[7]キューバ
1.概 説
カストロ国家評議会議長は、閣僚評議会議長、軍最高司令官、キューバ共産党第一書記等の要職を兼ねた国家元首として、社会主義体制を確立・維持している。2003年3月、カストロ議長は国家評議会議長に再選された(任期は5年)。なお、キューバにおいては、ラウル・カストロ革命軍事大臣等「革命世代」の他、ラヘ国家評議会副議長、ペレス外務大臣等「第三世代」といわれる若い世代も注目されている。
人権分野では、98年のローマ法王のキューバ訪問を契機として、宗教の自由につき若干の進展が見られたほか、バチカンの要請に応え政治犯を含む約300人の囚人を釈放した。しかし、未だ反体制派に対する抑圧等が報告されており、同国の人権状況が大きく改善したとは言えない状況にある。
旧ソ連経済圏の崩壊に伴い、キューバ経済は「平時の緊急事態」と呼ばれる困難な状況に陥り、90~93年のGDP下落幅は35%に達した。こうした中、キューバ政府は、外貨導入、産業多角化、国内産業効率化を中心とする経済改革を進め、90年代中頃からは高い成長率を記録するようになった。その原動力となったのは、観光業、バイオテクノロジー及び葉巻産業であり、99年には6.2%の成長率を達成した。
その一方で、国内経済基盤は依然として脆弱であると見られている。また、砂糖産業は依然として低調で、外資導入に対して政府は未だ慎重であり、国内金融状況は逼迫したままであると見られている。今後、債務問題解決に努力して短期資本に依存するあり方を是正し、貿易・投資の拡大を進め、国内産業の効率化・多角化を一層推し進め、一次産品(砂糖、ニッケル等)への依存度を下げることなどが課題となっている。
なお、最近では、一次産品の国際価格の低迷、2001年の米国同時多発テロ事件に起因する観光収入の減少、同年のハリケーン災害、石油価格の高騰及び主要石油輸入先であるベネズエラからの石油供給の一時停止などによるエネルギー供給不足等から、キューバ経済は厳しい状況にある。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 基本方針
我が国は、顕著な民主化及び経済自由化が見られないキューバに対しては、資金協力を当面見合わせ、研修員受入れを中心とした技術協力を中心に援助を行ってきたが、同国における草の根レベルでの社会経済開発に資するため、97年度に草の根無償資金協力を導入し、NGO等への直接支援を2002年までに26件実施している。99年には文化無償を開始し、これまで2件の協力実績があるほか、2001年には草の根文化無償を開始した。2000年10月には、初のプロジェクト確認調査団を派遣し、農業、環境分野等を重視した協力を行っていくことで合意したことを受けて、2002年からハバナ湾の水質改善を目的とした初の開発調査を実施している。
なお、自然災害関連の支援についても、98年9月、ハリケーン・ジョージによる災害に対して、緊急援助物資(1,600万円相当)及び緊急無償(5万ドル)を供与したほか、同11月、エル・ニーニョ現象による干ばつとハリケーン・ジョージによる農作物被害に対する支援として、10億円の緊急無償(食糧支援)を実施した。また、2001年11月に発生したハリケーン・ミッシェル災害に対し、UNDPを通じ、農業生産復興のために48万ドルの無償資金援助を行った。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
2001年度のキューバに対する援助実績は3.47億円。うち、無償資金協力は1.65億円(交換公文ベース)、技術協力は1.87億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は12.85億円(交換公文ベース)、技術協力は10.24億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:水産分野及び医療保健分野に対し実施。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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