(1)
国連開発計画(UNDP)
UNDPは、国連システムにおける技術協力活動の中核的資金供与機関である。途上国132ヶ国に常駐代表事務所を置き、その広範なネットワークを通じ、各国政府及び他の国際機関、NGO等と協力して、175の国や地域で6,000件を上回る開発プロジェクトを実施している。UNDPは、「持続可能な人間開発」(Sustainable Human Development, SHD)を開発の基本原則に掲げ(94年執行理事会で承認)、貧困撲滅、女性の地位向上、良い統治の確立、環境保全及び紛争後等特別な状況下での開発の5分野に活動の重点を置いている。そして、途上国がこれら5分野においてSHDを達成しうるよう、各国のキャパシティ・ビルディング(能力開発)向上に焦点を当て、途上国のニーズに即した援助を実施している。特に貧困撲滅を最重要課題に位置づけており、UNDPのコア・ファンドの90%が、一人当たり国民所得が900ドル以下の途上国向けに充てられている。
UNDPの活動資金は、各国からの任意拠出により賄われており、99年の拠出金総合計(コア・ファンド、トラスト・ファンド等を含む)は、19億8,000万ドルであり、そのうち、使途の特定されないコア・ファンドは6億8,000万ドルである。UNDPでは、各国からの拠出金見込み額をベースに、原則3年毎に向こう3年間の国別援助割当額を定め、これをもとに、各国のUNDP常駐代表事務所が中心となって、援助の重点分野や主要プロジェクトの概要を示した国別協力フレームワークを策定し、その上で、被援助国政府及び他のドナー国等との協議を踏まえて具体的なプロジェクトを確定する(99年の日本のコア・ファンド拠出金は8,000万ドルで、全コア・ファンドに占める率は11.7%(2位)となっている)。コア・ファンド以外にも、日本は、UNDP内に「日本・UNDP人造り基金」、「日本パレスチナ開発基金」等の使途を特定した基金を設置し、それぞれの設立目的別に援助を実施している。
(2)
国連婦人開発基金(UNIFEM)
UNIFEMは、開発途上国の女性の経済的・社会的自立を支援し、女性の地位向上を促進するための各種プロジェクトに対する資金・技術協力を行っている。UNIFEMの支援するプロジェクトは、革新的・実験的なものや他の援助機関による支援を受けられない小規模プロジェクトが多い。UNIFEMは、95年9月に開催された第4回世界女性会議で採択された行動綱領に則り、女性の政治的・経済的エンパワーメントに焦点を当てた事業活動を強化している。
また、日本のイニシアティブにより96年に同基金内に設立された「女性に対する暴力撤廃のための信託基金」を通じ、女性に対する暴力撤廃のための各種プロジェクトに対する資金協力を行っている。
(3)
国連ボランティア(UNV)
UNVは世界各国よりボランティアを採用し、他の国際機関、受入れ国政府、UNV自身等が実施するプロジェクトに派遣している。99年には、149ヶ国からボランティアを採用し、139ヶ国、4,383のポストに派遣した。近年、ボランティアが派遣されているプロジェクトは、従来の技術協力、開発援助分野から緊急人道援助、復旧・復興、選挙監視、人権擁護、平和構築など新たな分野に広がってきている。
(2)
国連世界食糧計画(WFP)
WFPは、食糧を開発途上国の経済社会開発及び緊急食糧援助に役立てることを目的として、国連及びFAO(国連食糧農業機関)の共同計画として設立された国際機関である。開発分野においては、労働の対価として食糧を配給する「Food for Work」を利用した農業インフラ整備や学校給食を通じた人的資源開発等を行っており、緊急援助分野においては、干魃・洪水等の自然災害や紛争・内戦等の人災による難民・被災民に対して、緊急食糧援助を実施している。99年には、総額約14億ドル(食糧342万トン)の活動を展開し、受益者は世界82ヶ国で約8,900万人に上る。
(3)
国際農業開発基金(IFAD)
IFADは、74年の国連世界食糧会議で設立が決議され、77年に発足した国連専門機関であり、開発途上国が農業、農村開発のための資金を緩和された条件で利用可能にする国際金融機関である。特に、貧困農業地域の農業生産向上、生活基盤整備などの特定プロジェクト、また国全体の農業開発総合計画を重点的に支援している。なお、IFADは融資のみならず農業技術開発プロジェクト等に資金贈与事業も行っている。
