ジョルダン
国別援助方針
1.基本方針
(1) 我が国の援助対象国としての位置付け
ジョルダンは、
(イ) 中東和平プロセスの当事国として同プロセスにおいて積極的な取組みを行っており、同国の政治的・経済的安定が中東地域の平和にとって重要となっていること、特に、現在ジョルダンはフセイン国王逝去後の移行期にあり、国際社会全体がジョルダンを支援する必要性が一層高まっていること、
(ロ) 民主化及び経済改革に関し積極的に努力していること、
(ハ) 皇室・王室の交流を含めた我が国との関係が良好であること、

等を踏まえ、援助を実施する。
 なお、ジョルダンは我が国の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)で第14位(中近東地域で第2位)の受け取り国であり、また、ジョルダンにとり我が国は第3位(98年)の援助国である。
(2) 我が国の援助の重点分野
 我が国は、ジョルダンにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究並びに96年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等におけるジョルダン側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
(イ) 基礎生活の向上
01 水供給
ジョルダンは乾燥地帯に属しており水供給源が少なく水需要も増加しつつあることから、水の効率的活用を図りつつ、特に深刻な問題となっている生活用水及び農業振興のための潅漑用水の確保を支援する。
02 食料
ジョルダンは、水資源の制約から国土に占める農耕地の割合が低く、農業生産性が低いことから農産品の輸入依存度が高い。ジョルダンの安定的食料供給を確保するため、潅漑事業、品種改良等への支援を行う。
03 基礎的保健・医療
都市と地方の公共医療施設の整備状況に大きな格差が存在するところ、地方における保健医療施設の質的改善に重点を置いた支援を行う。
04 教育
ジョルダンが現在取り組んでいる初等教育及び職業訓練の充実に重点を置いた教育改革を支援していく。
(ロ) 産業振興
01 輸出産業発展を目的とした人的協力及び資金協力
天然資源に恵まれず、基幹となる産業を有さないジョルダンの自立的経済発展には輸出指向型産業の育成が必要であり、産業政策策定に関して人的協力を実施しており、人的協力及び資金供与を含む包括的な輸出産業支援策を推進していく。
02 観光及び中継貿易のためのインフラ整備
歴史的建造物や観光資源に恵まれたジョルダンの有望産業である観光産業及び交通上の要衝に位置する同国の貴重な外貨獲得源である中継貿易を含む産業分野の基盤整備を支援する。
(ハ) 環境保全
急激な都市化及び人口増加による水質汚濁、大気汚染、廃棄物の増加等の環境問題が深刻化しているところ、これらの問題へのジョルダンの対応を支援していく。また、ジョルダンの地域的な環境問題への取り組みへの支援を検討する。
(3) 留意点
  • 対ジョルダン支援は中東和平プロセスと不可分の関係にあることから、経済協力の実施に当たっては、政治経済等様々な面からの幅広い政策対話を行うことが重要である。
  • 慢性的な国際収支赤字及び債務問題に直面しているジョルダンの政治的安定を図るためには債務管理向上、適切なマクロ経済運営に資する支援、及び重要産業への政策支援が必要である。

2.ジョルダン経済の現状と課題
(1) 主要経済指標
一人当たりGNP(98年)と
GDP成長率(90-98年平均)
実質GDP成長率
1,520ドル、5.4%
(世銀資料)
93年 5.8%、94年 7.6%、95年 3.9%、96年 1.0%、
97年 1.3%、98年 2.2%、99年 2.0%(IMF資料)

(2) 現状
 89年以降、政府は構造調整を実施しているが、90年代半ばからは、出稼ぎ労働者の送金の落ち込みなどにより経済が低迷するとともに、96年以降、実質GDP成長率は人口増加率を下回り、貧困層の多さや失業率の高さも社会問題となっている。また、2000年にはWTOへの加盟を果たし、市場開放によって外国投資を誘致などにより民間主導の経済を構築する意図を有しているが、基幹となる輸出産業が国内に存在せず、生活必需品等の大部分を輸入に頼っていること等から生ずる大きな輸入超過は構造的な問題となっている。
(3) 課題
  • 輸出産業振興等による民間部門主導の外貨獲得ベースの拡大と多様化
  • 観光資源の開発と周辺環境の保全との調和
  • 国営企業の民営化の促進と政府部門の合理化による経済構造の効率化
  • 水資源の確保(既存の水利用の効率化、新規水源の開発)及び保全
  • 人口増加抑制
  • 教育・保健等の社会サービスの向上
  • 失業対策と貧困撲滅の実施
  • 内外政治情勢の変動に伴う不安定な外貨準備高

3.開発計画
社会開発5か年計画(1999~2003年)は現在策定中であるが、暫定的な目標としては以下の通り。

(暫定的な目標)
  • 人口抑制に対する対策
  • 社会開発と基礎生活分野の充実、貧困・地域格差等の改善
  • 輸出産業の振興
  • 民間投資拡大のための法律、規制・制度面での環境整備
  • 雇用機会の創出による失業率の解消
  • 財政金融の安定化、インフレの抑制
  • 国営企業の株式会社化、民営化の促進
  • 国内貯蓄高の増加及び民間投資増大

4.援助実績
(1) 我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

有償 無償 技協 合計 供与先順位
99年(暦年) -3 50 14 61 28位
99年(暦年)までの累計 1,275 173 138 1,587 14位
(2) DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
二国間総額 1位 2位 3位
277 米国 140 ドイツ 52 日本 44
(3) 国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
国際機関総額 1位 2位 3位
132 UNRWA 76 EC 49 WFP 3

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