[27]ベネズエラ

1.概   説

 ベネズエラにおいては、58年以降、民主的な政治体制が継続している。チャベス現大統領は、伝統的な二大政党制からの脱却及び新憲法制定プロセスを中心とした抜本的政治改革と経済社会政策拡充を提唱し、99年2月に就任した。チャベス政権は、同年12月の新憲法発効等を通じ、大統領権限の強化、国会の一院制への移行、国家主導的な経済運営等のための体制を構築した。しかし、99年に経済は大きく後退し、失業率は大幅に悪化し、その後も経済は本格的には回復していない。また、その政治手法に対する非難も高まった。
 これを受けて、2002年4月、反政府勢力によるクーデター未遂事件が発生し、一時暫定政権が発足するという事態となったが、チャベス大統領は、事件直後に復権した。外交面では、米国との関係を重視してきたが、OPEC(石油輸出国機構)の穏健派としてOPEC加盟国間の協調のために努力している。また、中米・カリブ諸国との関係を重視し、メキシコと共に同諸国に特恵的に石油の供与を行っている。更に、チャベス政権になり、外交の多角化に取り組み、キューバ、ロシア、中国等との関係強化を進めている。また、2001年以降、メルコスールとの関係強化に取り組んできた。他方、米国との関係は冷却化している。
 経済面では、石油に大きく依存する経済構造となっている。石油部門がGDPの約2割、総輸出の約8割、公共部門収入の約8割を占めている。石油以外にも、天然ガス、石炭及び水力のエネルギー資源並びに金、ダイヤモンド、鉄鉱石、ボーキサイト等の資源も豊富である。また、オリノコ川流域に超重質油(オリノコ・ヘビーオイル)が豊富に存在する。
 財政赤字、景気後退、高インフレの中で発足したチャベス政権は、対外債務返済履行、OPEC生産枠厳守による国際石油価格の上昇への寄与、税制改革、徴税強化、産業振興、貧困削減、雇用創出などを経済政策として挙げた。しかし、景気は本格的には回復せず、国民の不満は高まった。そして、2002年には経団連、労組の呼びかけで大規模ストが実施され、同年4月にはクーデター未遂事件が発生した。また、同年12月には全国ストが2カ月間にわたり実施される事態となり、国内経済は原油生産も含めて麻痺することとなり、2003年のイラク戦争前の国際原油市場にも大きな影響があった。ストによる経済的損失はGDPの7%に相当する約73億ドルに上った。また、スト実施期間中に対ドル為替レートは30%以上下落した。
 我が国との関係は伝統的に良好である。92年、我が国皇族として初めて皇太子殿下がベネズエラを御訪問されたほか、93年には武藤外務大臣(当時)が訪問、99年にはチャベス大統領が訪日するなど、両国関係は着実に進展している。我が国はベネズエラに対し、主に自動車、機械等を輸出しており、アルミ地金(全輸入額の6割以上)、石油、鉄鉱石等を輸入している。我が国からの対ベネズエラ投資は80年代末に鉄鋼、石油化学、自動車等の分野で大型投資が行われたが、90年代以降、ベネズエラの政情不安もあり、停滞している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 基本方針
 我が国は、ベネズエラとの友好関係、同国の所得水準が比較的高いこと、及び同国が有力な貿易並びに投資相手国であることを踏まえ、技術協力を中心に援助を実施している。
 96年2月にはプロジェクト確認調査団を派遣し、協力の方向性、実施上の問題点等に関する政策対話を行った。それまで我が国協力スキームへの理解不足もあり、対ベネズエラ援助額が低い水準で推移してきたことを踏まえ、同協議においては、今後双方が協力して同国発展に資する優良案件の形成に努めていくことが確認された。
 我が国としては、同国の経済改革、環境保全、社会セクター及び防災等の分野を中心に、人材開発に資する協力を行っていく。
 技術協力では、行政、保健・医療、交通、社会基盤など幅広い分野で研修員受入れ、専門家派遣等を行っており、治水、産業振興、鉱工業等の分野で開発調査の実績がある。また、2000年10月には青年海外協力隊員派遣取極が締結され、2003年より同隊員が派遣された。
 無償資金協力については、草の根無償資金協力を99年度から導入した。また、87年度以降、ほぼ毎年文化無償協力を行っている他、2000年度からは草の根文化無償を導入した。
 なお、99年12月の集中豪雨災害に対して、緊急援助物資(1,500万円相当)及び緊急無償資金(50万ドル及び乾パン約40万食の輸送経費として2,100万円)を供与した。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
 2001年度のベネズエラに対する援助実績は4.06億円。うち、無償資金協力は0.58億円(交換公文ベース)、技術協力は3.48億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は7.46億円(交換公文ベース)、技術協力は78.22億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:保健医療分野を中心に草の根無償を実施。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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