附属文書 重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ:進捗状況
-
昨年ケルンにおいて開始された拡充HIPCイニシアティブは、HIPC諸国のためにより早く、より広く、より深い債務救済を実施すること、及び、債務救済の恩恵が貧困削減のために使用されることを目的とする。HIPCプロセスにおける債務救済、経済及び社会政策の改革、貧困削減の連関は、包括的な貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の策定を通じてもたらされる。PRSPは、市民社会を含む参加手続きを通じ、また国際金融機関やドナーの協力を得て、HIPC国自身によって策定される。
-
9ヶ国(ベナン、ボリビア、ブルキナファソ、ホンジュラス、モーリタニア、モザンビーク、セネガル、タンザニア、ウガンダ)が本イニシアティブの下で決定時点に到達した。この9ヶ国につき、名目価値で150億米ドル以上(現在価値で86億米ドル)の債務救済が合意された。これは、従来の債務救済メカニズムによるものに加え、平均で、債務国の債務残高の概ね45%の削減となる。この数字は、我々がケルンで合意した政府開発援助(ODA)債権の削減や本イニシアティブの下で債務削減を受けるHIPC諸国に対する適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより、更に増加する。
-
IMFと世銀の最新の見通しによれば、今後、更に最大11ヶ国(カメルーン、チャド、象牙海岸、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、マラウィ、マリ、ニカラグア、ルワンダ、ザンビア)が本年末までに決定時点に到達し得る。これにより、本イニシアティブの下で合意されたものとして、名目価値で総額350億米ドル前後(現在価値で200億米ドル前後)の債務救済がなされる。この額もまた、ODA債権の削減や、適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより増加する。
-
これらの国の決定時点のタイミングは、彼らの貧困削減戦略の策定の進捗において示されるその国の貧困削減や経済成長へのコミットメントや、IMFプログラムの履行状況次第である。
-
20のHIPC諸国が残っている。これらのうち、
-
4ヶ国(アンゴラ、ケニア、ヴィエトナム、イエメン)は、より高い拡充HIPC債務削減のための債務状況の基準を満たすと見込まれていない。
-
2ヶ国(ガーナ、ラオス)は本イニシアティブの下での救済を求めないことを決定している。
-
IMFプログラムがある2ヶ国(マダガスカル、サントメプリンシペ)は、パリクラブ債権国からナポリターム(67%)の債務救済を受けているものの、十分な実績を達成していない。
-
12ヶ国(ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、エチオピア、リベリア、ミャンマー、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、トーゴ)は、現時点で、決定時点到達に必要なIMFの貧困削減成長ファシリティーのプログラムに合意していない。これらの国々が決定時点に向けて進むことのできる速度は大きく異なるだろう。これらのうち10ヶ国は紛争の影響を受けている。いくつかの国は政情不安やマクロ経済の不安定を経験している。このような状況の中で、多くの国が、経済成長に向けた政策の枠組みの中で債務救済により利用可能となる資金が貧困削減のために活用されることを確保するHIPCの枠組みにコミットできないでいる。

.紛争予防のための努力 ―基本的な概念枠組み―
G8首脳は昨年6月にケルンにおいて、武力紛争の予防を来るべき数年の優先事項とするとの決意を表明し、我々G8外相は昨年12月にベルリンにおいてその決意を再度表明した。我々は、国際機関、地域機関、各国、NGO及びその他の主体がそれぞれの活動や政策を紛争予防の観点から捉え、紛争予防の目標に向け努力することをコミットするよう慫慂することにより、地球社会に「予防の文化」を涵養せねばならない。
G8は、紛争予防のための努力は、国連憲章を含む国際法の遵守、民主主義、人権尊重、法の支配、グッド・ガヴァナンス(「良い統治」)、持続可能な開発、及び国際の平和と安全の基礎を構成するその他の基本的価値に基づく必要があることを確認する。
-
「包括的アプローチ」
G8は、紛争の要因が多様かつ複雑であるが故に、次のような「包括的アプローチ」が採用されるべきであると確信する。
紛争前から紛争後までの全ての段階で、紛争予防への一貫した努力がなされる必要がある(時系列的包括性)。
紛争の各段階において、国際社会は、政治的・経済的・社会的政策の選択肢の広範なメニューから選択すべきである。また、人権と文民保護の問題に対処することが極めて重要である(紛争予防の手段の包括性)。
個々の紛争について具体的手段をとるに際しては、紛争の要因・当事者・態様・地域情勢等の各紛争の特性と、国際貿易や国際金融といった他の分野における政策との一貫性とが十分に考慮される必要があることに留意すべきである。
-
国連、G8、その他の主体
我々G8外相は、紛争予防に関するベルリン外相特別会合において、国連憲章が安保理に国際の平和と安全の維持の主要な責任を与えていること、及び、国連事務総長もこの分野において重要な役割を有することを想起した。我々は、改革され効果的な国連が引き続き中心的役割を担うことを再確認した。この文脈で、G8はミレニアム総会に向けた事務総長報告の意義に留意する。
紛争を予防する主たる責任は紛争の直接の当事者にある一方、紛争予防は、国際機関、地域機関、各国、財界、NGO、個人を含む国際社会全体を巻き込む共同事業である。
G8は、予防外交のために国連憲章の関連規定をより広く活用することを歓迎し、予防行動をより効果的に支援するために国連システムの多様な要素の統合のために努力する。
G8は、国連の平和維持能力は紛争予防のための世界的努力に対する重要な貢献であると認識する。我々は、国連事務総長による専門家パネルの設置に留意し、この分野において包括的な再検討を行う努力を、平和維持に対する課題への国連の対応の質と速度とを高める努力に対する貢献として歓迎する。我々は、平和維持活動の効果的な計画・実施能力のために加盟国と取り決めを行うよう努力することの重要性を強調する。また我々は文民警察の分野における国連の能力が強化されることを期待する。
G8は、人権の国際的基準の遵守を維持するための国連の既存の機構と、人権に関する情報を定期的に関連国連機関に検討のために伝達することを支持する。我々は、特に国連事務総長特別代表の役割強化の促進等により、国連の紛争予防と早期警戒の能力の強化に貢献したいと考える。
G8は、特にG8が特別の貢献をしうる分野において、国際社会による紛争予防の努力を支援する用意がある。

.紛争予防のためのG8のイニシアティヴ
(a)紛争予防との直接的関連の有無、(b)他の主体に比較してG8が取組において比較優位を有する事項か否か、(c)G8が実効的な共同イニシアティヴをとりうるか、との3つの基準に基づき、本年G8は以下のイニシアティヴを採る。