[10]スーダン
1. 概 説
(1) スーダンは、周辺9カ国と国境を接し、ナイル川の水利を制するとともに紅海の自由航行に影響を及ぼすアフリカ最大の面積を有する国であり、その安定はアフリカ全体の安定に影響を及ぼす。かかる観点から、我が国としては、これまで同国の安定的発展に大きな関心を払ってきた。
一方、同国では20年に及ぶ内戦が継続しており、約47万人もの難民、400万人を超える国内避難民を生み出している他、深刻な飢餓問題が発生している。また、89年に現政権が軍事クーデターにより発足して以来、内政面ではイスラム原理主義的な傾向の強い国家運営を行うとともに、著しい人権侵害が目立つようになったことから、92年以降は主要ドナー国からの同国に対する人道援助を除く二国間援助が停止されている。また外交面では、国際的なテロ支援に関する疑惑により96年に国連安保理決議に基づく制裁を課せられた。
しかしながら、最近、同国政府は人権状況の改善や民主化に向けた一定の努力を払っているとともに、内戦に関しても、政府間開発機構(IGAD)主導の下、反政府勢力との和平交渉に積極的に臨み、2002年7月には包括的和平に向けた基本合意を達成する等、国際社会との協調の道を模索しつつ国内問題の解決に努力している。更に、同国に課せられていた国連制裁に関しては、近年、同国がテロとの戦いに関し、国際社会に対して積極的な協力姿勢をとってきたことから、国連安保理決議に基づく制裁は2001年9月に解除され、これに基づき、我が国も同国に対し取っていた措置を全廃した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
(2) 経済面においては、巨額の対外累積債務を抱える等、経済状況の低迷が続いているが、96年からはIMF経済修復プログラムを受け入れ、経済再建に努めており、また、豊富な各種資源のうち、特に近年油田採掘プロジェクトの進展に伴い、99年からは原油の輸出を開始し、我が国を含む数カ国に対して輸出を実施している。
同国の経済的発展は国内の政治的安定にも影響を及ぼすとともに、周辺地域の安定にも重要な要素となっている。
2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) スーダンに対する政府開発援助の基本的考え方
スーダンでは、80年代後半から90年初頭にかけて国内に著しい人権侵害状況が見られ、我が国を含む各国が再三の改善要求を行ったがスーダン側の対応に変化が見られなかったため、92年10月、我が国はODA大綱4原則を踏まえ、緊急・人道的性格のものを除き原則として援助を停止することを決定し、現在に至っている。今後の援助再開については、ODA大綱を踏まえ、スーダン側の対応、国際社会の反応等を見極めつつ検討していく必要がある。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度までの援助実績は、有償資金協力は107.42億円、無償資金協力は764.66億円(以上交換公文ベース)、技術協力51.2億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力
累次の食糧援助・食糧増産援助をはじめとする食糧・農業分野、保健・医療分野、水供給分野等の基礎生活分野を中心に、経済インフラ整備を含む幅広い分野について協力を行ってきていた(98年度までの我が国の対スーダン無償資金協力累計実績は、734.83億円で中東域内第2位)。しかし92年10月以降は、緊急・人道的援助以外の援助は行っていない。同国への緊急・人道的援助としては、世界食糧計画(WFP)及びUNICEFへの資金拠出のほか、WFP経由の食糧援助、UNICEF経由による感染症対策並びに草の根・人間の安全保障無償によるNGO等の活動に対する資金協力を実施している。
(ハ) 技術協力
農業、保健・医療等の分野における研修員受入を中心に実施してきたが、現在は協力を実施していない。
(ニ) 有償資金協力
前述の理由及び同国の債務状況の悪化により、87年度以降債務繰延べを除き円借款の供与は行っていない。
3. 政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
前ページへ 次ページへ