[27]タンザニア

1.概   説

 タンザニアは、タンガニーカとその沖合いに位置する島国ザンジバルが64年に合邦してできた連合共和国である。92年5月に革命党の一党支配から複数政党制へ移行し、同制度下における初めての大統領・国会議員選挙が95年10月に実施され、ムカパ大統領、スマイエ首相等からなる政権が発足した。2000年10月には任期満了による大統領選挙及び議会選挙が実施され、現職のムカパ大統領が再選された。ザンジバルにおいては先の選挙の時と同様、選挙結果をめぐり与野党間の対立が激化し、暴動事件やザンジバル住民の国外(ケニア)避難事件等が発生したが沈静化した。
 外交面では、アフリカ連合(AU)、国連等の国際場裡で積極的に活動し、また、先進諸国、東アジア諸国との関係強化に努めている。東アフリカ諸国との関係では、ケニア、ウガンダとの間で地域協力の強化に努め、2001年1月の三カ国首脳会議にて東アフリカ共同体(EAC)が正式に発足した。南部アフリカ開発共同体(SADC)の中心メンバーでもある。また、タンザニアは大湖地域全体の安定化を目指し、ブルンジ、コンゴ民主共和国等における和平の実現に向けて積極的な外交努力を行っている。
 経済面では、GNIの約50%、労働人口の8割を農業部門が占めている。86年以降世銀・IMFの支援を得て、投資・流通制度改革、公営企業改革、公務員の削減等の構造調整政策に取り組み、現在は、2000年に策定されたPRSPに則り開発を進めている。98年以降の経済成長率は、観光、鉱物資源(ダイヤモンド、金、宝石等)産業が好調であったこともあり、3.6%と2年連続3%台を達成するとともに、2000年度は5.1%、2001年度は5.7%を達成した。インフレ率も2000年で9.1%と低い水準に落ち着いている。現在の課題として、構造調整に伴う失業者及び貧困層への対策等が挙げられる。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

 我が国との関係は従来より良好であり、貿易関係については、我が国はタンザニアからコーヒー等を輸入し(2001年輸入額6,367万ドル)、同国に自動車等を輸出している(同輸出額7,566万ドル)。98年12月にはムカパ大統領が来日した他、99年及び2000年には、タンザニアの与野党議員団が、2001年のTICAD閣僚レベル会合にはキゴタ大統領府計画・民営化担当国務大臣が訪日している。我が国からは、99年12月に高円宮同妃両殿下が、2001年4月には櫻田外務政務官(当時)が、2002年1月には人口問題議員懇談会メンバー(桜井新参議院議員他4名)が訪問している。


