ベネズエラにおいては、58年以降、民主的な政治体制が継続している。チャベス現大統領は、伝統的な二大政党制からの脱却及び新憲法制定プロセスを中心とした抜本的政治改革と経済社会政策拡充を提唱し、99年2月に就任した。チャベス政権は、同年12月の新憲法発効等を通じ、大統領権限の強化、国会の一院制への移行、国家主導的な経済運営等のための体制を構築した。しかし、99年に経済は大きく後退し、失業率は大幅に悪化し、その後も経済は本格的には回復していない。また、その政治手法に対する非難も高まった。
これを受けて、2002年4月、反政府勢力によるクーデター未遂事件が発生し、一時暫定政権が発足するという事態となったが、チャベス大統領は、事件直後に復権した。外交面では、米国との関係を重視してきたが、OPEC(石油輸出国機構)の穏健派としてOPEC加盟国間の協調のために努力している。また、中米・カリブ諸国との関係を重視し、メキシコと共に同諸国に特恵的に石油の供与を行っている。更に、チャベス政権になり、外交の多角化に取り組み、キューバ、ロシア、中国等との関係強化を進めている。また、2001年以降、メルコスールとの関係強化に取り組んできた。他方、米国との関係は冷却化している。
経済面では、石油に大きく依存する経済構造となっている。石油部門がGDPの約2割、総輸出の約8割、公共部門収入の約8割を占めている。石油以外にも、天然ガス、石炭及び水力のエネルギー資源並びに金、ダイヤモンド、鉄鉱石、ボーキサイト等の資源も豊富である。また、オリノコ川流域に超重質油(オリノコ・ヘビーオイル)が豊富に存在する。
財政赤字、景気後退、高インフレの中で発足したチャベス政権は、対外債務返済履行、OPEC生産枠厳守による国際石油価格の上昇への寄与、税制改革、徴税強化、産業振興、貧困削減、雇用創出などを経済政策として挙げた。しかし、景気は本格的には回復せず、国民の不満は高まった。そして、2002年には経団連、労組の呼びかけで大規模ストが実施され、同年4月にはクーデター未遂事件が発生した。また、同年12月には全国ストが2カ月間にわたり実施される事態となり、国内経済は原油生産も含めて麻痺することとなり、2003年のイラク戦争前の国際原油市場にも大きな影響があった。ストによる経済的損失はGDPの7%に相当する約73億ドルに上った。また、スト実施期間中に対ドル為替レートは30%以上下落した。
我が国との関係は伝統的に良好である。92年、我が国皇族として初めて皇太子殿下がベネズエラを御訪問されたほか、93年には武藤外務大臣(当時)が訪問、99年にはチャベス大統領が訪日するなど、両国関係は着実に進展している。我が国はベネズエラに対し、主に自動車、機械等を輸出しており、アルミ地金(全輸入額の6割以上)、石油、鉄鉱石等を輸入している。我が国からの対ベネズエラ投資は80年代末に鉄鋼、石油化学、自動車等の分野で大型投資が行われたが、90年代以降、ベネズエラの政情不安もあり、停滞している。