[11]チュニジア

1. 概   説

(1) 87年のベン・アリ首相の大統領就任後、88年4月の複数政党制の導入、同年7月の憲法改正等民主化の推進に努力しているほか、イスラム原理主義運動への対応をはじめ治安の安定に注意を払っている。94年3月の国民議会選挙では、野党が現政権下で初めて議席を獲得し、経済発展の成功等もあり現在の政情は安定している。99年11月には、大統領選挙および議会選挙が行われ、ベン・アリ大統領が再選を果たし、改めて民主化推進が表明された。
(2) 外交方針は、全体として穏健かつ現実的である。地中海諸国関係の強化、特にフランス、ドイツ、イタリアをはじめとするEU諸国との関係緊密化を推進しつつ、北アフリカ諸国間協力関係の強化も図り、その他アフリカ諸国との南南協力、中東和平にも積極的に関与している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

(3) チュニジアは、温暖な気候に恵まれているため、伝統的に農業が盛ん(小麦、大麦、柑橘類等)であり、他に石油、天然ガス等の天然資源、食品加工、皮革・繊維等の工業、観光業等多様な産業構造を有している。中でも観光業は、70年以降著しい成長を遂げ、外貨収入の柱(全外貨収入の約14%)となっており、工業製品の輸出も伸びる等、ここ数年5%前後の経済成長率を維持しており、安定した経済発展を続けている。しかし、基本的に欧州依存型の経済構造であるため経済の動向は欧州の景気に大きく左右される上、灌漑対策が十分でないため農産物は天候に大きく依存しており、また、若年層を中心とした高い失業率(15%前後)が存在する等の課題を抱えている。
 現在第10次経済・社会開発5カ年計画(2002~2006)を推進中であり、国際競争力の向上、民間セクターの生産性向上、地域間格差是正等を主要課題として経済発展に取り組んでいる。
 我が国は、チュニジアから魚介類、パルプ、衣類等を輸入し(2001年輸入額219億円)、同国に自動車、タイヤ、電気製品等を輸出している(同輸出額14億円)。96年7月には、ベン・アリ大統領が来日した。

2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 我が国のチュニジアに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、チュニジアが、穏健かつ現実的な外交政策をとり先進諸国との関係が良好であること、経済回復に向けて構造調整政策を順調に推進していること等に鑑み、有償資金協力及び技術協力を中心に積極的に援助を実施している。
 98年4月には、経済協力政策協議を実施し、主要産業の一つである農業及び水産業の開発・振興の支援、限られた水資源の効率的利用のために、農業用水、飲料用水確保のための水資源開発への支援、持続的経済成長を支える基礎インフラ整備分野への支援、都市・地方間の格差是正のための地方開発分野への支援、発展のための持続可能性確保のための環境分野での支援の5分野を重点分野とすることを確認した。
 また、国民各層に存在する様々な意見や議論を踏まえ、2002年10月に政府は「対チュニジア国別援助計画」を策定した。同計画では、チュニジアの開発上の主要課題、我が国に対する様々なアプローチ、期待度の高さ等を踏まえた上で、我が国として中・長期的な観点から、特に優先的に取り組むべき重点分野、課題は、(イ)産業のレベル・アップ支援、(ロ)水資源開発・管理への支援、(ハ)環境への取り組みに対する支援、の3つの柱を挙げている。右援助重点分野に対する具体的な援助方針は次のとおりである。
(イ) 産業のレベル・アップ支援
 全ての分野において国際競争力をつけることが必要であるが、我が国の得意分野も踏まえて、運輸及び情報通信セクターを中心とした経済インフラ、生産・品質管理、生産性向上、中小企業育成、技術開発、職業訓練等の分野で支援する。
(ロ) 水資源開発・管理への支援
 チュニジアにおける水資源セクターは中・長期的観点からも引き続きチュニジアの開発計画の中で重要な位置を占めるものと見込まれる。今後は水源開発に対する支援のみならず、水需給管理、表流水・地下水の管理を含む総合的な水資源管理に繋がる支援を我が国の経験及び技術力を活かして協力を進める。なお、その際には特に開発の遅れている地方及び貧困地域の振興という観点からも配慮を行っていく。
(ハ) 環境への取り組みに対する支援
 水質管理、大気汚染、廃棄物の処理、土壌劣化防止、砂漠化防止、再生可能エネルギーの導入、地下水資源の有効利用等の分野でチュニジア側が進めている環境政策に沿った協力を進める。また、我が国が円借款及び水産無償案件を実施するに当たっては、これまで通り環境に十分配慮する。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のチュニジアに対する援助実績は143.79億円。うち、有償資金協力は125.01億円、無償資金協力は8.51億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は10.27億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は1,659.62億円、無償資金協力は34.34億円(以上、交換公文ベース)、技術協力144.79億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
 有償資金協力については、93年度以降毎年連続して円借款を供与している。2001年度は効率的な物流・人の移動を促進するために、同国の高速道路建設計画における一区間を整備する「エル・ジェム・スファックス間高速道路建設計画」に対し、120.22億円を限度とする円借款を供与した。
(ハ) 無償資金協力
 無償資金協力については、一人当たりGNPが比較的高い水準にあることから一般プロジェクト型の無償資金協力は行っていないが、85年度以降ほぼ毎年度文化無償資金協力を実施している。
(ニ) 技術協力
 技術協力については、保健・医療、水産業等の分野において、技術協力プロジェクトをはじめ、研修員受入れ、青年海外協力隊及びシニア海外ボランティア派遣、開発調査等を中心に実施している。
 また、99年3月には、我が国のサハラ以南アフリカ諸国に対する効果的・効率的な技術協力を推進するための「アフリカにおける南南協力推進のための日・チュニジア三角技術協力計画」に関する枠組み文書の署名がなされており、アフリカ諸国を対象とした第三国研修を開始している。

3. 政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件

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