2.「貧困削減と経済発展」に関する蔵相報告書の概要

A.発展への包括的アプローチ
  1. グローバリゼーションの急速な進展による国際経済の劇的な変化に伴い、開発途上国がグローバリゼーションによる恩恵を受ける機会や世界経済システムにおいて何らかの役割を果たす機会を持つように国際社会が行動をとることは、極めて重要である。戦略的かつ徹底的な方法で積極的なアプローチをとる主要な目的は、これらの国々による持続的な貧困削減や経済発展を達成するための努力を支援し、2015年までの貧困人口割合の半減という国際開発目標を達成することである。

  2. 持続可能な成長の重要性は、貧困削減に必要な条件として経験上示されている。全ての開発パートナーは、2015年の目標を達成するために必要な力強い成長をもたらす優先事項に、焦点を絞るべきである。これら優先事項は、マクロ経済の安定化、民間部門の発展の促進、良い統治の促進、社会開発への投資、貿易自由化の加速、金融部門の強化を含むべきである。

  3. 貧困との戦いにおいて成長は非常に重要であるが、成長の恩恵のより公平な分配にさらなる注意が払われなければならない。このためにも、制度の構築、教育と技術の発展、伝染病との戦いなどを通じた健康の改善といった、適切な社会政策が不可欠である。これらは、貧困緩和とより大きな社会的公平のための基盤である。社会的投資は、より長期的には高い見返りを確実にするものである。

  4. 世界的な貧困と戦うためには多面的なアプローチが必要である。これを達成するため、国際開発目標を中心に、貧困国が貧困国自ら包括的貧困削減戦略を策定する必要がある。これらの戦略においては、貧困削減と経済成長に必要な、社会政策と経済政策のリンクが非常に重要となろう。これらの戦略は、透明性、説明責任、無駄な支出の削減及び良い統治を強調するべきである。また、これらの戦略は、市民社会を含む参加型のプロセスを通じて発展するべきである。国際金融機関及び二国間ドナーは、技術的支援を通じたものも含め、貧困国がこれらの戦略を策定し実施するのを支援すべきである。

B.HIPCに対する債務救済
  1. 重債務貧困国(HIPCs)にとって、拡充HIPCイニシアティブを通じた債務救済は、貧困削減と経済発展との好循環を構築する上で極めて重要である。昨年ケルンにおいて、我々は、貧困削減に必要な資金を供給し、より早く、より広く、より深い債務救済を実施すべく、本イニシアティブの開始に合意した。我々は、昨年秋の国際社会による本イニシアティブの承認を歓迎する。

  2. それ以来、本イニシアティブの実施が進められている。9ヶ国が既に決定時点に到達し、新たな枠組みの下で名目価値で総額150億米ドル以上(現在価値(NPV)で総額86億米ドル)の債務救済が行われるところである。本年末までには、さらに最大11ヶ国が決定時点に到達できるであろう。本イニシアティブの進捗の詳細は、付属文書において述べられている。

  3. 我々は、世界銀行及びIMFと緊密に協力し、貧困削減戦略の策定を開始することにより、早急にこのプロセスに乗り出し、それにより債務削減の恩恵を受けることを、未だそうしたことを行っていないHIPCs諸国に対して促す。我々は、経済改革の進捗や債務救済を貧困削減に結びつける必要性に留意しつつ、ケルン・サミットで示された目標に沿って、出来る限り多くのHIPCs諸国が決定時点に到達できるよう、ともに行動していく。この点で、我々は、現在多くのHIPCs諸国が、貧困削減を妨げ債務救済を遅延させる軍事対立に巻き込まれていることを懸念する。我々は、これらの国が、対立への関与を終了させ、速やかにHIPCプロセスを開始することを求める。そのような場合には、我々は、これらの国が債務救済に備えそれを推進することを支援するための努力を強化する用意がある。

  4. 我々は、世界銀行及びIMFが、本イニシアティブの迅速かつ効果的な実施に向けた努力を継続するよう促す。この関連で、我々は、本年4月の世界銀行とIMFによる共同実施委員会の設立を歓迎するとともに、同委員会が本イニシアティブの実施を効果的に進め、個別国の状況につき定期的に情報を提供するよう強く要請する。

