2.政府開発援助実績

 二国間ODAについてみると、我が国は2001年に支出純額ベースで二国間ODA総額7,452百万ドルの9.9%に相当する738百万ドルを中南米地域に供与した。中南米地域に対するODAのシェアは、ここ10年間、98年を除き10%前後(96年の11.8%が過去最高)で推移している。
 中米において、我が国は、20世紀最大とも言われている98年10月のハリケーン・ミッチの災害に対し、緊急援助物資の供与及び緊急無償資金協力を実施したほか、ニカラグアには国際緊急援助隊・医療チームを、ホンジュラスには国際緊急援助隊法に基づき初めて自衛隊部隊を派遣し、医療・防疫活動を行った。被災後の復旧・復興支援のために、調査団及び専門家を派遣し、500億円を超える支援を行った。また、99年1月のコロンビア地震災害に対しては、緊急援助物資の供与、緊急無償資金協力、国際緊急援助隊救助チーム・医療チーム及びインフラ等復興支援のための専門家派遣等を行った。さらに、2001年1・2月に発生したエルサルバドルの地震災害に対しては、緊急援助物資の供与、緊急無償資金協力、国際緊急援助隊医療チームの派遣等を実施した。これらの地震、ハリケーンによる大規模災害のほかにも、同地域においては、近年エルニーニョなどの影響から集中豪雨、洪水、寒波など災害が多発しており、我が国は人道的観点から、緊急援助物資の供与、緊急無償資金協力など様々な形で積極的に支援を行っており、同地域並びに国際社会から高い評価を得ている。
 中南米地域に対する我が国ODA支出額の形態別構成をみると、70年代初めには有償資金協力が約70%のシェアを占め、技術協力のシェアは約20%、無償資金協力のシェアは数%に過ぎなかったが、その後は、技術協力、無償資金協力のシェアが増加している。2001年においては、有償資金協力22.4%、技術協力41.0%、無償資金協力36.5%となっている。近年は、所得水準が高い国が多いため、他の地域と比較して技術協力のシェアが高いことが、中南米地域の特徴となっている。

表―1 中南米諸国の人口、一人当たりGNP及び我が国との関係

 有償資金協力は、従来、運輸、エネルギー、通信等の経済インフラや農業分野を中心に年間1億ドル台の供与を行ってきたが、近年、中南米各国が民主化や経済改革に真剣に取り組んでいることを踏まえ、89年以来大幅な伸びを示し、91年には4億6,297万ドルと大きな伸びを示した。92~99年では1~4億ドルで推移しており、協力分野もインフラ整備から環境保全に広がり、特にブラジルに対しては環境関連の案件を中心に協力を行っている。
 技術協力は、中南米地域のニーズが高く援助吸収能力も高いなど受入れ条件が比較的整っていることから、従来より活発に行ってきており、99年もアジアに次いで実績が多く、ブラジル、メキシコの2カ国が我が国の技術協力供与国の上位10位に入っている。また、南南協力の一環として、メキシコからは中米・カリブ諸国向け、ブラジルからは中南米及びポルトガル語圏アフリカ諸国向けの第三国研修が拡充されつつある。我が国は南南協力への支援を強化するための枠組みとして、チリ(99年6月)、ブラジル(2000年3月)、アルゼンチン(2001年5月)、メキシコ(2003年10月)とパートナーシップ・プログラムを合意し、中南米、カリブ等の開発途上国に対し、これら各国と共同で、域内国の経済・社会開発支援事業を実施することとしている。
 無償資金協力では、一般プロジェクト無償として、保健・医療、民生・環境、教育分野を始め、ハリケーンからの復興支援を含む道路・橋梁建設等のインフラ分野における協力も多数実施している。また、食糧増産援助、食糧援助、ノンプロ無償、災害復旧支援、水産無償及び文化無償協力等の実績も多い。また、よりきめの細かい援助ニーズに応えるため、一般プロジェクト無償の対象外の国に対しても草の根・人間の安全保障無償を積極的に実施しており、先方政府及び裨益住民より高い評価を得ている。

表―2 中南米地域に対する我が国二国間ODA実績
図―2 中南米地域及び全世界に対する我が国二国間ODAの形態別構成(2001年、支出純額)


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