[3]イエメン

1. 概   説

(1) 90年5月の南北イエメンの統合後、市場経済に立脚した開発と民主主義の確立を基本政策とし、複数政党制を採用している。94年5月旧南北イエメンの間に大規模武力衝突が発生したが、旧北イエメン側が旧南イエメン側を武力制圧して戦闘は終結し、同年10月には改正憲法の公布、97年4月には総選挙が実施されたことに加え、99年9月、イエメン初の国民直接投票による大統領選挙が行われ、現職のサーレハ大統領が再選される等、民主化プロセスが進展している。
(2) 外交面では、非同盟主義、イスラム世界との連帯強化を基調としつつ親先進諸国・穏健路線をとっている。湾岸危機に際しては親イラク的立場をとったと見られ、周辺諸国との関係が悪化したが、関係改善に努めている。特に、サウジアラビアとの関係では、2000年6月、サーレハ大統領が同国を訪問し、海上、陸上国境確定に関する条約への署名が行われ、以後両国間の交流が活発化している。2001年9月の米国同時多発テロ以降、国際テロ対策の関心の高まりに呼応し、イエメンは米国からの治安協力も受けつつ、自国内のアルカイーダ分子の掃討に取り組んでいる。
(3) GDPの約15%、労働人口の約60%が農業に従事する農業国であり、近年、ダム建設による灌漑等近代農法の導入及び普及に努力している。統一後旧南イエメンの石油鉱区が各国の石油会社に開放され、海外の石油会社がイエメン政府との間で石油開発のための生産分与協定を締結し、石油開発を行っている。更に、未開発ではあるが豊富な天然ガスの存在も確認されている。
(4) 95年、世銀・IMFの支援の下、緊縮的な財政・金融政策を内容とする経済改革に着手し、インフレ率の低下等の効果が現れている。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

 今後は、市場経済原理の導入により増大しつつある社会的弱者層をいかに救済していくかが課題となっている。
 我が国は、イエメンから石油、コーヒー、イカ等を輸入し(99年輸入額65億円)、同国に鉄鋼、自動車、電気製品等を輸出している(同輸出額91億円)。99年3月には、サーレハ大統領がイエメン大統領として初めて訪日した。

2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) イエメンに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、イエメンの一人当たりGNPが490ドル(2002年)と中東地域で最も低い国の一つであり、経済社会開発推進のための援助需要が高いこと等から、無償資金協力及び技術協力を中心に積極的に援助を実施している。99年の政策協議の結果を踏まえ、同国の政情・経済社会情勢、開発計画、治安の推移を見極めつつ、基礎生活分野(地方給水、保健・医療、初等教育分野)を中心に援助実施を検討していく方針である。
 2002年12月にイエメンによる北朝鮮からのスカッドミサイル輸入が明らかとなった際、我が国はかかる事態を深刻に受け止め、事件発生直後にイエメン政府に対し、ODA大綱との関連においては、武器輸出入等の動向に十分注意を払うことを定める同大綱原則に対する認識と理解を深めるよう強く申し入れた。これに対し、同国政府より、日本政府の懸念を十分理解する、このような出来事を二度と繰り返すことはない、との回答を速やかに得た。
 今後の対イエメン経済協力については、ODA大綱に則り、同国の経済社会状況、テロとの闘いにおける同国の役割等、種々の要素を総合的に判断の上、具体的に検討していく方針である。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のイエメンに対する援助実績は18.30億円。うち、無償資金協力は15.52億円(交換公文ベース)、技協協力は2.78億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力532.07億円(交換公文ベース)、技術協力65.61億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力
 食糧増産援助、債務救済及び基礎生活分野(地方給水、保健・医療、初等教育)を中心に協力を実施している。2000年10月の米軍艦爆破事件や2001年9月の米国同時多発テロの発生により、危険度が2から3へと引き上げられたため、この期間の調査団派遣・工事等が中断されたが、2002年4月に安全確認調査団を派遣し、右結果を受け、2002年度は一般無償「南部イエメン結核対策拡充計画」及び「小中学校建設計画」の実施を決定した。
(ハ) 技術協力
 上述の安全確認調査の結果、従来の技術協力プロジェクトの専門家に加え、地方を含む個別専門家の派遣を再開している。また、青年海外協力隊派遣の再開については、イエメン側より、具体的な協力隊員の派遣にかかる要請(2002年7月)があったため、今後、要請背景調査等の実施を含め派遣再開の可能性を検討していく。
(ニ) 有償資金協力
 通信、運輸等経済インフラ整備に対し円借款を供与してきたが、イエメンがLLDCであり、また96年9月以降債務削減措置が適用されているため、新規の円借款供与は困難な状況にある。
(ホ) その他
 イエメンにおいては、援助国・機関の間で援助協調が進んでおり、保健・医療、感染症、PRSP策定の分野においてイエメン政府機関が開催するドナー会合や、UNDP、UNHCR等の国際機関が各国大使館・NGOとの間で行うドナー会合が複数開催されている。

3. 政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施草の根無償資金協力案件

前ページへ 次ページへ