  5. 我々は、本イニシアティブの効果的実施のために必要とされる国際金融機関の財源の確保における進捗に留意する。我々は、パリクラブ不参加国を含むすべての多国間及び二国間債権者の、効果的かつ早期の参加を促す。IMF及び世界銀行の債務救済の費用の負担のための財源は特定され、他の国際金融機関の資金需要への大きな貢献も約束されている。我々は、国際開発金融 機関の、内部資金の最大限の活用を通じた、本イニシアティブへの積極的な参加を強く要請する。我々は、ラテンアメリカ及びアフリカのHIPC諸国の債務救済を促進するための資金の確保についての最近の進展を歓迎する。

  6. 我々は、既に約束した財源をできる限り早急に利用可能とするとの我々のコミットメントを再確認する。この関連で、我々は、債権者間の公正な負担の分担の重要性を認める。我々は、二国間ドナーによるHIPC信託基金への新たな貢献を促す。

  7. 我々は、本イニシアティブの枠組みの中での二国間債務の削減についての我々のコミットメントを再確認する。この関連で、我々は、パリクラブの枠組みにおける措置に適格な商業債権を100%免除することを約束した。我々は、G7以外のいくつかの国も100%の債務免除を実施する旨表明したことを歓迎するとともに、その他の債権国がこれに続くことを強く求める。

C.債務救済を越えて
  1. 政府開発援助は、貧困国による貧困削減と経済発展の努力を支援し促進する上で重要であり続けるであろう。このような関係において、我々は、最近の援助水準の減少傾向の反転を歓迎する。拡充HIPCイニシアティブの適用国が再び過度の債務負担に直面しないようにするために、我々は、これらの国々に対して、政府開発援助の大半を無償の形で提供することを約束した。

  2. 適切な政策運営を行う国への経済援助が成長を高め社会状況を改善させることは、経験上示されている。援助国は、経済改革や貧困削減に本格的に取り組んでいる貧困国に、より効果的に援助を向けることにより、その役割を果たすことができる。援助国はまた、十分に検討された受入国主導のプログラムを支援する場合に、援助をより良く調整することにより、また、支援手続きを簡素化し実行可能な場合には支援手続きを調和させることにより、援助の効果を向上させるべきである。

  3. 責任ある融資の実施を確実にするために、援助国が非生産的な支出を抑制するとのコミットメントを再確認することは極めて重要である。このような関係において、我々は、OECDに対し、輸出信用部会を通じて、HIPCsや他の低所得開発途上国への輸出信用が非生産的な目的で用いられることがないようにするための強化措置をレビューするよう求める。このレビューの結果は、公表されるべきであり、関連する既存の各国の規則や規制のレビューを含み得る。我々は、OECDがこの作業を出来るだけ早期に完了することを促す。さらに、我々は、国際金融機関や他の二国間ドナーによる、貧困国が資源の生産的な使用を確実にするための健全な債務管理政策を遂行するように促すための努力を歓迎する。

  4. 環境や健康のような国際公共財は、優先的な配慮に値するものであり、国際金融機関、特に世界銀行及び地域開発銀行、さらに二国間ドナーの強い関与を必要とする。国際公共財への国際社会の関与は、効果的であるためには、比較優位や優先順位の設定の原則に基づいてなされるべきである。

D.貿易・投資環境の改善
  1. 貿易・投資の成長と経済成長との間の密接な関係に鑑みると、貿易・投資は、効果的な貧困削減と持続可能な経済成長の促進に決定的な役割を果たすであろう。我々は、HIPCsとその他の低所得開発途上国に世界貿易に参加させ、これらの国々の国際市場へのアクセスを向上させる方法を見つけなければならない。我々は、これらの国々も貿易自由化の恩恵を受けることが出来るよう、次期WTOラウンドがこれらの国々の関心事項を積極的に取り上げていくようにすべきである。我々はまた、グローバルな経済への更なる統合に向けた歓迎すべき第一歩をしばしば意味する、WTOのルールに沿った形でのこれらの国々の間の地域協力を促進すべきである。我々は、関連する国際機関、特にWTOと世界銀行に対し、最貧国における貿易関連の能力の構築を支援する努力を強化するよう求める。我々はまた、生産的な投資を促進するような環境を創出するための貧困国の努力を支援するべきである。

E.グローバル経済への速やかな統合
  1. グローバリゼーションとIT革命の急速な進展に鑑みれば、最貧国を含む開発途上国にとって、ITの新たな進歩の恩恵を利用し、デジタル・ディバイドを防ぐことは、重要である。国際社会が、人的資本への投資などITに関連するものも含めた能力や制度の構築を強調することが重要である。