(1)
国連児童基金(UNICEF)
UNICEFは、46年に戦争により荒廃した地域の児童に対する緊急援助を目的として設立されたが、現在は開発途上国の子供に対する保健・衛生、飲料水供給、栄養改善、教育等に関する長期的援助及び自然災害、地域紛争の際の短期的緊急援助支援等を行っている。UNICEFの活動は政府、国際機関及び民間よりの任意拠出金及びUNICEFの発行するグリーティング・カードの収益等を収入源としている。なお、90年に開催された「世界子供サミット」のフォローアップとして、2001年に子供サミットの目標の達成状況をレビューするための国連特別総会の開催が予定されている。
(1) 国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所
国連難民高等弁務官事務所は、49年の国連総会決議により設置が決定し、51年より活動を開始した(第8代高等弁務官(1991~2000年)は、緒方貞子氏が努めた)。UNHCRの主な活動は、政治的な迫害を受けるおそれがあったり、また民族・宗教の対立に起因する紛争や内戦により自国からの避難を余儀なくされたりした難民に対して、国際的な保護を与え、緊急援助を行い、自国への自主的な帰還、避難国における定住または第三国への再定住を通じた難民問題の恒久的な解決を目的としている。右に加えて、近年では国連事務総長の要請等に応えて国内避難民の保護及び援助を実施している。その他、難民の発生を未然に防ぐ予防措置に留意した活動や紛争終了後の復旧・復興への円滑な移行のために触媒的な役割を果たすなど難民問題の恒久的な解決に向けた積極的かつ包括的な取り組みを行っている。
このようなUNHCR等国際社会の努力にも拘わらず世界の難民・国内避難民等、UNHCRの保護と支援の対象となっている人々は、未だ世界中で約2,200万人にのぼっている。
99年3月、ユーゴースラヴィア連邦のコソヴォ自治州において、セルビア当局のアルバニア系住民に対する大規模かつ組織的な攻撃の結果、大量かつ急激な形で難民・避難民が発生した。また、99年8月には、東チモールの自治を問う直接投票後の混乱により多数の難民が発生した。これらの事態に対し、UNHCRは、国連人道機関の主導機関として、緊急人道支援及び難民の帰還に関し支援を行った。
紛争後の社会において、UNHCR等が担当する緊急人道支援が終息し長期的開発が開始されるまでの間に空隙(ギャップ)が生じることがこれまでにも指摘されてきていたが、99年1月には、UNHCRの緒方高等弁務官と世銀総裁とのイニシアティブの下、人道援助・開発機関、我が国を含む主要ドナーの参加を得て本件に関する円卓会議が開催された。更に本年2月には、UNHCR、世銀及びUNDPの各機関の幹部がシエラ・レオーネを共同で視察し、ギャップ問題に対する具体的なプロジェクトが策定された。UNHCRは、我が国を含むアジア・大洋州地域の人道支援に関するNGO等の能力向上を図る「
アジア・大洋州地域国際人道支援センター」事業を推進しており、我が国は「人間の安全保障基金」を通じて本事業を支援している。
(2)
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)
ジョルダン、シリア、レバノン及び西岸・ガザにおける約368万人のパレスチナ難民の支援にあたるUNRWAは、過去50年近くにわたり、パレスチナ難民を人道的に支援するとともに、現行和平プロセスを支援するために、主に教育、保健、救済・福祉の三分野における活動を積極的に推進してきた。現在中東和平プロセスにおいてパレスチナ難民問題が最終的に解決されるまではUNRWAの活動は存続させる必要があり、またUNRWAが現行和平プロセスにおいても重要な役割を有していることから、UNRWAの活動期限については、1998年11月の第53回国連総会決議により2002年6月末まで延長された。
日本は、従来よりUNRWAへの主要拠出国であるが、99年度は、総額1,007万ドルの任意拠出を実施したほか、食糧援助16億円(1999年3月及び12月にそれぞれ平成11年度予算、平成12年度予算にて8億円ずつ供与)の供与、パレスチナ難民研修員の本邦受入れ10名及びJICA専門家派遣2名を実施した。
(3)
国連人道問題調整事務所(UNOCHA)
