[4]イ ラ ク

1. 概   説

(1) ブッシュ米国大統領は、2002年1月の一般教書演説の中で、北朝鮮、イランとともに、イラクを「悪の枢軸」と名指しし、「米国は、世界で最も危険な政権(フセイン政権)が、世界で最も破壊力のある兵器を用いて米国を脅かすことを許しはしない」と述べ、イラクを巡る緊張が再び高まった。
(2) 事態の打開を目指し、アナン国連事務総長とサブリ・イラク外相は、2002年3月、5月、7月の3度に亘り対話を実施したが、査察再開の合意には至らなかった。このようにイラクを巡る緊張が一層高まる中、ブッシュ米大統領は、9月12日の国連での一般討論演説において、これまでのイラクの安保理決議の不履行を指摘した。国際社会の注目を浴びた同演説では、ブッシュ米大統領は安保理を通じた本件問題への対処の必要性を強調したが、一方で、イラクが対応しない場合には、武力行使は不可欠であるとの考えも明確に示した。
(3) 国際社会による働きかけの結果、9月16日、イラクは無条件での査察の受け入れを表明し、9月30日及び10月1日に、国連及びIAEAとイラクとの間で、査察に関する実務協議が行われた。その後、査察を一層実効性の高いものとするため、国連安保理において約8週間に及ぶ議論が行われた。その結果、11月8日、イラクに対して強化された査察の受け入れをはじめとする一連の義務の履行を強く求める安保理決議1441が、シリアを含む全会一致で採択され、11月13日、イラクは安保理決議を受諾することを国連に通報した。これを受け、11月18日には、UNMOVIC及びIAEAの先遣隊がバグダッドに到着し、11月27日、イラクでの査察が約4年振りに再開されることになった。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) イラクに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、イラクに対し、かつては有償資金協力及び技術協力を実施していたが、90年のイラクのクウェイト侵攻に対する経済制裁措置の一環として、2002年末現在、二国間援助を凍結している。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のイラクに対する援助実績はない(技術協力は(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース))。2001年度までの援助実績は、無償資金協力7.30億円(交換公文ベース)、技術協力45.39億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
 人道的観点からの国際機関を通じた支援としては、湾岸戦争により発生したクルド人を中心とした避難民に対する援助を実施するため、91年4月から95年5月までに総額1億ドルの緊急援助を国連災害救済調整官事務所(UNDRO)に対して行った。
 また、対イラク経済制裁により極度な食糧、医薬品不足に見舞われているイラク国民の窮状に鑑み、97年1月に世界食糧計画(WFP)及びUNICEFを通じて緊急無償を実施した。更に、99年3月には、UNICEFを通じ95万ドル、赤十字国際委員会(ICRC)を通じ60万ドルの緊急無償を実施した。

3. 政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件

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