  2. より長期的には、すべての開発途上国が発展のはしごを上がっていく能力を持つようにする必要があろう。多くの国々において、国内貯蓄と民間資本フローは、既に開発の資金手当ての面で重要な役割を果たしている。上昇した水準での安定的な民間の投融資にとって適切な環境を整えることは、持続可能な発展を達成するための鍵である。

  3. 予見可能な将来においては、多くの開発途上国は譲許的な援助に依存し続けるであろうが、国際金融機関は、これらの国々が将来的にグローバルな金融市場に参加していく道を検討するべきである。その目的は、開発途上国の孤立から統合、成長そして発展への歩みを支援する道標を提供するものでなければならない。

附属文書 重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ:進捗状況
  1. 昨年ケルンにおいて開始された拡充HIPCイニシアティブは、HIPC諸国のためにより早く、より広く、より深い債務救済を実施すること、及び、債務救済の恩恵が貧困削減のために使用されることを目的とする。HIPCプロセスにおける債務救済、経済及び社会政策の改革、貧困削減の連関は、包括的な貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の策定を通じてもたらされる。PRSPは、市民社会を含む参加手続きを通じ、また国際金融機関やドナーの協力を得て、HIPC国自身によって策定される。

  2. 9ヶ国(ベナン、ボリビア、ブルキナファソ、ホンジュラス、モーリタニア、モザンビーク、セネガル、タンザニア、ウガンダ)が本イニシアティブの下で決定時点に到達した。この9ヶ国につき、名目価値で150億米ドル以上(現在価値で86億米ドル)の債務救済が合意された。これは、従来の債務救済メカニズムによるものに加え、平均で、債務国の債務残高の概ね45%の削減となる。この数字は、我々がケルンで合意した政府開発援助(ODA)債権の削減や本イニシアティブの下で債務削減を受けるHIPC諸国に対する適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより、更に増加する。

  3. IMFと世銀の最新の見通しによれば、今後、更に最大11ヶ国(カメルーン、チャド、象牙海岸、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、マラウィ、マリ、ニカラグア、ルワンダ、ザンビア)が本年末までに決定時点に到達し得る。これにより、本イニシアティブの下で合意されたものとして、名目価値で総額350億米ドル前後(現在価値で200億米ドル前後)の債務救済がなされる。この額もまた、ODA債権の削減や、適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより増加する。

  4. これらの国の決定時点のタイミングは、彼らの貧困削減戦略の策定の進捗において示されるその国の貧困削減や経済成長へのコミットメントや、IMFプログラムの履行状況次第である。

  5. 20のHIPC諸国が残っている。これらのうち、
    • 4ヶ国(アンゴラ、ケニア、ヴィエトナム、イエメン)は、より高い拡充HIPC債務削減のための債務状況の基準を満たすと見込まれていない。
    • 2ヶ国(ガーナ、ラオス)は本イニシアティブの下での救済を求めないことを決定している。
    • IMFプログラムがある2ヶ国(マダガスカル、サントメプリンシペ)は、パリクラブ債権国からナポリターム(67%)の債務救済を受けているものの、十分な実績を達成していない。
    • 12ヶ国(ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、エチオピア、リベリア、ミャンマー、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、トーゴ)は、現時点で、決定時点到達に必要なIMFの貧困削減成長ファシリティーのプログラムに合意していない。これらの国々が決定時点に向けて進むことのできる速度は大きく異なるだろう。これらのうち10ヶ国は紛争の影響を受けている。いくつかの国は政情不安やマクロ経済の不安定を経験している。このような状況の中で、多くの国が、経済成長に向けた政策の枠組みの中で債務救済により利用可能となる資金が貧困削減のために活用されることを確保するHIPCの枠組みにコミットできないでいる。


3.紛争予防のためのG8宮崎イニシアティブ(仮訳)

