2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) カンボジアに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、アジア・太平洋地域の平和と安定及び発展にとりカンボジアの安定が不可欠であり、カンボジアが和平達成後の荒廃した国土の復旧・復興及び民主化を進めていくためには、安定した政権の維持が必要であるとの認識の下、同国の復興及び民主化に向けた努力を積極的に支援している。
 92年に「カンボジア復興閣僚会議」を主催したのをはじめ、中長期的な復興援助の調整メカニズムとしての「カンボジア復興国際委員会」(ICORC)の議長を93年から3年間務めた。また、96年には国際支援の新たな援助調整会合として、「第1回カンボジア支援国会合」(CG)が東京で開催され、我が国は世銀と共同議長を務めた。97年の二大政党間の武力衝突の際には、我が国はカンボジアによる自由公正な選挙実施を働きかけると共に、政治的膠着状態打開のため4項目案を提出するなど積極外交を展開し、98年の総選挙に際しては、資金協力及び人的支援を行った。
 我が国は、カンボジア側との政策対話を踏まえ、人道援助を中心に緊急に必要とされる援助を実施するとともに、中長期的な視野に立って、経済インフラ、保健・医療等の基礎的生活分野、農業、人材育成等の分野を重点分野とし各種スキームを有機的に連携させて支援を行うこととしており、これまで無償資金協力及び技術協力を実施してきた。
 2002年2月には、同国の政治・経済・社会情勢や開発計画、開発上の課題を踏まえた対カンボジア国別援助計画を策定、公表した。同計画は以後5年間を目途とする具体的な案件形成の指針となるものであり、以下の分野を援助の重点分野としている。
(イ) 持続的な経済成長と安定した社会の実現
 5つの改革(行政改革、財政改革、兵員削減、自然資源管理、社会セクター)支援とグッドガバナンス、社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備、農業・農村開発と農業生産性向上、対人地雷問題への包括的支援の協力を行う。
(ロ) 社会的弱者の支援
 BHN分野(教育・医療分野等)の協力を行う。
(ハ) グローバルイシューへの対応
 森林資源等に係わる環境問題と麻薬問題の解決に向けた協力を行う。
(ニ) ASEAN諸国との格差是正のための支援
 メコン地域開発、IT普及のためのインフラ整備等を支援する。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のカンボジアに対する援助実績は119.89億円。うち、無償資金協力は76.83億円(交換公文ベース)、技術協力は43.06億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は64.62億円、無償資金協力は789.48億円(以上、交換公文ベース)、技術協力227.80億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
 有償資金協力については、同国がLDCであり、政治的に不安定であったことから従来は見送ってきたが、最近の政治的安定及び新政権による経済再建のための種々の政策の着実な実施に鑑み、99年に「シハヌークヴィル港緊急リハビリ事業」に対し、41.42億円を限度とする円借款を供与した。
(ハ) 無償資金協力
 無償資金協力では、運輸インフラ(道路・橋梁)整備、社会インフラ(上水道・電力)、農業案件、保健医療分野案件、選挙支援を行っている。
(ニ) 技術協力
 技術協力では、従来より保健・医療、農業等の分野を中心に行っており、最近は重要政策中枢支援として法制度整備支援を99年3月より実施している。民法及び民事訴訟法起草支援、及び起草過程における共同作業を通じた裁判官、司法省立法担当者の人材育成を目的としており、起草された民法、民訴法を閣議・国会で通過させるための技術支援や法曹人材育成について支援を引き続き実施していく予定である。
 開発調査については、特に保健分野について、2000年2月の日米コモン・アジェンダ次官級協議の合意を踏まえ、2000年6月、感染症、母子保健を中心とする日米合同プロジェクト形成調査団を派遣した。今後、同調査団が優先分野として特定したHIV/AIDS対策、結核、HIV・結核重複感染症対策、マラリア等その他感染症・寄生虫症、母子保健の5分野を中心に積極的に案件形成を行っていく予定である。また、本調査団派遣の結果、我が国の円借款で実施予定のシハヌークヴィル港改修計画に伴う労働者の流入に備えたHIV/AIDS対策を行うことを決定した。
(ホ) その他
 地雷対策として98年度以降、カンボジア地雷対策センター(CMAC)への90万ドル拠出及び専門家派遣を行った他、無償資金協力案件「地雷除去活動機材整備計画」(98年度、4億7,000万円)、第2次地雷除去活動機材整備計画(99年度、3億3,000万円)を実施しており、また、草の根無償を活用したNGOへの援助を行った。
 更に、NGO事業補助金の交付を受けた我が国のNGO団体が人材育成事業、保健衛生事業等13事業で約6,500万円の支援を行った。
 緊急援助については、2000年9月及び2001年9月の洪水災害に対し、緊急援助物資(各2,000万円相当)を供与した。
 またカンボジアにおけるユニークな協力として、93年度よりUNHCR(98年度からはUNDP)に対する我が国の拠出金を活用して派遣されるASEANの専門家と、我が国から派遣される青年海外協力隊や専門家が共同で技術協力を行う「カンボジア農村開発計画」(いわゆる三角協力)が実施されている。医療分野では、「結核対策プロジェクト」を実施し、世銀、WHO等と協力してカンボジア全国の結核予防に取り組んでおり、その中で我が国は主導的役割を担っている。
 援助協調については、年1回行われる支援国(CG)会合のフォローアップとして、カンボジア政府が取り組む諸改革及び開発課題につき11のサブ・ワーキング・グループが設けられており、こうした会合を活用してドナー間の意見交換が行われている。なお、貧困削減戦略書(PRSP)策定については、2000年10月には、暫定版のものが作成された。
 2001年6月に東京において開催された第5回支援国会合(CG)では、マクロ経済と貧困対策、司法改革を含むガヴァナンス問題、森林・土地問題等の自然資源管理、援助協調などについて、包括的且つ率直な意見交換が行われた。参加国・国際機関は、カンボジア政府に対して、迅速な実行に向けて一層の努力を求めると共に、同国政府より改革促進への更なる決意が示されたことを踏まえ、総額5億6,000万ドルに及ぶ支援が表明された。我が国としては、カンボジア政府の諸改革に対する真摯な取組を促すと共に、経済・社会開発及び貧困削減を中心とした諸改革への継続的な支援の姿勢を示し、開催国(96年の第1回会合以来、開催国としては3回目)として国際社会の支援体制を推進すべく、総額約1億1,800万ドル(約138億9,400万円)の支援策につき意図表明を行った。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件


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