[30]ボリビア
1.概 説
ボリビアにおいては、82年に民政移管を達成後、5回の総選挙が行われ、常に複数政党による連立政権が成立している。
2002年6月の総選挙において当選したサンチェス・デ・ロサダ前大統領は、22%台の得票率を獲得するに留まり、21%を獲得した先住民系の候補者であるエボ・モラレス・社会主義運動党(MAS)党首との間で僅差での勝利となり、従来政敵関係にあった左翼革命運動(MIR)党とも連立政権構築を余儀なくされた。
同政権は、公共事業を通じた雇用創出、母子保険制度整備などのセーフティネット構築、企業病院設立などの経済再活性化及び生産性・競争性の向上等からなる「プラン・ボリビア」政策を掲げたが、明確な戦略や体制が整わないまま目立った成果が得られず、国民の不満が高まった。かかる状況を背景に、2003年2月には、政府の提出した所得税制の改正案を不服として大規模な暴動が発生し、ロサダ政権は全閣僚の辞任に追い込まれた。続く10月、天然ガスの輸出港問題を契機とし、先住民を中心とする貧困問題への不満の高まりを背景に、前回を上回る規模の暴動が発生し、70名を超す死者が発生する惨事となった。右を受け、ロサダ大統領は国外退去を余儀なくされ、同月、カルロス・メサ副大統領が憲法の規定により繰り上がり大統領に就任した。
外交面では、近隣諸国及び米国を始めとする先進諸国との関係強化を基軸とする。
チリとの間では、100年前に割譲した太平洋に至る地域の主権回復を目指す、いわゆる「海への出口問題」を起因として79年から外交関係を停止している。
ボリビアの経済は、農業、鉱業産品を中心とする一次産品への依存率が総輸出の80%を占め、国際価格の影響を受けやすい脆弱な経済構造となっている。99年以降、深刻な財政難に陥っており、米国の同時多発テロ事件以降の景気低迷の影響や、97年以降のコカ樹根絶政策も経済低迷の要因となっている。
2002年8月に発足したサンチェス・デ・ロサダ前政権は、「プラン・ボリビア」の下、生産性向上・競争力強化を通じた新たな経済開発政策の推進に努めた。しかしながら、政治運営面での困難が経済政策の遅れにつながり、長引く経済危機に対する迅速かつ有効な対策が得られないまま、財政赤字の拡大に至り、翌年10月の退陣の原因となった。
続くカルロス・メサ政権は、前政権からの課題である天然ガスの輸出問題に関する国民投票、経済活性化、炭化水素法の改正、憲法改正等の実施を表明している。
対外経済関係では、アンデス共同体の加盟国であるほか、96年、メルコスールとの間で経済補完協定を締結した。また、チリ、ペルー、メキシコとの間で二国間貿易協定を交渉中であるとともに、米国との間でも二国間貿易協定交渉を開始する旨表明している。
我が国とは14年に外交関係を樹立し、伝統的友好関係を有している。日本人の移住は、古くはペルーへの日本人移住者がボリビア北部に再移住したことに始まるが、戦後は54年以降本格的に移住が進められ、現在では推定約14,000人の移住者・日系人が在住している。99年6月にはボリビア移住百周年式典がサンタクルスで開催された。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
貿易は、我が国が鉱物資源、食料品等を輸入する一方、自動車、機械等を輸出しており、我が国の輸出超過が続いている。要人往来は、96年にサンチェス・デ・ロサダ大統領、99年にムリーリョ外相が訪日し、我が国からは99年に清子内親王殿下が移住百周年記念式典出席のためにボリビアを公式に御訪問されている。
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 基本方針
我が国と伝統的友好関係を有し、日系人・日本人移住者が存在すること、南米諸国の中で最も開発の遅れた国の一つであり、世銀・IMF等の支援を受けて構造調整政策を実施し経済開発に努力していることを踏まえ、従来から同国を積極的に支援してきている。2001年4月にはプロジェクト確認調査団を派遣し、ボリビア政府の政策方針を踏まえた協力の重点分野等についての政策対話を行い、基礎的生活分野及び貧困対策、道路・橋梁等のインフラ整備、環境保全を引き続き重点分野とすることを確認した。
有償資金協力については、交通分野への協力や債務繰延などを行っている。なお、ボリビアは拡大HIPC(重債務貧困国)イニシアティブの適用を受けており、新規円借款の供与は困難である。
無償資金協力については、ボリビアの貧困削減に資する保健・医療、衛生、上水道等の基礎的生活分野、並びに道路・橋梁建設等のインフラ整備を行っているほか、食糧増産援助、ノンプロ無償、及び文化無償を実施している。91年度から草の根無償を実施しており、2002年度には58件を実施した。
技術協力については、農牧業、保健・医療、環境などの分野を中心に各種形態により幅広く協力を行っており、技術協力プロジェクトとしては、「サンタクルス県地域医療ネットワークプロジェクト」、「小規模農家向け優良種子普及システム改善計画」が実施中である。また、農業、交通、鉱工業、防災等の分野で開発調査を実施している。
緊急援助に関しては、2002年2月の集中豪雨災害に対して緊急援助物資(700万円相当)を供与した。
また、ボリビアは97年9月にHIPCイニシアティブの適用国となり、2000年2月に拡大HIPCイニシアティブが適用され、2001年には貧困削減戦略ペーパー(PRSP)が世銀及びIMFの承認を受けた。国内的には国民対話法を制定し、国民各層との対話に基づく国家開発推進の条件が整ったところであり、その実施に向けた国際的支援が必要である。この点に関し、世銀、IDB等国際機関及びドナー各国はボリビア政府と定期的に会合を開いて進捗状況のチェックを行っており、我が国も積極的に参加している。また、ボリビアにおいては、PRSP実施に向けた会合の開催等、援助協調へ向けた動きが盛んであり、更に個別プログラムにおいても、農業分野における「ボリビア農牧技術システム(SIBTA)」の他、保健・医療分野、教育分野等で頻繁に援助協調に向けたドナー会合が開催されている。2004年1月には、ワシントンにおいてボリビア・サポートグループ会合が開催される。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
2001年度のボリビアに対する援助実績は48.82億円。うち、無償資金協力は22.38億円(交換公文ベース)、技術協力は26.44億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は1,411.55億円、無償資金協力は677.82億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は491.04億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:保健医療、教育及びインフラ整備分野を中心に実施。
(ハ) 技術協力:農業及び保健医療分野に対し実施。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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