01.紛争予防のための努力 ―基本的な概念枠組み―
 G8首脳は昨年6月にケルンにおいて、武力紛争の予防を来るべき数年の優先事項とするとの決意を表明し、我々G8外相は昨年12月にベルリンにおいてその決意を再度表明した。我々は、国際機関、地域機関、各国、NGO及びその他の主体がそれぞれの活動や政策を紛争予防の観点から捉え、紛争予防の目標に向け努力することをコミットするよう慫慂することにより、地球社会に「予防の文化」を涵養せねばならない。
 G8は、紛争予防のための努力は、国連憲章を含む国際法の遵守、民主主義、人権尊重、法の支配、グッド・ガヴァナンス(「良い統治」)、持続可能な開発、及び国際の平和と安全の基礎を構成するその他の基本的価値に基づく必要があることを確認する。
  1. 「包括的アプローチ」
     G8は、紛争の要因が多様かつ複雑であるが故に、次のような「包括的アプローチ」が採用されるべきであると確信する。
     紛争前から紛争後までの全ての段階で、紛争予防への一貫した努力がなされる必要がある(時系列的包括性)。
     紛争の各段階において、国際社会は、政治的・経済的・社会的政策の選択肢の広範なメニューから選択すべきである。また、人権と文民保護の問題に対処することが極めて重要である(紛争予防の手段の包括性)。
     個々の紛争について具体的手段をとるに際しては、紛争の要因・当事者・態様・地域情勢等の各紛争の特性と、国際貿易や国際金融といった他の分野における政策との一貫性とが十分に考慮される必要があることに留意すべきである。

  2. 国連、G8、その他の主体
     我々G8外相は、紛争予防に関するベルリン外相特別会合において、国連憲章が安保理に国際の平和と安全の維持の主要な責任を与えていること、及び、国連事務総長もこの分野において重要な役割を有することを想起した。我々は、改革され効果的な国連が引き続き中心的役割を担うことを再確認した。この文脈で、G8はミレニアム総会に向けた事務総長報告の意義に留意する。
     紛争を予防する主たる責任は紛争の直接の当事者にある一方、紛争予防は、国際機関、地域機関、各国、財界、NGO、個人を含む国際社会全体を巻き込む共同事業である。
     G8は、予防外交のために国連憲章の関連規定をより広く活用することを歓迎し、予防行動をより効果的に支援するために国連システムの多様な要素の統合のために努力する。
     G8は、国連の平和維持能力は紛争予防のための世界的努力に対する重要な貢献であると認識する。我々は、国連事務総長による専門家パネルの設置に留意し、この分野において包括的な再検討を行う努力を、平和維持に対する課題への国連の対応の質と速度とを高める努力に対する貢献として歓迎する。我々は、平和維持活動の効果的な計画・実施能力のために加盟国と取り決めを行うよう努力することの重要性を強調する。また我々は文民警察の分野における国連の能力が強化されることを期待する。
     G8は、人権の国際的基準の遵守を維持するための国連の既存の機構と、人権に関する情報を定期的に関連国連機関に検討のために伝達することを支持する。我々は、特に国連事務総長特別代表の役割強化の促進等により、国連の紛争予防と早期警戒の能力の強化に貢献したいと考える。
     G8は、特にG8が特別の貢献をしうる分野において、国際社会による紛争予防の努力を支援する用意がある。

