2.政府開発援助実績

(1) 援助の経緯・実績
 欧州諸国は、西欧地域を中心に工業化が進展し、経済的に発展している国が多いが、従来よりキプロス、マルタ、アルバニア及び旧ユーゴに対しては、ODAの供与を行ってきた。共産主義体制が崩壊した89年よりポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアに対して援助を開始し、96年度からはバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、97年度からはウクライナ、モルドバと、対象国を状況に応じて拡大してきた。しかしながら、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、エストニア、リトアニア、ラトビア、キプロス、マルタの10カ国については、2004年5月のEU加盟が決定しており、また一人当たりのGDPも比較的高いことから、今後、被援助国から援助国へと転換していくことが予想される。他方、ルーマニア、ブルガリアについては、2007年のEU加盟を目指した努力を行っており、市場経済化や環境保全分野等における加盟基準達成に向けた努力も我が国も支援している。さらに、旧ユーゴ諸国においては、紛争後、10年近く復興、復旧支援を行ってきたが、市場経済化は遅々としており、また民族問題等の政情不安を依然抱えているため、平和の定着や経済発展のための中期的な開発ニーズは依然高く、我が国もこうした支援を行っている。
 各援助形態別では、研修員の受入れや専門家の派遣を行うとともに、ハンガリー、ルーマニア、ポーランド、ブルガリアでプロジェクト方式技術供与や専門家チームの派遣等の技術協力を行っている。
 また、有償資金協力については、当初環境関連案件を対象としていたが、96年度より体制移行支援の観点から通常の円借款対象分野へも供与を検討することになったのに伴い、96年度にはアルバニア、97年度にルーマニア及びブルガリア、98年度にはスロバキア及びボスニア・ヘルツェゴビナ、2000年度にはルーマニア、2001年度にはブルガリアに対し、経済インフラ整備のための円借款が供与されている。
 無償資金協力については、農業、保健医療、インフラ・交通、教育などの分野を中心に2001年までに837.40億円の供与を行ってきた。
 我が国が2001年に行った二国間援助のうち、欧州地域に対し供与したのは全体の約1.6%に相当する約1億1,610万ドルである。
 我が国は中・東欧、バルト及びNIS諸国の政治・経済改革支援を目的とするEBRDの設立時からの加盟国であり、設立に際して総額約10億ドル、第1次増資において約10億ドルの出資を表明したほか、EBRDの行う技術協力等を支援している。
 また、我が国は、99年4月のEU臨時外相理事会でEU議長国ドイツ(当時)により提案され、同年6月にケルンで採択された南東欧安定協定のプロセスを支持しており、同協定に提出された案件に対して円借款の供与を行っている。
(2) 重点分野
 中・東欧、バルト三国、NIS諸国に対する経済開発援助としては、下記重点分野が挙げられおり、今後とも各分野への支援を継続する。
(1) 市場経済移行、環境保全対策、及びインフラ復旧・開発への支援
(2) 旧ユーゴスラビア地域及び周辺国における難民支援等の人道支援、復旧・復興等のための経済・社会インフラ整備、基礎生活分野支援及び選挙実施に関する協力
 支援に当たっては、この地域において、改革・経済発展の進行の度合いが各国毎に多様化しつつあることを踏まえ、各国の実情に応じた支援の実施が必要となっている。
 また、セルビア・モンテネグロ(ユーゴ)及びボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ等の旧ユーゴ地域については、その復旧・復興、和平の定着は国際社会が協調して取り組むべき課題であるため、我が国としても、紛争国及び難民を受け入れている紛争周辺国に対する難民支援等の人道支援、基礎生活分野支援、復旧・復興のための経済・社会インフラ整備、選挙実施に関する協力等を行う必要がある。

3.我が国政府開発援助のあり方

(1) 欧州地域の位置付け
 中・東欧、バルト、NIS諸国は共産主義体制が崩壊した89年以降、民主化及び自由化の動きが劇的に進展し、現在は民主的政権の下で市場経済化に向けて経済改革が進められている。我が国としてもこうした望ましい動きを促すため、市場経済化、経済インフラの再建、環境問題等の課題への支援を行うこととしている。
 このような状況の中、EU加盟に向けて改革が順調に進展している国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロベニア、スロバキア、クロアチア、バルト3国)、次期EU加盟に向けた改革に取り組んでいるルーマニア及びブルガリア、市場経済化等が遅れているウクライナ、モルドバと旧ソ連諸国、そして紛争の影響で改革が停滞しているボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニア、マケドニア旧ユーゴースラビア、セルビア・モンテネグロ(ユーゴ)と、国または地域毎の格差が著しく拡大しつつある。また急速な市場経済化の過程で対策の遅れた中・東欧諸国の環境問題は周辺諸国にも影響を与えるほど深刻である。更に、疲弊した経済インフラなど、これら諸国の抱える課題は大きい。
(2) コソボ支援
 98年2月から3月にかけ、コソボ自治州でアルバニア系住民の武装組織コソボ解放軍(KLA)とセルビア治安部隊が衝突したことに端を発したコソボ問題は、民生部門を担当する国連コソボミッション(UNMIK)と軍事部門を担当する国際安全保障部隊(KFOR)のもとで和平履行が進められている。
 我が国は、コソボに対する人道及び復興支援として、2002年までに総額1億7,700万ドルの支援を表明しており、EU(EU加盟各国の二国間支援を除く)、米、英、独に続き第5位のドナー国となっている。具体的には、第一に、UNHCR、WFP等の国際機関に対する7,700万ドルのコソボ難民等への緊急人道支援、第2にUNDP、UNMIK、UNICEF等の国際機関に対する約1億ドルの復興支援(住宅修復、電力供給、独立メディア支援等)の拠出を実施した。
 また、コソボ周辺国支援として、コソボ難民の受入等により経済的影響を受けたマケドニア旧ユーゴ及びアルバニアに対して2年間で約6,000万ドルの支援の実施を表明している。
(3) 方針
 欧州地域は所得水準が高い国が多いため、環境分野への円借款や、研修員受入、専門家派遣等の技術協力を中心に援助を行っている。一方で、市場経済化が遅れているアルバニアやブルガリア、旧ユーゴ紛争により経済に大きな影響を受けたボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア・モンテネグロ(コソボ地域含む)、マケドニア旧ユーゴ等の南東欧地域の国々に対しては技術協力及び無償資金協力を中心に行っている。

表―2 欧州地域に対する我が国二国間ODA実績

図―2 欧州地域及び全世界に対する我が国二国間ODAの形態別構成(2001年、支出純額)


表―3 欧州地域に対する我が国二国間ODAの形態別・国別・年度別実績
 (1) 有償資金協力
 (2) 無償資金協力
 (3) 技術協力
表―4 欧州地域に対する我が国技術協力の年度別・形態別実績
表―5 欧州地域に対する我が国無償資金協力の分野別実績
 (1) 全体内訳
 (2) 一般プロジェクト無償内訳
表―6 欧州地域に対するDAC主要援助国の二国間ODAの推移
表―7 欧州地域に対するDAC主要援助国の国別二国間ODA実績(2000年)
表―8 欧州地域に対するDAC諸国・国際機関のODA実績
表―10 欧州地域に対する国際機関のODA実績

前ページへ 次ページへ