第4節 九州・沖縄サミット関連資料

1.九州・沖縄サミット・コミュニケ(途上国の開発に関わる部分の仮訳抜粋)

(開発)
  1. 21世紀は万人にとっての繁栄の世紀でなければならず、我々は、極度の貧困状況にあ る世界人口のシェアを1990年レベルから2015年までに半減するという包括的な目標を含めて、合意された国際開発目標にコミットする。我々は、ケルンで我々が要請した国際開発金融機関(MDB)及び国際通貨基金(IMF)による貧困削減に関する報告書を歓迎し、我々が、世界中の貧困削減の進展を毎年再検討するに際して、年次貧困報告を受けとることを期待している。この報告書は、成長及び社会開発のための適切な条件が整えられれば、進展が可能であることを示している。しかし、報告書は多くの課題が未解決であることを想い起こさせる。開発途上国における貧困率が1990年の29%から1998年の24%にまで減少している一方で、1日に1ドル以下で生活している人々が未だに12億人もおり、地域内及び地域間ごとに顕著な相違が見られる。特に、多くの開発途上国とりわけアフリカにおいては、成長の速度が非常に遅い。HIV/エイズの蔓延が状況を悪化させている。

  2. 報告書が指摘しているように、多くの国は、過去四半世紀において貧困の克服について著しい進展を遂げており、これらの国の例は他の国にとって、希望の指針である。これらの国の成功例から、我々は、貧困を克服する可能性が最も高いのは、すべての人に自由と機会が与えられており、成長している開放的な経済及び活力のある民間部門を備え、そして強力で説明責任を果たし得る指導者と制度を有する、強靱性がある平和な民主的な社会であるということを学んだ。

  3. 貧困と闘うためには、勢いがあり、広範で、衡平な経済成長が必要であり、そして、そのような経済成長のためには、人々の能力と選択を拡充することが必要である。政府は、民間部門及びより幅広い市民社会と協力しつつ、広範な民間部門の成長のための経済的及び社会的な基盤を築かなければならない。中小企業は、ITによってもたらされた機会とともに、開発のための強力な手段となりうる。我々は、人々の生活が向上するような公平な機会を提示する政策、計画及び制度を設置するために開発途上国と協力する。したがって我々は、バンコックで開催された国連貿易開発会議第10回総会(UNCTAD X)での建設的な議論を歓迎するとともに、国連その他の場において、特に後発開発途上国における更なる貧困削減のために努力する。

  4. 我々は、また、適切な社会的保護及び中核的労働基準の推進にあたっての国際労働機関(ILO)と国際金融機関の間の協力の増大を歓迎する。我々は、国際金融機関に対し、これらの基準を加盟国との政策対話に組み入れるよう強く促す。更に、我々は、グローバリゼーション及び貿易自由化の社会的側面に関する世界貿易機関(WTO)とILOの間の効果的な協力の重要性を強調する。

  5. 貿易と投資は、持続可能な経済成長を促進し貧困を削減する上で非常に重要である。我々は貿易関連のキャパシティ・ビルディング活動により高い優先度を置くことにコミットする。我々は同時に、一定の地域が海外直接投資に関しては置き去りにされたままであること、そして後発開発途上国48か国向け海外直接投資が、開発途上国向け海外直接投資全体の1%にも満たないことを憂慮している。我々は、国際開発機関及び金融機関に対して、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)及び統合フレームワーク(IF)を通じるものを含めて、良好な貿易・投資環境を創り出そうとする開発途上国の努力を支援するよう強く求める。

  6. 我々は、紛争、貧困及び弱い統治の組合せが悪循環となってグローバリゼーションの成果を享受できないでいる後発開発途上国、特にこれらのうちアフリカ諸国が直面している課題の厳しさを特に憂慮する。

  7. 我々は、保健及び教育を含む健全な社会政策を通じ、成長のもたらす利益の衡平な分配を促進することに特段の優先度を置きつつ、これらの課題と闘い克服するためにこれらの国が行っている努力を支援し強化するため、国際社会の手段と資源を動員することにコミットする。この目的のために、我々は、以下に詳細を示す下記の事項について合意した。
    ―重債務貧困国(HIPC)債務イニシアティブを推進する。
    ―我々の市場への著しく改善されたアクセスを提供する。
    ―政府開発援助(ODA)の効果を強化する。
    ―感染症、とりわけHIV/エイズ、マラリア及び結核に関する意欲的な計画を実施する。
    ―基礎教育のための追加的資源が利用可能となることを確保することによって、最近の教育に関するダカール会議の結論を精力的にフォローアップする。
    ―情報格差の拡大の問題に取り組む。
    ―ダイヤモンドの不正取引に関する問題に取り組むことを含め、紛争を予防するための措置を実施する。
  8. ODAは貧困との闘いのためには不可欠である。また、我々は、貧困削減のための国家戦略による努力を含む、各国自身の貧困対策努力を支援するとの観点から、ODAの効果を高めることにコミットする。我々は、政府が、開発に向けられた資源の説明責任を果たし得てかつ透明な管理を通して、国民の福利を向上させるためにコミットしていることを示している国を優先にするという長期的アプローチを採用する。ODAの効果を高めるために、我々は、現在までに経済協力開発機構(OECD)において実現した進展及び我々がOECDにおけるパートナーと合意する公正な負担分担メカニズムに基づいて、後発開発途上国への援助をアンタイド化することを決意する。我々は、この合意が2002年1月1日に発効するべきであると考える。一方で、我々は、ODAのアンタイド化が低水準にとどまっている国に対して対応を改善するように強く求める。また、我々は、よく的が絞られたODAが成果を挙げることを社会一般に対して示すことを心がけるとともに、そのような援助の優先度を上げるように努力する。よく調整された援助は、開発途上国にとって有益であり、我々は、そのような調整を向上をするための最善の方策を検討する。

