[6]アゼルバイジャン

1.概   説

 91年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。93年10月に現在のアリエフ大統領が就任、95年11月に行われた新憲法の採択と議会選挙以後、政治情勢は安定化し、98年10月の大統領選挙でアリエフ大統領は圧倒的支持で再選された。
 アゼルバイジャンの最大の懸案は、アルメニアとのナゴルノ・カラバフ紛争(アゼルバイジャン領内のナゴルノ・カラバフ自治州の住民はアルメニア人が多数を占めており、88年、同州の帰属を巡ってアルメニアとの武力衝突が激化した)の解決である。94年5月に停戦合意が成立、合意は遵守されているが、最終和平に向けた交渉が決着していない。この民族紛争により、約90万人の避難民が発生している。
 外交面では、伝統的にトルコとの関係が深く、また、豊富な石油資源を背景に、米国をはじめとする西側との関係を強化しつつある。一方、現政権はロシアとの関係にも一定の配慮を見せている。
 アゼルバイジャンは、カスピ海沿岸にバクー油田を擁し、ロシア帝政時代から50年代にかけて重工業の中心であったが、油田が枯渇し始めた60年代初め頃から経済的地位は低下した。しかしカスピ海の石油資源にはまだ相当の潜在力があり、94年以来、国際コンソーシアム等が10以上の鉱区で開発プロジェクトを実施するなど、同国は活発に石油開発を進めている。また、我が国企業もコンソーシアム参加等、近年同国の石油開発に積極的に進出している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

 アゼルバイジャンは95年に入りIMFとも協議の上、インフレや生産低下の抑制などを内容とするマクロ経済安定化プログラムを作成し、既に為替レートの一本化、外貨予算や国家発注の廃止、及び国営企業の民営化などの措置を実施している。2000年2月にはADBに加盟した。カスピ海の石油資源には西側の関心が高まっており、投資がもたらす経済効果に寄せる期待が大きい。
 我が国との交流は、民間では日本アゼルバイジャン経済合同会議が行われるなど、石油・ガス開発を軸に拡大の方向にある。アゼルバイジャンから98年1月にラシザデ首相、98年2月にアリエフ大統領、2001年6月グリエフ外相、2003年1月にはハラフォフ外務次官が訪日、我が国からは99年5月高村外務大臣(当時)、同年10月コーカサス友好親善ミッション(団長:中山元外務大臣)が訪問した。また、2002年7月に杉浦外務副大臣(当時)を団長とし、産官学で構成されたシルクロード・エネルギー・ミッションが同国に派遣されたのに続いて、2003年2月には矢野外務副大臣が同国を訪問するなど、外交関係を深めている。

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) アゼルバイジャンに対する政府開発援助の基本的考え方
 アゼルバイジャンはソ連崩壊後の新たな国際情勢において地政学的に重要な位置を占めており、豊富な石油ガス資源の存在も我が国のエネルギー政策上重要である。また、同国の民主化、市場経済導入の動きはODA大綱の観点からも望ましいものであるため、同国が人材不足や経済インフラの老朽化、環境悪化等の問題に効率的に対処し、経済的な困難を克服して国造りを行えるよう、我が国は積極的な支援を行っている。
 我が国は、アゼルバイジャンがDACリストパートIに掲載されODA対象国となる以前の91年から、研修員受入れや医薬品などの供与等の協力を開始しており、また旧ソ連諸国に対する人道支援の一環として、93年以降、同国に対して374万ドル相当の支援を実施している。
 さらに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じた難民支援の実施に当たり、93年以来総計266万ドルの拠出を行っている。
 ODAによる協力の重点分野については、2002年11月に行った政策協議を踏まえ、経済インフラ整備(特にエネルギー、運輸・通信)、社会セクター、人造り、の3分野としている。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のアゼルバイジャンに対する援助実績は14.66億円。うち、無償資金協力は8.96億円(交換公文ベース)、技術協力は5.70億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力390.31億円、無償資金協力43.01億円(以上、交換公文ベース)、技術協力18.88億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
 98年2月には、初の有償資金協力として「セヴェルナヤ・ガス火力複合発電所計画」に対する円借款の供与を行った。
(ハ) 無償資金協力
 96年度から食糧増産援助及びノンプロジェクト無償資金協力を行い、98年度には初の一般プロジェクト無償である「母子病院医療機材整備計画」及び文化無償を実施した。そのほか、NGO、地方自治体を通じた草の根・人間の安全保障無償も実施してきている。2001年度は、主に、リハビリケア改善計画、食糧増産援助を実施した。
(ニ) 技術協力
 市場経済及び各種行政分野を中心に研修員受入れを行っている。また98年より専門家派遣を開始し、中小企業振興、職業教育分野の専門家派遣を行っている。開発調査は、社会インフラ整備、環境分野を対象に実施している。
3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度実施開発調査案件
(参考2)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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