[2]ウクライナ
1.概 説
ウクライナは、91年12月のソ連解体とともに独立国家となった。99年10月の選挙で再選された改革派のクチマ大統領は、改革派のユーシェンコ首相を任命し、IMF等国際金融機関と協調路線による経済改革を行ったが、大統領府、内閣、議会の連携が不十分なため改革は十分には進まなかった。2000年4月には、大統領の権限強化を目指す国民投票が行われ、国民の大多数が大統領の提案を支持したが、11月、政権批判を行っていた新聞記者の暗殺指示疑惑がおこり、大統領に対する抗議運動が激化、2001年1~2月には、閣僚の解任が相次ぎ、情勢は流動化した。4月に政府不信任決議により内閣は総辞職、5月末クチマ大統領の指名したキナフ首相のもと新内閣が発足した。
経済面では、農業、鉄鋼業が産業の柱である。エネルギーは輸入に頼っており、特に供給の大半を依存するロシアに対してはエネルギー債務問題が解決し、ロシア及び独の3国の間でコンソーシアム設立に向けた協力が促進されている。また、輸入、輸出ともに主要相手国はロシアである。98年夏のロシアの金融危機の影響でウクライナ経済は大きな打撃を受けたが、通貨フリヴナの下落による国際競争力向上、民営化企業の生産性向上等により2000年には経済成長率が独立後初めてプラスに転じた。民営化、産業構造改革等も緩やかなテンポながらも進んでいる。
西側諸国は、ウクライナに対し、経済改革、非核化、原発の安全性向上等の面での支援を継続している。経済改革については、ウクライナの積極的な改革路線を評価、その努力を支援している。非核化についても、先進諸国はソ連から残された核兵器の移送・解体を支援し、95年6月には全ての核兵器の移送・解体が終了した。更に、原発の安全性については、2000年6月、ウクライナは、95年にG7とウクライナとの間で作成されたチェルノブイリ原発閉鎖に関わる支援に関する覚え書きに基づき、チェルノブイリ原発の閉鎖を決定し、2001年12月15日に唯一稼働していた3号炉は閉鎖された。
ウクライナは欧州経済への統合を目指して、EU加盟を最終目標としており、94年には「EUとの提携友好条約」が調印された。95年には欧州評議会への加盟も認められた。
また、ウクライナは独立後、ロシアとの間に一線を画した独自路線の政策を進めていたが、エネルギー債務問題の解決等を機に、経済分野を中心にロシアとの関係の再構築の動きが見られる。
我が国との関係では、96年7月に池田外務大臣(当時)がウクライナを訪問、95年3月にクチマ大統領、97年5月及び98年3月にはウドヴェンコ外相が訪日している。2000年6月にはタラシュク外相が故小渕元総理葬儀出席のため訪日した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) ウクライナに対する政府開発援助の基本的考え方
ウクライナは旧ソ連地域と欧州の間という地政学的重要性を有しており、同国における民主化・市場経済化に向けた改革努力はODA大綱の観点からも望ましいものとして、我が国はこうした動きを支援していく方針である。
97年5月ウドヴェンコ外相(当時)訪問の際に池田外務大臣(当時)よりODA供与を検討する旨表明、同年7月には政策協議ミッションを派遣し、市場経済化、医療保健、環境等の分野における協力のニーズを確認した。その結果を踏まえ、98年4月にプロジェクト形成調査団を派遣し、環境分野での情報収集を行った。同国に対する援助は、産業政策、財政金融、中小企業振興等の分野での研修員受入れ等の技術協力を中心に行っている。また、98年度に国立フィルハーモニーに対する文化無償を供与し、2000年には「オフデマット小児専門病院医療機材整備計画」を一般医療無償案件として実施した。
なお、我が国はウクライナに対し、ODAによる援助を開始する以前からチェルノブイリ被災支援を中心とする人道支援や技術支援のほか、非核化支援や原子力安全支援等も行ってきている。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度のウクライナに対する援助実績は1.92億円。うち、無償資金協力は0.56億円(交換公文ベース)、技術協力は0.36億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は9.32億円(交換公文ベース)、技術協力1.86億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
2001年7月、ウクライナの繰り延べリスケについて、パリクラブにて合意されたことを受け、我が国からの円借款については、引き続きマクロ経済の改善状況、国際収支、債務支払い動向等を注視しつつ、検討を行っていく。
(ハ) 無償資金協力
独立以降、特に保健・医療環境が悪化しているため、同分野への支援に力を入れている。2001年には草の根無償資金協力にてチェルノブイリ原発事故被爆者に対する支援として「スラブチッチ市民相談センター」の開設、コンサルテーション支援を行っている。また、文化無償資金協力として国立オペラ・バレエ劇場に対して4,900万円を供与した。
(ニ) 技術協力
技術協力は、市場経済化、医療保健、環境等の分野を重点支援分野としており、同分野を中心とした研修員受入、短期専門家派遣を行っている。2001年度は産業政策、財政金融、石炭鉱山技術、環境調和型水力発電分野において8名の研修員を受入れ、また生産性向上、採炭技術に関する専門家を計4名派遣している。
3.政府開発援助実績
(1) DAC諸国・国際機関のODA実績
(2) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度実施草の根無償資金協力案件
前ページへ 次ページへ