02.紛争予防のためのG8のイニシアティヴ
(a)紛争予防との直接的関連の有無、(b)他の主体に比較してG8が取組において比較優位を有する事項か否か、(c)G8が実効的な共同イニシアティヴをとりうるか、との3つの基準に基づき、本年G8は以下のイニシアティヴを採る。
●小型武器
紛争と開発
●ダイヤモンドの不正取引
●武力紛争下の児童
●国際文民警察
  1. 小型武器
     G8は、世界の多くの地域における、小型武器と軽兵器(以下「小型武器」とする)の野放しかつ非合法な移転と、情勢の不安定化を招く蓄積が、平和、安全、繁栄に対する重大な脅威となっていることを確信する。それ故、G8は、小型武器が責任ある合法的な方法で移転されることを確保し、情勢の不安定化を招く現存の蓄積を正当な防衛・安全保障上の必要に見合う水準まで削減するための、各国、地域的、及び国際的努力を強く支持する。
     情勢の不安定化を招く小型武器の拡散は、国際社会に対し、輸出管理政策、不正取引の予防、法執行と犯罪防止、武装解除と元兵士の動員解除・社会復帰、紛争後の復興、治安部門の改革等の多くの分野の課題を提起している。G8は、これら全ての分野において、国際機構と各国が、重複を避けつつ協調的で一貫した政策を策定することによりそれぞれの取組をより効果的なものとする必要があることを強調する。
     G8は、
    (イ) 2001年の小型武器の不正取引のあらゆる面に関する国連会議の開催とその成功を期待する。我々は、特に小型武器の不正取引撲滅のための国際的努力を実質的に強化する成果を生み出すであろう広範な議題をもって右会議に臨む。
    (ロ) 小型武器の移転が国連憲章に謳われている自衛の権利と合致することを認識しつつ、かかる輸出の管理と許可を高度の責任をもって行うことを確認する。より厳格な規制を有しない 限り、G8は、輸出許可に際して、受取側の正当な防衛・安全保障上の必要を最小限の基準とする。G8は、他国に対する侵略や抑圧に使用される明確な虞のある場合には、小型武器の輸出を許可しない。最後に、G8は、各国毎に、またワッセナー・アレンジメント等の国際場裡において、小型武器の非合法な転売・再輸出の危険を最小化するため、さらなる行動を検討する。この目的のために、G8は、武器仲介業の効果的な国内の取締りの重要性について合意する。G8は、他の小型武器輸出国にそれぞれの政策の中で以上のような原則を採用するよう強く慫慂する。
    (ハ) 需要側に対する補完的な措置の重要性も強調する。この関連で、G8は98年10月のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)による小型武器の輸出入・製造モラトリアム(一時停止)の採択を歓迎し、小型武器拡散の問題を抱える他の地域が同様の措置を検討するよう慫慂する。G8は、我々の輸出許可の決定においてECOWASのモラトリアムを尊重することを確保するための措置をとると共に、他の輸出国に対しても同様のことを求める。また、G8は、最近採択された、大湖地域及びアフリカの角地域における不正小型武器の拡散問題に関するナイロビ宣言を歓迎する。G8は、可能な諸国が、ECOWASモラトリアム及びナイロビ宣言の実施への資金・技術協力を行うよう慫慂する。
    (ニ) 不正な武器取引の被害国・地域に対し、(不正取引の)発覚した例や不正な小型武器の供給経路に関する情報の交換を含め、この点に関する透明性を向上するよう慫慂する。G8は小型武器の刻印(マーキング)はその追跡可能性を向上させうると考える。G8はかかる小型武器の移転の透明性向上に関する国際的合意の形成に努める。小型武器の不正取引との闘いと信頼醸成のため、G8は、適当な場で、国内法制、実行、経験に関して情報交換する用意があり、他の諸国に対しても同様のことを求める。
    (ホ) 小型武器の不正取引への対抗措置が根本的に重要であることを協調する。G8は、自国領内からの、自国領経由の、或いは領内への、小型武器の不正移転を防止するため、効果的な国内の輸出管理・執行体制を維持する。我々は、国連安保理が課する全ての武器禁輸を厳格に実施することを確認する。この目的のために、G8はこれら禁輸の法的執行を可能にする適切な国内法制を強く支持する。我々は、対UNITA(アンゴラ全面独立民族同盟)措置違反に関する報告を調査するとの安保理の決定等の、国連の制裁をより効果的にするための努力を強く支持する。
    (ヘ) 小型武器の不正取引から直接被害を受ける国が効果的な管理を実施するための能力向上計画を支援する用意がある。G8は、この分野での協調された地域的・国際的行動の重要性を強調し、銃器・弾薬・爆発物・その他の関連部品の密造・不正取引防止のためのOAS(米州機構)全米条約や、南部アフリカにおける不正な武器取引対策のためのEU(欧州連合)/SADC(南部アフリカ開発共同体)行動計画等のイニシアティヴを歓迎する。G8はまた、ワッセナー・アレンジメントその他の国際的、地域的な場における、不正取引経路や転売先等についての適切な情報交換の拡大を重視する。
    (ト) 効果的な法執行及び犯罪防止の措置を講じ、小型武器の不正保有及び悪用の問題に取り組む必要があることを認識する。銃器に関しては、G8リヨン・グループは、その所掌範囲内において、銃器の密造及び不正取引に対するG8各国の政策及び対策の有効性を改善する方法についての検討を継続する。G8は、2000年末までに国連国際組織犯罪条約銃器議定書の交渉の完了を確保するため、銃器の不正取引と闘うための国際的な努力の重要な要素となるであろう同議定書の審議において積極的かつ建設的な役割を果たす。
    (チ) 情勢の不安定化を招く小型武器の現存の蓄積を削減する努力に対し、完全なる支援を約束する。G8は、被害国・地域が、信頼醸成措置と余剰若しくは不法所有されている小型武器の回収・廃棄を促すインセンティヴを採用するよう慫慂する。G8は、小型武器問題への対処を意図する特定目的の基金(国連、地域、特定域内に既設、若しくは新設されるもの)を含む、自発的な資金・技術協力を通じ、かかる取組を支援する用意があることを確認するとともに、国際社会に対して同様のことを求める。この関連でG8は、紛争終結後の状況において、武装解除と元兵士の動員解除・社会復帰の包括的事業が極めて重要であることを強調する。G8は、かかる 事業を、適切な場合に紛争当事者間の和平合意や平和維持軍その他の関連ミッションのマンデート中に含めることを支持する。
    (リ) 情勢の不安定化を招く小型武器の蓄積への取組において、例えば、地域レベルでの意識向上等を通じ、市民社会が果たす役割の重要性を強調する。G8は、国際社会及び被害国政府が、小型武器の野放しの拡散と情勢の不安定化を招く蓄積の防止のための取組に市民社会を積極的に参画させるよう慫慂する。
    (ヌ) 情勢の不安定化を招く小型武器の蓄積の被害国・地域において回収されたあらゆる余剰・不法所有の小型武器が、直ちに廃棄されない場合は、望むらくは国際的或いは第三者の監視の下に、早期かつ効果的な廃棄まで適切に保管・管理されるべきであるとの原則を支持することを再確認する。