  9. 我々はまた、成長に刺激を与えるものとして、債務、保健、教育の3つの問題に特別の注意を払うことに合意する。

(債務)
  1. 昨年、我々はケルンにおいて、より早く、より広範で、より深い債務救済のための拡大HIPCイニシアティブを実施することに合意し、債務国の貧困削減戦略に投資する基金を設立した。我々は、このイニシアティブが昨年秋に国際社会によって支持されたことを歓迎する。

  2. それ以来、一層の努力が必要とされる一方で、拡大HIPCイニシアティブの実施に向けた進展が見られている。ベナン、ボリビア、ブルキナ・ファソ、ホンジュラス、モーリタニア、モザンビーク、セネガル、タンザニア及びウガンダの9か国は既に決定時点に到達し、このイニシアティブの利益を享受している。これらの国を対象としたHIPCイニシアティブの下での債務救済総額は、名目価値で150億米ドル(現在価値相当で86億米ドル)以上に及ぶはずである。

  3. 我々は、重債務貧困国が市民社会を含む参加プロセスを通して、包括的で主体性に基づいた貧困削減戦略を策定するための努力を払ってきていることを歓迎する。国際金融機関は、他の援助供与国と共に、重債務貧困国が貧困削減戦略ペーパーを用意することを助けるべきであるし、技術支援を通じて財源管理を支援するべきである。我々は、現在多くの重債務貧困国が貧困削減を妨げ債務救済を遅らせている軍事的衝突により影響を受けているという事実を憂慮する。我々は、これらの国に対して、衝突への関与を終了し、早急にHIPCプロセスに取り組むことを要請する。我々は、我々の閣僚に対し、HIPCイニシアティブに参加するための適切な条件を生みだすことを奨励するために、紛争当事国と早期にコンタクトをとるように要請することによって、これらの国が債務救済に備え、それを推進することを支援するための努力を強化することに合意する。我々は、経済改革の進展や債務救済の利益が貧しくて最も影響を受けやすい人々の支援に向けられることを確保する必要性を十分に考慮しつつ、ケルンで設定した目標に沿って、できるだけ多くの国が決定時点に到達することを確保するように協力する。我々は、20か国が、拡大HIPCイニシアティブの枠組みの下で本年末までに決定時点に到達するという期待を実現するために、重債務貧困国及び国際金融機関と迅速に協力する。この観点から、我々は、世銀及びIMFによる共同実施委員会の設立を歓迎する。我々の側としては、重債務貧困国が持続不可能な債務によって再び苦しまないことを確保するために、より責任ある貸借の慣行を促進する。

  4. 我々は、拡大HIPCイニシアティブの効果的な実施のために国際金融機関による必要な融資を確保する上での進展に留意し、HIPC信託基金への出資を含む種々の約束を歓迎する。我々は、公正な負担の分担という精神に則り、約束した資金をできるだけ早く提供するとのコミットメントを再確認する。

(保健)
  1. 保健は、繁栄の鍵である。健康は経済成長に直接的に寄与する一方で、不健康は貧困をもたらす。感染症及び寄生虫症、とりわけ、HIV/エイズ、結核、マラリア、小児期の疾病及び一般の感染症は、数十年にわたる開発を逆転させ、同一世代のすべての人々からより良い未来への希望を奪うおそれがある。新たな又は既存の医学的、技術的及び資金的な資源を十分に動員するための継続した行動及び整合性のある国際協力を行うことによってのみ、我々は、保健制度を強化し、伝統的なアプローチを越えて病気と貧困の悪循環を断ち切ることができる。

  2. 我々は、感染症及び寄生虫症と闘うために相当の資源をコミットしてきた。その結果として、我々は、国際社会とともに、ポリオ及びギニア虫(メジナ虫症)の根絶の最終段階に成功裡に到達し、オンコセルカ症を制御し始めた。

