[19]ドミニカ共和国

1.概   説

 (1) 2000年8月に就任したメヒーア大統領は、貧富の格差是正、社会福祉、農業を中心とした伝統的国内産業を重点分野に掲げている。2002年5月の議会選挙及び地方選挙では、与党ドミニカ革命党(PRD)が上院及び市長選挙で圧勝、また下院でも過半数には届かなかったものの第一党の座を確保し、メヒーア政権は国民の信頼を得たと評価することができる。この勢いに乗り、与党PRDは、メヒーア大統領の再選も視野に入れ、2002年7月大統領の連続再選を可能とする憲法改正を行った。
 (2) しかし、2002年の後半には景気の減速、インフレ率の上昇、大統領側近による汚職事件の発覚、更には政界を巻き込む国内大手銀行の不正取引事件などによりメヒーア政権の政策運営は厳しいものとなった。
 (3) 経済面では、基本的には農業、鉱業、軽工業及び観光業に依存しており、農林水産業が国内総生産の大きな割合を占めている。主要農産品は、砂糖、コーヒー、カカオ、タバコ等であり、主要鉱物はフェロニッケル、金、銀等である。近年は観光業及び自由貿易地域(フリーゾーン)における生産・貿易活動が大きく成長している。また、100万人を超える在米ドミニカ共和国人からの家族送金も同国経済を支えている。
 (4) 2002年上半期は、建設、通信、電力分野等が好調であったことから、経済成長率6.0%、インフレ率2.2%と比較的順調であった。下半期は、電気料金の値上げ、ペソ安、(2002年末には1ドル20ペソから25ペソまで急落)石油価格の高騰等によりインフレ率が2002年を通じて10.5%となった。こうした状況下、政府は物価安定のために財政・金融政策を引き締めた結果、景気は減速した。2002年の通年の経済成長率は4.0%となった。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

 (5) 我が国との関係は伝統的に良好であり、2002年11月には、メヒーア大統領が訪日し、小泉総理との首脳会談が実現するなど首脳レベルにおいての関係も強化された。同大統領は、16回の訪日歴を有しドミニカ共和国の中でも有数の親日家として知られている。なお、同国には約800名の日系人が生活している。

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 基本方針
 ドミニカ共和国は安定した民主主義国家であり、カリブ地域の平和と安定にとり重要な位置を占める事、構造調整政策により、国内経済立て直しに堅実に取り組んでいること等を考慮し、援助を実施している。98年のハリケーン・ジョージによる災害に対しては、国際緊急援助隊・医療チームを派遣するとともに、緊急援助物資及び緊急無償資金協力を実施した。また、99年6月には、被害の大きさを勘案し、同国政府の要請に基づき、総額約29億円(円借款約18億円、民間債務約11億円)に上る債務救済措置を講じた。
 我が国は、99年4月の経済協力政策協議をふまえ、農業・牧畜・水産、教育、保健医療、環境、基礎インフラを同国に対する援助重点分野としている。
 有償資金協力については、80年代に通信、農業開発、水力発電等の分野で供与実績があり、85年度、93年には「アグリポ地域農業開発計画(Ⅱ)」に対し、円借款を供与した。また、85、92年度には、債務繰延を行っている。
 無償資金協力については、保健・医療、教育、農業分野等における一般プロジェクト無償のほか、食糧増産援助、文化無償、草の根無償等を供与している。ただし、近年の経済状況の好転を受けて、今後は無償資金協力から技術協力及び有償資金協力へと援助の比重を移していく予定である。
 技術協力では、農業、保健・医療などの分野を中心に専門家派遣、研修員受け入れ等の協力を行っており、青年海外協力隊も派遣している。なお、2000年4月には、日本人移住者に対して、同国よりラ・ルイサ地区の土地が譲渡されることが決定されたことを受けて、両国友好のシンボルとして同地域の開発に対する協力の可能性を探るため、プロジェクト形成調査団を派遣し、右結果をふまえ2001年2月から開発調査を実施している。同国における援助協調に係る動きとしては、2001年11月より援助国・国際機関による援助状況の情報交換のための会合が開かれている。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
 2001年度のドミニカ共和国に対する援助実績は49.15億円。うち、無償資金協力は27.10億円(交換公文ベース)、技術協力は22.05億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は394.02億円、無償資金協力は220.92億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は191.31億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:上水道整備、教育、環境、医療分野に対し実施。
(ハ) 技術協力:食品加工、農業、教育、水分野を中心に実施。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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