  2. 紛争と開発
     平和と民主的な安定は、経済成長と持続可能な開発のために不可欠の前提条件である。また、経済・開発協力は、平和と安定の促進において重要な役割を担っている。G8は開発援助の主要な供給者としての立場を活用して、この分野において積極的にイニシアティヴをとることができる。二国間・多国間支援政策の核には、基本的な開発目標が依然として存在することを確認する一方、G8は、特に、(a)開発援助戦略における紛争予防に関する考慮の促進、(b)紛争を予防するための迅速な行動の確保のための支援の重視、(c)紛争後の段階における緊急人道支援から開発援助への円滑な移行の確保、の3分野でイニシアティヴをとるべきである。G8は、また、開発政策に関する被援助国政府のオーナーシップと市民社会の参加が緊張の緩和に貢献しうることを認識する。
    (1) 開発援助戦略における紛争予防に関する考慮の促進
    G8は、
    (イ) 繁栄を促進し、貧困を削減し、全ての市民の参加と機会を促進する活力ある社会の創出を支援するため、経済・開発協力を引き続き供与する。
    (ロ) 地域機関・準地域機関への支援を通ずるものを含め、紛争の潜在的要因に対処することの重要性を認識する。
    (ハ) 開発援助の紛争に関する意味合いについて、関連する国際金融機関と協議する。
    (ニ) 他の二国間及び多国間の主体と共に、民主的機関、立法機関、グッド・ガヴァナンス(「良い統治」)、法の支配、紛争の平和的解決、市民教育及びその他の構造的要素の促進のために、開発援助を活用することを目指す。
    (ホ) 警察、刑罰機関、司法機関を含む行政・治安機構のキャパシティー・ビルディングを目指す。
    (ヘ) 経済の下降期や危機の発生時に、社会的弱者層を対象とする教育、保健・栄養、その他の事業に対する支出を確保するため、これらの分野において、キャパシティー・ビルディングと適切な社会投資の確保のための技術協力を強化する。
    (ト) 水等の天然資源をめぐる争いから生ずる紛争の要因に対処するため、経済・開発援助を活用し、かかる紛争の要因を管理するための地域的取組を奨励する方途について検討する。
    (チ) 経済・開発協力を供与する際に、被援助国において生ずる過剰な軍事支出に注意を払い、途上国に対し、軍事予算及び開発援助の使途を含む国家支出に対する、効果的で、透明で、信頼性のある公的部門の管理を確保するよう求める。
    (リ) 紛争予防の分野におけるドナー間の調整が、経済・開発援助の効率性の強化に果たす重要な役割を認識する。
    (ヌ) 紛争予防の分野における二国間のドナーの実践に関する、OECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会(DAC)の検討作業を歓迎する。

