ジンバブエ
国別援助方針
1.基本方針
(1) 我が国の援助対象国としての位置付け
ジンバブエは、
(イ) 農業、製造業、鉱業がそれぞれバランス良く発達し、インフラも整備されている等経済発展の条件が比較的整っていること、
(ロ) 南部アフリカにおいて大きな発言力を有していること、
(ハ) 1990年代初頭に社会主義による統制経済から自由主義経済への転換を図る構造調整計画を実施し、貿易自由化、国内の各種規制緩和等の面でいくつかの進展が見られること、
(ニ) 具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)を発揮しているジンバブエの開発政策が、DAC新開発戦略の趣旨に合致し、ジンバブエにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること、
(ホ) 一人当たりGNPが610ドルと低く、援助需要が大きいこと、

 等を踏まえ、援助を実施する。
 なお、ジンバブエは我が国の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)で第40位 (アフリカ地域で第8位)であり、また、ジンバブエにとり我が国は第3位(98年)の援助国である。
(2) 我が国の援助の重点分野
 我が国は、ジンバブエにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究並びに98年1月に派遣した経済協力総合調査団等によるジンバブエ側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
(イ) 所得向上に結びつく産業振興のための条件整備
 経済成長を支える基礎条件整備のために、労働市場が必要としている人材開発のための職業訓練の充実や、通信、運輸等の経済インフラの整備を図る。また、広い基盤に支えられた経済成長を実現させていくために、中小企業育成のための支援を行う。
(ロ) 保健医療
 エイズ感染率が極めて高い状況にあるため、感染防止のための教育・啓蒙活動や予防対策に取り組む。また、マラリア等の感染症の分野やプライマリー・ヘルス・ケアに対する支援により、保健医療水準の向上を図る。
(ハ) 共同体地域及び再入植地域の農業
 人口の3分の2が従事し総輸出額の半分近くを占める農業の振興は重要であり、小農の多い地域において農業・農村開発、食糧増産等の支援により農業振興を図る。
(ニ) 水を含む環境保全
 水資源問題、森林保全等の環境問題に対し、地方及び都市部における水資源の確保を図るとともに、ジンバブエ政府が現在策定中である環境行動計画の具体化に向けての支援を行う。
(3) 留意点
  • 構造調整の推進及びマクロ経済の安定を図り、持続的な経済成長を達成するためには、ジンバブエの自助努力に加え、主要ドナーの援助協調を促進することが必要である。
  • 農地改革(白人農地の黒人への分配の取り扱い)に関して、本年2月以降退役軍人を中心とする黒人による農場の不法占拠が続いている(2000年6月末現在)ことから、政治の問題解決努力に注視し、今後の協力の実施に当たっては人権の尊重・法の支配が促進されることを重視する必要がある。
  • 98年10月に東京にて開催された第2回 アフリカ開発会議(TICAD02)で採択された「」の推進に資する協力を実施する。

2.ジンバブエ経済の現状と課題
(1) 主要経済指標
一人当たりGNP(98年)と
GDP成長率(90-98年平均)
実質GDP成長率
610ドル、2.0%
(世銀資料)
93年 1.3%、94年 6.9%、95年▲0.6%、96年 8.7%、
97年 3.7%、98年 2.5%、99年 2.5%(IMF資料)

(2) 現状
 90年代初頭、社会主義経済から市場指向型自由主義経済への転換を目指す構造調整計画の実施により、貿易の自由化、国内の規制緩和等の面で着実な進展が見られる。しかし、世銀・IMFにより国際収支支援の条件として削減が求められている財政赤字やインフレ率については上昇傾向にある。また、主要農産物であるタバコ及び金等の主要鉱物の国際価格の下落等による国際収支の悪化、主食であるメイズ等の食料品及びディーゼル等の燃料の値上げと不足も重なり、経済運営に対する国民の不満が高まっている。また、白人農地の退役軍人による不法占拠等もあり、多くの課題を抱えている。
(3) 課題
  • 国営企業の民営化・商業化促進、石油補助金の削減等による財政赤字の削減
  • インフレ及び高金利政策により悪化している国内投融資環境の改善<
  • 輸出産業の国際競争力の強化、国際収支の改善
  • 規制緩和等による経済自由化の促進
  • 持続的な経済成長を実現させるための人材育成、産業基盤の整備<
  • 水供給、保健・医療(特にエイズ対策)等社会サービスの向上
  • 食料の安定供給、生産力確保に資する土地改革及び農業生産基盤の整備

3.開発計画
第二次経済構造調整計画(1996年~2000年)

(達成目標)
  • 年平均実質GDP成長率6%の達成
  • 財政赤字の対GDP比5%への抑制
  • 投資及び貯蓄率の対GDP比23%の達成
  • 輸出の年平均9%の増加
(政策課題)
  • 貿易、投資を通じた経済成長
  • 雇用創出
  • 財政赤字の削減
  • 地方分権の促進
  • 国営企業の商業化及び民営化に伴う規制緩和措置の拡充
  • 持続可能な開発
 現在、長期の開発戦略である「ビジョン2020」の策定が進められているが、政府の能力不足から大きく遅延している。

4.援助実績
(1) 我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

有償 無償 技協 合計 供与先順位
99年(暦年) 30 35 13 78 19位
99年(暦年)までの累計 91 346 98 535 139位
(2) DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
二国間総額 1位 2位 3位
216 英国 37 オランダ 28 日本 27
(3) 国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
国際機関総額 1位 2位 3位
65 IDA 28 EC 22 AfDF 5

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