[8]グアテマラ
1.概 説
グアテマラは長年に亘り軍事政権が続いていたが、86年に民主的選挙によりセレソ大統領が選出され、16年ぶりに民政移管が行われた。中米最後の内戦である反政府ゲリラURNG(グアテマラ国民革命連合)との内戦は60年より続いていたが、91年に開始された和平交渉は94年以降国連の仲介により大きく前進し、96年1月に就任したアルスー大統領の和平交渉プロセスへの積極的対応により、同年12月最終和平合意が成立した。
97年5月には国連軍事監視団の監視の下、ゲリラの武装解除が予定通り完了し、国連PKOの歴史に残る成功例として高い評価を得た。アルスー政権は、最終和平合意に基づく和平プロセスの一環として、先住マヤ民族の人権保障強化を含む行政・司法制度改革など国家の近代化・民主化に取り組むとともに、貧富の格差是正のための社会投資の充実化も図っている。2000年1月に就任したポルティージョ大統領は、和平プロセスの遵守を約束し、軍の改革、税制改革等に取り組んだが、消費税の引き上げを含む税制改革は財界及び市民団体との対立を引き起こし、同プロセスは停滞している。
経済面では、農業が主要産業であるが、輸出用作物は大規模プランテーションで栽培され、先住民を主体とする一般農民は自給自足的な農業を行っている。コーヒー、綿花、バナナ、カルダモン(香料)、チクレゴムなどが主要輸出品であるが、外貨収入は国際市場価格に左右されるため、このことは同国経済を脆弱なものとしている。
96年末の内戦終結後はマクロ経済も安定的に推移しており、経済成長率は、2000年3.3%、2001年2.3%、インフレ率は、2000年5.1%、2001年7.3%と比較的安定している。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
但し、和平合意以降、社会開発部門への歳出が増大して財政悪化が進んでいることから、ポルティージョ政権は税制改革を通じた財政の健全化を図っている。なお、96年の和平協定では2000年までに税収の対GDP比12%を達成することを掲げ、同目標の達成時期は後に2002年末に延期されたが、未だ達成されていない(2002年は10.6%にとどまった)。
我が国とは35年に外交関係を開設した。我が国の主な輸入品はコーヒーである。97年9月には常陸宮同妃両殿下が同国を御訪問され、中米初の皇族御訪問となった。また、2001年8月には山口泰明外務大臣政務官が同国を訪問した。その後2001年5月にはポルティージョ大統領が公式実務賓客として来日した他、2002年1月及び2003年3月にレジェス副大統領が来日した。
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
93年5月のセラーノ大統領による憲法停止の際に、我が国は民主化プロセスに逆行するものと判断し、ODA大綱の原則に則り、米国及びEC等とともに、一部停止を含む援助政策の見直しを行った。
セラーノ大統領に対する内外からの強い批判と、各国の援助見直し措置がグアテマラ経済を失速させたことから、セラーノ大統領は失脚し、デ・レオン人権擁護官が憲法の規定に従い新大統領に就任した。かかる立憲体制の復活は国際社会から歓迎され、各国の援助が従来通り再開されることとなった。我が国としては、ODA大綱の原則に則り、同国の民主化、経済改革への努力を支援していく方針である。
我が国のグアテマラに対する援助は、民主政権が誕生した86年以降、資金協力を含め徐々に拡充してきている。96年の内戦終結を受けて、97年6月には政策協議調査団を派遣し、和平合意の履行に資するため、協力の方向性が協議された。そして教育、保健・衛生、インフラ整備、治安、行政・司法の整備を援助重点分野とすること、及び、分野横断的な視点として、地方と都市の格差是正の問題があることについても確認された。その後、2000年11月の経済協力政策対話等を踏まえ、上記重点分野が再確認されている。
特に教育分野については、識字率、初等教育就学率が中米において最低水準であり、女子教育が極めて低いレベルにあるため、95年に「途上国の女性支援(WID)」が日米コモン・アジェンダの協力分野となったことを受け、同国の女子初等教育振興を日米が協力して取り組んでいくことで合意した。この他、一般プロジェクト無償や専門家・青年海外協力隊派遣、UNDPのWID基金による教育セミナー開催、草の根無償による図書供与・教材開発等、同分野に対して包括的な協力が展開された。
技術協力については、農業、交通、保健・医療、教育などの分野で研修員受入れ、専門家派遣、開発調査等を実施している。特に保健・医療分野では技術協力プロジェクト「熱帯病研究」を実施したほか、右成果を基に、2010年までに中米地域のシャーガス病を根絶するというWHO/PAHOの目標達成に資するため、99年度よりグアテマラにおいてシャーガス病対策の協力を開始した。なお、87年より青年海外協力隊の派遣を開始している。
無償資金協力については、従来は文化無償及び緊急災害援助に限られていたが、89年度以降は援助を拡充してきており、保健・医療、飲料水供給など、基礎的生活分野を中心とする援助を実施している。95年11月及び96年1月の大統領選挙に際しては、民主化支援として米州機構(OAS)に対し10万ドルを拠出したほか、3名の選挙監視員を派遣した。また、96年の和平合意を踏まえ、ノンプロジェクト無償資金協力を初めて供与したほか、近年は飲料水供給、学校建設、医療分野の一般プロジェクト無償を行っている。更に、和平支援の一環として、97年3月、UNDPの「グアテマラ帰還民等の再定住支援計画」に対し245万ドルを拠出するとともに、98年8月にはグアテマラの「人権侵害真相究明委員会」の活動に対し75万ドルを拠出し、同国の民主化に貢献している。また、草の根無償を実施してきている。
有償資金協力については、87年度に首都圏電話網の拡充、90年度に地下水開発、95年度には地方経済社会インフラ整備、98年度には地方道路リハビリに対し円借款を供与した。
同国における援助協調の動きとしては、各国大使館・援助機関代表、各国際機関との間で同国和平プロセス、民主化、社会経済開発等を議論する「対グアテマラ対話グループ会合」及び環境保護と開発にかかる「環境省援助協調会議」が不定期に開催されている。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
2001年度のグアテマラに対する援助実績は36.40億円。うち、無償資金協力は16.77億円(交換公文ベース)、技術協力は19.63億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は194.79億円、無償資金協力は289.65億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は185.25億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:病院・医療、教育、民生・環境、食糧増産分野に支援を実施。
(ハ) 技術協力:農業・観光分野を中心に実施。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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