    (2) 紛争を予防するための迅速な行動の確保のための支援の重視
    G8は、
    (イ) 紛争地域に隣接する国や地域への、避難民や難民を含む人々の苦難を緩和し拡大をくい止めることを支援するために、柔軟で迅速な援助を供与することの重要性を認識し、地域機関や国際機関、特に国連を通じて、緊急支援やその他の関連する援助を、より効果的且つよりよく協調されたやり方で供与するよう努める。
    (ロ) 国際社会がアフリカにおける紛争と開発に関心を集中し、現地レベルや国連システム内を含め、展望や情報の交換をより緊密に行うよう奨励する。

    (3) 紛争後の段階における緊急人道支援から開発への円滑な移行の確保
    G8は、
    (イ) 円滑な移行を達成するために、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、UNDP(国連開発計画)、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、その他の国際機関、地域機関、及びNGOを含む多様な主体による、継続的かつ協調された努力の重要性を認識し、この目的に向けて国際社会がさらなる検討と支援を行うよう慫慂する。
    (ロ) 地域の治安、経済的・政治的安定、キャパシティ・ビルディング及び和解の支援に、緊急・移行支援の焦点を当てるよう努力する。

  3. ダイヤモンドの不正取引
     G8は、いくつかの高価値産品、特にダイヤモンドの不正取引の収益が、武器購入の資金源となり、それによってアフリカ(特にアンゴラ、コンゴー民主共和国、シエラ・レオーネ)における紛争と人道的危機を悪化させていることを懸念する。
     合法的なダイヤモンド生産者と取引者の利益がおびやかされるものでないことを強調しつつ、G8は、特にアフリカの紛争地帯原産のダイヤモンドの不正取引に対処すべく以下の措置をとる。
     世界のダイヤモンド市場の大部分を有するG8は、
    (イ) 不正なダイヤモンドの流通を抑制するために、ダイヤモンド生産国政府、周辺国政府、主たる取引市場、地域機関及び業界と緊密に協力する。
    (ロ) 生産者と購入者に対し、まずは、緊急に、アフリカにおけるダイヤモンドの不正取引を追跡し阻止するための具体的措置を案出するために、緊密に協力して取り組むよう要請する。
    (ハ) ダイヤモンドの不正取引を抑制するための地域的法執行強化と国内のキャパシティ・ビルディングのためのアフリカ諸国の努力を支持するとともに、これら諸国のそれぞれのイニシアティヴを歓迎する。
    (ニ) 国連アンゴラ制裁委員会がUNITA(アンゴラ全面独立民族同盟)に対する制裁実施強化のための努力の中心的役割を担うこと、及び、国連安保理決議第1173号及び第1295号の完全な履行が必要であることを強調する。
    (ホ) ダイヤモンドを含む天然資源の非合法の採掘がコンゴー民主共和国内の紛争に与える影響を評価するための、国連の枠組み内でのイニシアティヴを歓迎する。
    (ヘ) シエラ・レオーネ産のダイヤモンドの取引の適正な管理について、ダイヤモンド業 界を含む関係者が早急にシエラ・レオーネ政府と協力するよう要請する。
    (ト) 南アフリカ共和国のキンバリーで開催された「ダイヤモンドに関する技術フォーラム」を、現実的な解決を見い出すことへの重要な貢献として歓迎する。G8は、紛争地域産のダイヤモンド原石のための可能な証明計画、業界の行動規範、透明性と信頼性の促進のための国際的組織の検討を含むフォローアップが、全ての重要な主体の参加を得て速やかに行われることを支持する。
    (チ) 不正取引ダイヤモンドをG8の市場から排除するための適切な措置を検討する。

  4. 武力紛争下の児童
     特に、児童兵、孤児、性的搾取を受けた児童、武力紛争によって傷を負った児童を含み、さらに、より広い意味で戦争による影響を受けた全ての児童を含む、戦争被災児童の窮状は、今日の世界が直面する最も憂慮すべき人間の安全保障上の問題の一つである。G8は、紛争の参加者でありかつ被害者である児童によって惹起された問題について特に懸念を有する。この関連で、G8は以下の取組に合意した。
    (1) 国際的な基準に違反して、武力紛争において児童を巻き込み、若しくは標的とする者に対する圧力
    G8は、
    (イ) 児童が支援を受けることが拒絶される場合、若しくは児童が紛争の犠牲者及び/或いは参加者として特に標的となる場合には、個々の政府や武装集団に対し、国連その他の場において協調して圧力を加える。
    (ロ) 第三国の軍隊に対する軍事支援を検討する際には、児童兵の不使用に関する国際的な基準を考慮し、その推進に努める。