  3. しかし、我々は、更に一層前進しなければならず、また、我々は、保健分野での国際的な成果に関して前向きな変化を生むための適切な条件が整っていると信じる。我々は、優先度の高い病気が何であるかということ、及び、保健分野での負担の多くの部分に取り組むためにどのような基本技術が存在しているかについて幅広く合意している。さらに、最も大きな影響を受けた諸国において、保健が経済発展の鍵であるということについての政治的リーダーシップ及び認識が広まってきている。我々は、ダーバンにおいて開催された最近の国際エイズ会議の成功、及び、アフリカの指導者、援助供与国、国際金融機関及び民間部門がHIV/エイズに取り組むことを重視していることを特に歓迎する
  4. 従って、我々は、3つの極めて重要な国連の目標を達成するため、各国政府、世界保健機関(WHO)その他の国際機関、産業界(特に製薬会社)、学術機関、非政府機関(NGO)及び市民社会のその他の関係者とのパートナーシップを強化して作業を行うことにコミットする。
    ―2010年までにHIV/エイズに感染した若者の数を25%削減する。
     (2000年3月27日付け国連総会への国連事務総長報告書)
    ―2010年までに結核による死亡者数及び有病率を50%削減する。
     (WHOのストップ・結核・イニシアティブ)。
    ―2010年までにマラリアに関連する病気の負荷を50%削減する。
     (WHOのロール・バック・マラリア)
  5. この意欲的な課題を達成するため、我々のパートナーシップは以下を含むことを目指さなければならない。
    ―我々自身が追加的な資源を動員するとともに、国際開発金融機関(MDB)に対し、最大限に支援を拡大するよう要請する。
    ―衡平かつ効果的な医療制度の発展、予防接種の拡大、栄養及び微量栄養素の拡充、並びに感染症の予防及び治療に対して優先度を与える。
    ―影響を受けている諸国において一般の意識を高めるためのハイレベルでの対話強化を通じて政治的リーダーシップを推進する。
    ―NGO、民間部門及び多国間機関とのものを含む、革新的なパートナーシップを支援することにコミットする。
    ―重要な薬、ワクチン、治療法及び予防措置を含む費用対効果の高い既存の対処手段を、開発途上国においてより普遍的に利用可能かつより容易に入手可能にするようにする。
    ―開発途上国における薬へのアクセスという複雑な問題に取り組み、その観点から開発途上国が直面する障害を評価する。
    ―新薬、ワクチン及びその他の国際的な医療公共財について、基礎的な研究開発の分野における協力を強化する。
  6. 我々は、これらの分野における新たなコミットメントに留意し、力付けられる。我々は、HIV/エイズ、マラリア及び結核に対する国際開発協会(IDA)の融資を3倍にするとの世界銀行のコミットメントを強く歓迎する。我々は、また、二国間援助国によってなされたこの分野における援助拡大についての発表を歓迎する。

  7. さらに、我々は、我々のコミットメントを活用するための新たな戦略について合意するため、今年秋、日本において会議を開催する。会議では、この新たなパートナーシップの運用、優先度の高い分野及び行動のタイムテーブルを明確にすることを目指すべきである。パートナーである開発途上国及びその他の利害関係者の参加が不可欠である。我々は、来年のジェノバ・サミットで進展状況を確認し、また、エイズの治療及びケアへのアクセスを容易にするための戦略に焦点を当てた会議を2001年に開催するために国連と協力する。

(教育)
  1. あらゆる子供は、良い教育に値する。しかし、いくつかの開発途上国では、特に女性及び社会的に脆弱な人々に対して、教育へのアクセスは限定されている。基礎教育は、それ自体に内在する価値を有するのみならず、開発途上国が直面している広範な問題に対応するための鍵である。この分野における進展の加速化なしには、貧困削減は達成されず、各国間及び社会内の格差は拡大する。従って、我々は、ケルン教育憲章を踏まえ、ダカール行動枠組及び最近完了した第4回世界女性会議のフォローアップによる勧告を支持し、開発途上国が強力な各国の行動計画を実施する努力を歓迎する。我々は、すべての人への教育を達成することに真剣にコミットしているどの政府も、資源の不足によってはその達成を妨げられることはないとのコミットメントを再確認する。

  2. 従って、我々は、2015年までに普遍的な初等教育、及び、2005年までに教育における男女平等という目標を達成するために、二国間での努力並びに国際機関及び民間部門ドナーとともに行う努力を強化することにコミットする。我々は、国際金融機関に対し、開発途上国とのパートナーシップの下で、その貧困削減戦略において教育に焦点を当て、健全な教育戦略を有する国に一層の支援を提供することを要請する。これらの戦略は、可能な場合の遠隔地学習及びその他の有効な手段を通じて、この分野におけるITの潜在的利益を最大化すべきである。

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