実施を表明している。
(2) 2001年度の援助実績 (イ) 総論
 2001年度のセルビア・モンテネグロに対する援助実績は35.99億円。うち、無償資金協力は34.41億円(交換公文ベース)、技術協力は1.58億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は152.27億円(旧ユーゴ向け商品借款及び債務繰延)、無償資金協力は345.34億円(以上、交換公文ベース)、技術協力9.31億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
 2001年11月のパリクラブ合意に基づき、公的債務の削減リスケを行う予定である。
(ハ) 無償資金協力
 2001年に開催された復興・復旧支援のためのユーゴ支援国会合で、我が国は最大5千万ドルの無償資金協力を表明し、同年、ノンプロジェクト無償資金協力として15億円、「ベオグラード市公共輸送力復旧計画」に対しては18.5億円の支援を実施している。その他にも、草の根無償資金協力として、15案件に対し計約9,100万円を供与している。
(ニ) 技術協力
 2001年度には、我が国のODAに対する理解を深めるために開催した「国際協力事業紹介セミナー」に8名のセルビア・モンテネグロ政府関係者を招聘した他、海外貿易振興政策、中小企業振興等の分野で計8人の研修員受入れを行っている。
3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施草の根無償資金協力案件

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