2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) タンザニアに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、タンザニアが東・南部アフリカ諸国において指導的な役割を担い、積極的に活動していること、86年以降、金融部門改革、公社・公団改革等の構造調整・市場指向型経済政策を着実に推進していること、92年5月複数政党制を導入し、95年10月大統領・国会議員選挙を実施する等、民主化努力を推進していること、2000年に策定されたPRSPに則り開発を進めていること、我が国との関係が極めて良好であること、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)をもって具体的な開発目標を掲げていること、一人当たりGNIが270ドル(2000年)と極めて低い水準にあり、援助需要が大きいこと等から、重点的に援助を実施している。
 我が国は、タンザニア政府との度重なる協議や、国民各層に存在する様々な意見や議論等を踏まえ、2000年6月に政府は「タンザニア国別援助計画」を策定した。同計画では以下を重点分野としている。
(イ) 農業・零細企業の振興のための支援
 国家財政の援助依存体質(国家予算の約4割が援助)からの脱却を図り、人口の約半分が絶対的貧困状態にあるといわれるタンザニアにおいて自立的経済・社会開発を達成していくためには、農業をはじめとする産業振興が不可欠である。
 GNIの約5割、総輸出額の7割強を占める農業への支援はとりわけ重要である。また、労働人口の8割(1,280万人)が農業に従事し、その内7割が耕作面積2ヘクタール以下の小規模農民であることを踏まえれば、農業振興は貧困対策としての側面も有する。
 農業・農村開発の観点からは、地域住民による維持管理の可能な小規模灌漑施設や農産物輸送のための道路などの農業インフラ整備や農業技術の移転が重要であり、我が国は、無償資金協力、有償資金協力、技術協力を有機的に組み合わせることによって、キリマンジャロ州の農業開発に貢献した実績を有している。債務削減措置の対象となっていることからタンザニアに対しては新規円借款の供与が困難であるが、こうした経験も踏まえ、無償資金協力や技術協力を組み合わせることによって効率的な援助を実施していく必要がある。一方、貧困農民救済の観点からは、農業協同組合組織の整備・育成、及び小規模融資(マイクロ・クレジット)の促進など直接小規模農民に裨益する協力が効果的である。
 また、農林産物の付加価値を高めるための加工技術の普及及び企業振興等、さらには縫製、製粉、皮革製造、金属加工、窯業といった、比較的技術の習得が容易な分野における技術開発や技能訓練、及び小規模融資等による起業家支援を行うことも、零細企業の育成を通じた貧困救済には効果的であると考えられるので、協力を検討していく。
(ロ) 基礎教育支援
 低下しつつある就学率を改善し、人材育成の根本をなす基礎教育の充実を図ることはタンザニアの国家開発上重要である。我が国としても、タンザニアの抱える開発課題の解消には、基礎教育が重要な鍵となるとの認識の下、同国の教育セクター・プログラムを踏まえ、他の援助国・機関との連携にも配慮しつつ、セクター・プログラムの中に適切に位置づける形で無償資金協力による学校施設の整備を検討していく。
 一方、基礎教育の一部有料化に伴う父兄の学費負担困難が就学率低下の背景にあるともいわれている現状を勘案すれば、教育自体の必要性に対する理解が国民一般に共有されるよう教育内容自体についても改善する必要がある。この観点より、教育政策アドバイザーの派遣等を検討し、教員の質的向上を支援するための教員再教育プログラムへの支援を検討していく。この場合には、他の援助国・機関とも協調しつつ、我が国が経験豊富で比較優位を有する理数科教育分野を担当していくことが妥当と考えられる。また、基礎教育課程への簡単な保健衛生教育の導入やラジオ放送等を利用した遠隔地教育、さらには成人教育への支援等、我が国独自の工夫を打ち出すことが望ましい。
(ハ) 人口・エイズ及び子供の健康問題への対応
 保健医療分野に対する我が国の協力は、これまで中核病院や難民地区への医療器材の供与や、マラリア抑制のためのプロジェクト、ポリオワクチン全国一斉投与計画への支援、母子保健分野で実施され、大きな評価を得ているが、タンザニアの置かれた状況を勘案すれば、引き続きこの分野における協力を継続することが重要である。
 今後は、特に地方における医療サービスを充実していくことが大きな課題である。多くの地区レベルでの基礎的な医療技術の向上、及び地区医療センター、地方病院、中央病院に繋がるリファーラル体制の充実、更には衛生知識に関する住民啓発活動等を充実させていくことが重要である。
 また、我が国は、タンザニアを「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティヴ」(GII)の重点国の一つと位置づけており、開発福祉支援事業などにより住民のHIV感染予防、家族計画に関わる教育・啓蒙活動実施を支援していく。
 なお、保健分野においてもセクタープログラムが策定され段階的に実施されているところ、我が国としてもこれを踏まえて、他ドナーとの連携にも配慮しつつ協力を検討していく。
(ニ) 都市部等における基礎的インフラ整備等による生活環境改善
 都市部の人口増加により、道路、橋等の輸送網、通信、送配電網、上水道、下水道、廃棄物処理施設といった基礎インフラ整備の必要性が高まっていることから、我が国としては、今後とも、他の援助国・機関との連携・役割分担を行いながら協力を進めていく。特に首都ダルエスサラームについては、我が国はこれまで舗装道路総延長の20%、全送電網の40%、電話回線の30%を整備しているものの、未だ首都機能を担うには不十分な状況にあることから、引き続き支援を検討していく。
 一方、地方主要都市及び地方都市間のインフラ整備も、地方都市貧困層の生活環境改善やその副次的効果としての首都への人口流入防止等の観点から重要である。更に、近隣諸国(ウガンダ、ザンビア、マラウイ等)を視野に入れた広域インフラの整備も地域間経済協力の促進には重要である。具体的には地方の主要幹線道路の整備、南部地域の水資源開発等に可能な支援を検討していく。
(ホ) 森林保全
 森林が国土の約3分の1を占めているものの、人口増加に伴う耕地拡大、薪、木炭など燃料用としての採取などの結果、森林喪失が進んでいる。森林は、水資源の確保や土壌保全の機能に加えて将来の外貨獲得源となりうる観光資源でもあり、タンザニアにとって多面的な重要性を有している。
 緑の推進プロジェクト等これまで我が国が行ってきた協力は期待された成果を挙げたが、今後もこうした森林の重要性を踏まえ、引き続き森林の持続的開発に対する協力を進めていく。その際には、奥地でのフィールド活動が可能な援助人材を比較的効率的に確保出来るという観点から、現地NGO等を積極的に活用することや、森林資源を管理するアドバイザーの派遣等も検討する必要がある。
 2001年4月の、政策協議では、「国別援助計画」に基づく我が国の考え方を説明するとともに、タンザニアにおける開発の現状と課題及び開発計画を確認し、引き続き、上記5分野を中心に支援を行うことで先方政府と合意した。
 タンザニアは政府主導の下、ドナー、市民社会を含む関係者の協力により貧困削減戦略書(PRSP)を2000年に策定した。また、教育、保健セクター等のセクター・ワイド・アプローチ(SWAp)を積極的に推進しており、英、EU、北欧等の参画によるコモン・バスケットを導入する等、援助協調の動きが活発に進んでおり、我が国も積極的に参加していく方針である。さらに我が国は、農業分野でリーディング・ドナーとして他ドナーと連携を図りつつ、地方開発戦略、並びに農業開発戦略の策定にかかる支援を行い、現在、農業開発計画の策定にかかる支援を行っている。
 なお、我が国はタンザニアのPRSPの実施を支援すべく、2001年度よりタンザニア政府との間で貧困削減財政支援(Poverty Reduction Budget Support)基金に一般直接財政支援を実施している。我が国が一般直接財政支援へ参画する初めての試みであった。また、PRSPモニタリング・システムの構築作業が進行中であり、我が国は運営委員会、技術委員会のメンバーとして参画している。
(2) 2001年度の援助実績
 2001年度までの我が国の援助累計実績では、有償資金協力434.34億円、無償資金協力1,175.48億円(以上交換公文ベース)、技術協力491.59億円(JICA経費ベース)の協力を行っている。2001年度は、無償資金協力47.28億円(交換公文ベース)、技術協力30.29億円(JICA経費実績ベース)を行った。
 無償資金協力については、灌漑、道路、水供給、教育及び食糧援助、食糧増産援助等の分野での協力を実施した。
 技術協力については、農業、保健医療分野における技術協力プロジェクトの他、教育、農業、保健医療、開発計画等の分野における専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊員派遣、開発調査等による協力を実施した。


3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件

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