1. 概 説
(1) 政治面では、2002年11月の総選挙で、イスラム穏健派の公正発展党(AKP)が圧勝し、第58代ギュル内閣が成立した。イスラム色を有する政党が単独過半数を確保したことに加え、選挙前の連立与党が揃って惨敗するのはトルコ政治史上初めて。なお、総選挙での単独過半数政党の誕生は87年以来15年振り。
(2) 外交面では、NATO、OSCE、OECD加盟国及びEU加盟候補国として、対外関係上の比重は西側欧米諸国寄りを基調とする一方、ソ連崩壊後に誕生した中央アジア、コーカサスのトルコ系諸国との関係を強化し、中東諸国ともバランスのとれた外交関係を維持する等、共和国樹立以来の全方位外交を継続中。当面の最重要課題は、隣国イラクを巡る諸情勢への対応である。また、中・長期的な課題はEU加盟問題であり、トルコのEU加盟交渉開始時期を、2004年12月の理事会で決定することに全力を挙げていくこととなる。
(3) 経済面では、近年の二度に亘る金融危機(2000年11月及び2001年2月)はあるも、IMF等の国際金融機関の支援を得つつ、経済構造改革を推進中。AKPは既にIMFとの協調関係継続を掲げていることから、市場の反応は落ち着いており、大きな変動は見られない。しかし、AKP政権としてIMFが経済改革プログラムの中で要求する国営企業の人員削減など、AKP支持層である低所得層の痛みを伴う構造改革を押し進めることの成否については、今後の経済政策を見守る必要がある。
(4) 我が国は25年に中東地域における最初の大使館をトルコに開設して以来、今日に至るまで良好な外交関係を維持しており、両国間における要人の往来も活発である。最近では、2002年1月に田中外務大臣(当時)、及び本岡参議院副議長、7月に村岡日・トルコ友好議連会長、9月に遠山文部科学大臣、10月に三笠宮寛仁親王殿下、11月に茂木外務副大臣が同国を訪問した。トルコからは、2000年には4月のジェム外務大臣(当時)を皮切りに、エルシュメル副首相兼エネルギー天然資源大臣、ウンリュ国務大臣、ミルザオール海事庁担当国務大臣、アイドゥン公共事業住宅大臣、アイテキン環境大臣、オナル経済担当国務大臣が相次いで来日した。また、2001年はタシャル観光大臣、2002年にはガイダル国務大臣、アクジャン公共事業・住宅大臣、ヴラル運輸通信大臣、ウンリュ国務大臣がそれぞれ来日した。トルコ政府は、2003年を「日本におけるトルコ年」と位置づけ、2004年3月までに約100の文化関連事業が実施される予定。
貿易関係については、対日輸出(2001年)が1.55億ドル(工業製品、機械機器、食料品、原材料)、対日輸入(2001年)が7.41億ドル(機械機器、金属品、化学品、原材料)となっている。
2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) トルコに対する政府開発援助の基本的考え方
我が国は、トルコが穏健かつ現実的な外交路線を基調とし、欧米先進諸国との協調並びに隣接する東欧諸国、NIS諸国及び中東諸国との善隣協力関係を志向し、地域の安定化に貢献していること、大きな人口を有し、また、市場経済・対外開放政策の推進を通じて、経済的潜在性が高いこと、アジア、中東及びヨーロッパの結節点に位置し、その地理的重要性が高いこと、従来より我が国と良好な二国間関係を有していることから、対中東地域援助の重点国の一つとして積極的に協力を行っている。
トルコは一人当たりGNPが比較的高い水準にある(3,090ドル、2000年DAC数値)ことから、有償資金協力及び技術協力を中心に援助を実施している。我が国の対トルコ支援の同国に対しては、

環境(都市環境の改善、海洋汚染対策)、

経済社会開発促進のための人材育成、

地域間格差是正のための農漁業等主要産業の振興及び保健・医療等基礎生活分野の改善、

南南協力を重点的に支援していく方針である。対トルコ二国間協力実績は、2000年度までの累計額では、中東地域では第4位となっている。また、我が国は、2000年の実績ではトルコに対する第1位の援助国となっている。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度のトルコに対する援助実績は140.13億円。うち、有償資金協力は120.22億円、無償資金協力は0.87億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は19.04億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は4,321.21億円、無償資金協力は13.21億円(以上、交換公文ベース)、技術協力333.64億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 円借款
これまで運輸、エネルギー、水供給分野をはじめとするインフラ整備を中心に実施してきている。
(ハ) 無償資金協力
同国の比較的高い所得水準に鑑み、一般無償資金協力は実施していないが、文化無償協力をほぼ毎年度実施している。またトルコ内でのNGO等の活動支援のため草の根・人間の安全保障無償資金協力を2000年度に導入した。
(ニ) 技術協力
保健・医療、運輸・交通、鉱工業等の広範囲の分野で、技術協力プロジェクト、研修員受入れ、専門家派遣、開発調査等を実施している。また、96年度より中央アジア・コーカサス地域を対象とした第三国研修を実施している。
(ホ) その他
99年8月のトルコ北西部地震に際しては、国際緊急援助隊や耐震診断分野の専門家、2次にわたる医療チームの派遣、仮設住宅の供与及びその建設指導の専門家チーム派遣に加え、テント・毛布等の緊急援助物資の供与といった包括的な災害援助の実施とともに、236億円の商品借款を供与した他、2002年3月には、イスタンブール市内の4つの橋梁の耐震工事のための円借款供与に合意した。これらの援助は、トルコ側政府関係者・一般国民より高い評価を得ている
3. 政府開発援助実績