国際的な人道援助・災害救済活動が必要とされる緊急事態に対して国連が適切に対応するための調整機能を改善するため、97年12月、第52回国連総会決議(52/168)が採択され、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)が設置された。
UNOCHAは現在、世界各地の人道問題に対処するため、災害の情報収集及び分析に努めると共に、UNHCR、WFP、UNICEF等それぞれの分野で知見を有する人道援助機関が相互に協力して効率的に支援を行えるよう各国連機関の活動を調整することを目的としている。そのため国際社会に対して国連統一アピールを発出し人道援助のための協力を要請したり、また、人道援助機関間における人道に関する課題を国際社会に啓蒙するなど、人道問題の解決に積極的に取り組んでいる。近年では、コソヴォ、東チモール、アフリカの各地域等の紛争、またアフガニスタンの干魃、モザーンビークの洪水等の自然災害による人道危機に際し国連統一アピールが発出されており、国際社会もこれに対して支援を行っている。
(4)
国際移住機関(IOM)
第二次世界大戦後間もなく、欧州、中南米における移民・人口・難民問題解決のために発足した国際機関であり、現在では難民等の輸送活動をはじめ、人の移動に関わる支援を幅広く世界中で行っている。
(5)
赤十字国際委員会(ICRC)
スイス人アンリ・デュナンの提唱により、1863年に設立された。人道・公平・中立等の国際赤十字、赤新月運動の基本原則を掲げ、紛争地域において中立かつ独立の機関として紛争犠牲者等に対する保護・医療・水供給・衛生活動・食糧・衣料等の援助、離散家族間の通信等の活動を行う他、国際人道法の発展・普及のための活動を行っている。
1996~97年の在ペルー日本大使公邸占拠事件においては、水、食糧、医薬品の搬入等の人道的な支援を行うとともに、中立的な立場から犯人グループとペルー政府の対話・交渉の仲介を行い、多大な貢献を果たした。
5. 地球規模問題他
(1)
国連人口基金(UNFPA)
67年に設立されたUNFPAは、家族計画、人口問題についての啓発・教育、人口基盤データの収集等の分野における各国政府、援助機関、研究機関に対する資金の供与、技術提供を行っており、94年9月カイロで開催された「
国際人口開発会議」のフォローアップのための中心機関として、最近では特に人口と環境のかかわり、女性の地位の向上といった分野に努力を傾けている。99年6月には上記「
国際人口開発会議」の5年後のレビューを行う目的で、UNFPAが事務局となって国連人口開発特別総会が開催された。日本は、71年に拠出を開始して以来、地球規模の取り組みが求められている人口問題の重要性に鑑み、UNFPAの活動を積極的に支援しており、86年から99年までは最大拠出国となっている。
(2)
国連薬物統制計画(UNDCP)
91年、地球規模で深刻度を増している麻薬問題に対処するために、三機関(国連麻薬委員会、国連麻薬統制委員会、国連麻薬統制基金)の事務局機能を統合するものとしてUNDCPが設立された。
UNDCPの役割としては(1)薬物に関する情報・ノウハウの集積機関としての役割、(2)適切な薬物対策を勧告するため、麻薬に係わるあらゆる状況の進行の予測、(3)各国政府に対し薬物統制のあらゆる方向にわたる技術援助の供与の三つがあげられる。
また、日本は、UNDCPの活動を支援するため、2000年は338万ドルの任意拠出を行い、国連を通じた薬物対策に積極的に取り組んできている。
(3)
国連環境計画(UNEP)
72年にストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を受けて同年の国連総会決議により設立されたUNEPは、環境問題に関する国連内外の事業に関し総合調整を行うとともに、自らも地球環境のモニタリング、調査、情報収集、情報提供、条約作成作業等の事業や活動を行っている。
(4)
世界保健機関(WHO)
1946年にニューヨークで開かれた国際保健会議が採択した世界保健憲章(48年4月7日発効)によって設立された、保健衛生分野における国連の専門機関である。「すべての人が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲章第1条)を目的とし、国際的な保健事項に関し指導、調整の役割を果たしており、疾病対策、衛生、栄養問題等の分野での技術協力の促進、医薬品等の国際的な基準作り、保健分野の研究促進等様々な活動を行っている。日本は51年の加盟以来、財政面及び人的な面で積極的な支援、協力を行っている。99年の日本の分担金は約7,220万ドル(分担率19.665%)で米国に次いで第2位である。
