80年、クーデターでボータセ軍曹(後、司令官)率いる軍事政権が成立したが、82年の同軍事政権による反政府活動家の拷問・処刑(12月殺人事件)など、人権蹂躙行為に対して旧宗主国で最大のドナー国でもあるオランダが援助を停止した。87年総選挙で民政復帰したが、同年から90年まで政府軍対反政府ゲリラの激しい内戦が展開され、難民発生や主要インフラ破壊などにより、その後の経済状況悪化につながった。90年に再び、ボータセの後任の軍司令官による軍事クーデターが起こったが、このときの軍政は長く続かず、91年総選挙以降は民主的手続きによる政権交代が続いている。96年の総選挙の結果、ボータセ元軍司令官が後押しするウェイデンボシュが政権に就いたが、発足後にボータセとウェイデンボシュが政治的主導権をめぐって内部対立を深めたほか、放漫財政などで経済が急激に悪化した。そのため、国内諸勢力からの反発が高まり、任期を1年早めて2000年に総選挙を実施するに至った。同選挙で選出されたフェネティアーン政権は、オランダとの関係修復を実現し、経済を安定化の軌道に乗せつつある。
外交面では、旧宗主国であるオランダとの関係を改善しつつ、外交関係の多角化を進めている。なかでも、カリブ諸国(95年6月カリブ共同体加盟)、ブラジル、ベネズエラ、アジア諸国(特に中国、インドネシア、インド)との関係緊密化が顕著である。他方、ガイアナ及び仏領ギアナとの間に国境問題が存在する。特にガイアナとの間では、係争海域における石油開発が絡み、2000年6月、2003年3月一時的には緊張が高まった。経済援助ではオランダへの依存度が依然として高い。
経済面では、輸出総額の約6割、GDPの約14%を占めるアルミナをはじめ、原油、エビ、金、バナナ、米が主要産品であり、主な輸出市場は、EU(53%)、NAFTA(30%)、カリブ共同体(7%)である。第1次フェネティアーン政権(91~96年)の下、構造調整プログラムが実施されたが、続くウェイデンボシュ政権期(96~2000年)には、アルミナの国際市場価格低迷などによる外貨不足と、公共事業拡大をはじめとする放漫財政により、ハイパーインフレが発生し、民衆の街頭デモが起こるなど社会不安が増大した。第2次フェネティアーン政権(2000年~)は、公共セクターの整理・合理化、歳入拡大のための増税、公共料金引き上げなど、再び構造調整政策を実施し、2002年のGDP成長率は1.9%となった。
我が国は、スリナム独立と同時に同国を承認し、外交関係を開始した。近年では、2000年に開催された第1回日・カリブ閣僚レベル会合出席のためリーフェンス外務大臣が来日、2001年にはチョン・チン・ユ貿易産業大臣が貿易・投資促進及び企業視察などのために訪日するなど、同国が95年にカリブ共同体に加盟して以来、日・カリブ協議(93年に開始されたカリブ共同体との政策対話)などを通じて二国間関係は強化されつつある。民間レベルではスリナム独立(75年)以前よりエビ漁・加工に携わる日本企業も進出しており、合弁企業も設立され、高級エビが我が国に輸出されている。
(参考1)主要経済指標等