    (2) 国際的な基準及びメカニズムへの支持
    G8は、
    (イ) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関するILO(国際労働機関)第182号条約が世界的に遵守されることを求める。
    (ロ) 「児童の武力紛争への参加に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」の採択を歓迎し、同選択議定書が世界的に遵守されることを支持する。
    (ハ) 紛争被災児童の擁護者としての役割を果たす、武力紛争と児童に関する国連事務総長特別代表事務所、及びUNICEF(国連児童基金)を含む国連諸機関を支持する。
    (ニ) 武力紛争下の児童への支援を確保する必要がある場合、若しくは、児童が紛争の犠牲者及び/或いは参加者として特に標的となる場合に、国連及び他の国際場裡において協力する。

    (3) アウトリーチ
    G8は、
    (イ) 武力紛争下の児童の問題への認識を喚起する、国連、地域機関、NGO及びメディアの活動を支持する。
    (ロ) 軍事支援訓練計画に、児童の権利に関する訓練を含める。
    (ハ) 世界子供サミットの目標の達成度を検討するための2001年の国連特別会期を支持し、同会期で採択されるいかなる文書も紛争被災児童の問題に関し強く言及することを確保するよう努力する。
    (ニ) 西アフリカの紛争被災児童に関する会議(2000年4月)、及びカナダが200 0年9月に主催する国際会議を含む、武力紛争下の児童の問題を主題とするその他の各国・地域の努力を慫慂し支持する。

    (4) 再統合と社会復帰
    G8は、
    (イ) 和平交渉の間及び紛争後の平和を強化する段階を通じ、平和支持活動における旧児童兵の再統合等によって、児童の保護、福祉、権利を促進する。
    (ロ) 紛争後の復興のための支出において、旧児童兵を含む紛争被災児童への支援に優先順位を与える。
    (ハ) 社会復帰及び再統合事業において、避難民となり脆弱な児童の固有のニーズに留意しつつ、またジェンダーにより異なる経験に敏感でありつつ、UNICEFやその他の場を通じ、例えば最良の実践を見い出し共有するために、個々の再統合事業に関して緊密な連携を取る。

  5. 国際文民警察
     通常、平和維持活動の一部を構成する、国連派遣の文民警察は、現地の文民警察の法秩序維持能力の発展を助け、また要すれば、暫定的にその機能を代行しうるため、紛争予防の重要な要素である。
    G8は、
    (イ) 文民警察活動の近年の劇的な増加とその結果としての国際文民警察官の需要の増大に留意する。G8は、国連及び地域機関に対し、加盟国と協力して、遅滞なく効果的にこの需要に応える方法を模索するよう求める。G8は、それが可能な諸国は、適性ある文民警察官を遅滞なく提供する能力を向上させるよう努力を求め、また、現に国際文民警察官の訓練事業を有する諸国には、他の文民警察官提供諸国の警察に当該事業を利用させるよう求める。
    (ロ) 平和維持活動の枠内で、現地の文民警察活動と刑事司法及び現地の刑事司法制度の発展をより包括的に計画し、よりよく協調させることを支援する国連の能力を向上させることの必要性を強調する。G8は、国連に、加盟国と緊密に協議しつつ、国際文民警察の能力を強化するさらなる措置をとるよう求める。かかる措置には、事前に訓練を受け国連が認定した国際文民警察官の登録リストを、ありうる任務のために各国の貢献に基づき作成すること、かかる文民警察官の選抜・評価・訓練基準の適切な見直し・再検討を完了すること、及び、近年の国連平和維持活動におけるような新たな任務を反映した、国際文民警察活動に関する包括的政策を策定することが含まれるべきである。
    (ハ) 国連が、特に訓練が紛争予防に資する場合に、紛争終結後の活動や通常の開発活動としても、地元警察の訓練に対する支援を増大するよう求める。この点に関し、G8は、加盟国、UNDPを含む全ての関連国連機関、その他の開発機関を含む対話に基づき、新たな取組を慫慂する。この活動は、民主主義、グッド・ガヴァナンス(「良い統治」)、人権、法の下の平等の原則を助長すべきである。

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