第5節 地球規模の問題
1.
21世紀に向けた環境開発支援構想(略称ISD)(要約)
Initiatives for Sustainable Development(ISD) toward the 21st Century
(1997年6月の
国連環境開発特別総会にて発表)
1.UNCEDの目標達成
92年の
国連環境開発会議(UNCED)の際、我が国は「環境分野における政府開発援助を92年度から5年間で9000億円から1兆円を目処として大幅に拡充・強化する」ことを表明し、その後、92年度から96年度までの5年間の合計は、約1兆4400億円となり、当初の目標を4割以上上回る実績を達成した。
我が国としては、引き続きODAを中心とした環境協力の更なる充実を図っていく。
2.ISDの理念
(1) 人類の安全保障(Global Human Security):環境破壊は人類生存の脅威となりうる広い意味での安全保障の問題である。
(2) 自助努力(Ownership):途上国が第一義的な責任と役割を担って主体的に環境問題に取り組むことが重要であり、援助国はこうした自助努力を支援する。
(3)
持続可能な開発(Sustainable Development):途上国が持続可能な開発の観点から発展していくために、その国の経済的・社会的状態を勘案しつつ環境協力を支援する。
3.行動計画のポイント(ODAを中心とした我が国の国際環境協力)
(1) 大気汚染・水質汚濁・廃棄物対策
(イ) 「東アジア酸性雨モニタリング・ネットワーク」の提唱
(ロ) 「環境センター」を通じた途上国の環境部局の強化を行う
(ハ) 資金・技術協力(汚染源対策、リサイクル等、「グリーン・エイド・プラン」の活用)
(2)
地球温暖化対策
省エネルギー、新エネルギー技術の世界的な普及を図る。
(3) 自然環境保全、森林・植林
(イ) 「インドネシア生物多様性センター」を拠点として、東アジア地域の生物多様性の情報ネットワーク化を行う。
(ロ) アジア・太平洋地域において「サンゴ礁保全研究センター」を設置し、地域のサンゴ礁保全研究ネットワークを形成する。
(ハ) 社会林業プロジェクトや円借款による広域にわたる住民参加型植林を進めていくとともに、国際熱帯木材機関(ITTO)への貢献を強化する。
(4) 「水」問題への取り組み
浄水場、上下水道網、井戸等の整備を進めていく。
(5) 環境意識向上・戦略研究
(イ) 日中間の政府・地方自治体・民間の包括的な取り組みである「日中環境協力総合フォーラム」やアジア太平洋地域の環境大臣や国際機関による「エコ・アジア」を通じ、政策対話を進めていく。
(ロ) 草の根無償援助による環境教育プログラムの積極的支援を行う。
(ハ) 地球環境問題に対する新たな政策手段の開発等を行う「地球環境戦略研究機関」を設置し、国際的なネットワークづくりを進める。
2.21世紀に向けた環境開発支援構想・
京都イニシアティブ
(温暖化対策途上国支援)(要約)
1997年12月
背景
我が国は、本年6月の国連環境開発特別総会において橋本総理大臣より、ODAを中心とした環境協力の包括的な中長期構想として「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」を発表した。その行動計画において、温暖化対策に関する支援が示されている。
本年12月に、京都において開催される
気候変動枠組み条約第3回締約国会議の議長国として、ODAを中心とした温暖化対策途上国支援を一層強化するために、本構想の温暖化対策途上国支援策として、「京都イニシアティブ」を発表する。
京都イニシアティブの理念
(1) 人類の安全保障(Global Human Security)
地球温暖化問題は、人類生存の脅威であり、広い意味での安全保障の問題である。
(2) 自助努力と連帯(Ownership & Partnership)
温暖化対策は、途上国が主体的に取り組むとともに、地球的規模の問題解決のため先進国と途上国が共同して対処することが重要である。
(3)
持続可能な開発(Sustainable Development)
開発と環境保全の両立を目指し、温暖化対策と経済開発の双方に資する適切な技術移転や資金協力を実施していく。また、貧困が環境破壊の要因となっている国においては、貧困からの脱却を図るための支援を行う。
京都イニシアティブの3つの柱
(1) 「人づくり」への協力
平成10年度から5年間で、3,000人の温暖化対策関連分野の途上国における人材育成に協力する。
大気汚染
廃棄物
省エネルギー
森林の保全・造成
(2) 最優遇条件(0.75%、40年)による円借款
温暖化対策関連分野への協力を積極的に進めていくため、主として以下のような分野に対して国際的に最も譲許的な条件(金利0.75%、償還期間40年)の円借款を行う。
省エネルギー
新・
再生可能エネルギー
森林の保全・造成
(3) 我が国の技術・経験(ノウハウ)の活用・移転
我が国の公害・省エネ対策の過程での技術・経験(ノウハウ)を活用し、温暖化対策に関する途上国の実状に適合した技術の開発・移転・調査団の派遣やワークショップの開催を行う。
工場診断調査団の派遣
技術情報ネットワークの整備
途上国の実状に適合した技術の開発・移転
ワークショップの開催
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