図表―153 国連人口基金(UNFPA)主要拠出国一覧(コア拠出)
図表―154 国連環境計画(UNEP)主要拠出国一覧
図表―155 世界保健機関(WHO)主要拠出国一覧
WHOは80年に天然痘の撲滅を果たして以来、
ポリオ、メジナ虫症等の撲滅に向けて着実な成果を上げており、ポリオは、欧州地域、アメリカ地域に次いで西太平洋地域においても2000年10月に根絶を確認する宣言が出された。
98年7月に就任したブルントラント事務局長(元ノールウェー首相)は、途上国の開発のためには保健向上が不可欠との考えから、エイズ、結核、マラリア等の感染症対策に極めて熱心に取り組んでおり、世銀等関係国際機関や民間、NGO等幅広い関係者の参画を得るなど、国際的な保健問題への関心を高めている。我が国も地球規模問題イニシアティヴ等を通じて途上国の感染症問題に積極的に取り組んできたが、2000年の九州・沖縄サミットにおいてG8各国の感染症対策の一層の強化と先進国、途上国、国際機関、民間、NGOとの間で「新たなパートナーシップ」を確立するべく中心的な役割を果たした。また、同年12月には九州・沖縄サミットのフォローアップとして、「
感染症対策沖縄会議」が開催された。
日本のODAとの協調実績としては、WHOの拡大予防接種事業の中で大きな比重を占めているポリオ根絶計画に関し、WHO西太平洋地域事務局管内での2000年の根絶宣言に向け着実に成果を挙げた。90年には5,991例あった同地域内のポリオ報告例はその後激減し、上述の通り2000年10月にはWHOより同地域内の野生ポリオ・ウィルス発生終息宣言が出された。西太平洋地域でのポリオ根絶計画が、継続的な日本の支援と協力を通じて初めて可能となったことは、被援助国のみならず、支援国、国際機関の間で広く認識され、評価されている。日本のODAによる全国一斉投与経口ポリオワクチンの供与、冷蔵・運搬機材及び車両等の供給は、WHOの助言、要請を基に当該国政府との二国間政府協力の形で実施されている。
(5) 地球規模問題他
(イ)
国際原子力機関(IAEA)
アイゼンハワー米大統領(当時)の提唱を受けて、1957年に発足した国際原子力機関(IAEA)は、「全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、増大するように努力する」こと(原子力の平和利用)並びに機関の「援助がいずれかの軍事目的を助長するような方法で利用されないことを確保する」こと(核不拡散)を2大目的としている(IAEA憲章第2条)。(開発途上国への)技術協力は、IAEAの任務のひとつである原子力の平和利用を促進するための主要な一手段であると位置づけられている。
技術協力に関する財源は、技術協力基金、締約国からの特別拠出及び締約国によるイン・カインド(現物拠出)からなり、そのうち技術協力基金は、技術協力の財源全体の93%(1999年)を占めている。技術協力基金は、技術協力の財源の安定的確保を図るため1961年及び1971年の総会における決議(経済的先進国は基本分担率相当を負担する)に基づき設立され、各締約国の拠出は義務的経費として認識されている。
現在、実施されている技術協力プロジェクトは約700件。プロジェクトの分野は、1999年実績で支出額の多い順にヒューマン・ヘルス分野(21%)、原子力安全(20%)、食料・農業分野(16%)、海洋環境・水資源・工業(15%)、物理・化学分野(13%)、人材開発及び能力向上(5%)、核燃料サイクル及び廃棄技術(4%)、原子力(4%)、その他(2%)。地域別には、1999年実績で欧州地域(25.5%)を筆頭に、アフリカ地域(23.1%)、東アジア・太平洋地域(19.3%)、中南米地域(17.0%)、西アジア(10.5%)、地域横断的プロジェクト(4.6%)。 事業種類の内訳は、専門家派遣、機材供与、訓練コースの開催等である。
日本は、99年には約1,300万ドル(20.58%)を拠出している。
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