(1) ブッシュ米国大統領は、2002年1月の一般教書演説の中で、北朝鮮、イランとともに、イラクを「悪の枢軸」と名指しし、「米国は、世界で最も危険な政権(フセイン政権)が、世界で最も破壊力のある兵器を用いて米国を脅かすことを許しはしない」と述べ、イラクを巡る緊張が再び高まった。
(2) 事態の打開を目指し、アナン国連事務総長とサブリ・イラク外相は、2002年3月、5月、7月の3度に亘り対話を実施したが、査察再開の合意には至らなかった。このようにイラクを巡る緊張が一層高まる中、ブッシュ米大統領は、9月12日の国連での一般討論演説において、これまでのイラクの安保理決議の不履行を指摘した。国際社会の注目を浴びた同演説では、ブッシュ米大統領は安保理を通じた本件問題への対処の必要性を強調したが、一方で、イラクが対応しない場合には、武力行使は不可欠であるとの考えも明確に示した。
(3) 国際社会による働きかけの結果、9月16日、イラクは無条件での査察の受け入れを表明し、9月30日及び10月1日に、国連及びIAEAとイラクとの間で、査察に関する実務協議が行われた。その後、査察を一層実効性の高いものとするため、国連安保理において約8週間に及ぶ議論が行われた。その結果、11月8日、イラクに対して強化された査察の受け入れをはじめとする一連の義務の履行を強く求める安保理決議1441が、シリアを含む全会一致で採択され、11月13日、イラクは安保理決議を受諾することを国連に通報した。これを受け、11月18日には、UNMOVIC及びIAEAの先遣隊がバグダッドに到着し、11月27日、イラクでの査察が約4年振りに再開されることになった。