第14節 非DAC諸国のODA実績

図表―143 非DAC諸国のODA実績

第15節 国際開発金融機関の援助動向

1.国際開発金融機関

 国際開発金融機関とは、国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)(「第二世銀」とも呼ばれる)、国際金融公社(IFC)、多数国間投資保証機関(MIGA)および投資紛争解決国際センター(ICSID)からなる世界銀行グループ(「世界銀行」はIBRDとIDAの総称)、特定地域・分野の融資等を対象とするアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、米州投資公社(IIC)、多数国間投資基金(MIF)、アフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ開発基金(AfDF)、欧州復興開発銀行(EBRD)及び国際農業開発基金(IFAD)等の諸機関を総称するものである。
 国際開発金融機関の業務としては、経済・社会開発を目的とした各種プロジェクトへの融資、構造調整計画及び特定部門の調整計画を対象とするいわゆる調整融資(プログラム融資)、プロジェクトの準備・実施等を支援する技術支援、民間事業への出資、貸付け、保証等があり、各機関の目的や性格に応じて融資形態・対象、条件等は異なっている。
 一般に国際開発金融機関は、その業務を行うに当たりプロジェクト等の経済的側面のみを考慮し、援助対象国の政治的性格に影響されてはならないことになっているが、91年4月に設立されたEBRDは、その業務を行うにあたり対象国が複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則を適用していることを条件としており、政治的側面をも考慮する点で他の国際開発金融機関とは性格を異にしている。

図表―144 2000年度国際復興開発銀行(IBRD)・国際開発協会(IDA) 承認プロジェクト(地域別)
図表―145 2000年度のIBRD・IDA部門別貸付承認額

 また、新たな国際開発金融機関として、中東・北アフリカ地域の平和、安定及び開発を強化し促進することを目的に、96年8月に中東・北アフリカ経済協力開発銀行を設立する協定が作成された。しかし、99年8月現在で本協定への署名・締結を完了した国は日本とオランダのみであり、本協定の発効用件を満たしていないため、同銀行は未だ成立していない。

2. 国際開発金融機関に対する協力

(1) 世銀グループとの協力
 我が国はIBRD、IDA、IFC及びMIGA等からなる世界銀行グループに対して積極的な協力を行っており、我が国の出資シェアは米国に次ぐ第2位となっている。
 また、世銀と協調融資を行うことにより、途上国支援を行いつつ、世銀の資金動員努力も支援している。我が国の国際協力銀行は、世銀の最大の協調融資パートナーとなっている。例えば、世銀の主催する協調プログラムであるアフリカとの戦略的パートナーシップ(SPA)に対し、我が国は円借款、ノン・プロジェクト無償資金協力により協力している。
 また、世銀が融資案件を形成するためには融資前の技術支援が重要であるが、我が国は政策・人的資源開発基金(PHRD基金)や平成12年に新設された日本社会開発基金により、こうした世銀の技術支援等をサポートしている。
(2) 地域開発金融機関との協力
 ADBに対する我が国の出資シェアは15.93%(出資率、2000年4月末時点)で第1位(米国と並び同率)であるが、我が国はこれに加え、より貧しい開発途上国への融資を目的としてADBに設けられているアジア開発基金(ADF)に対しても、拠出国中最大規模となる37.5%(99年12月末時点)の拠出シェアを有している。
 また、他の地域開発金融機関に対する我が国の出資・拠出シェアは、米州開発銀行(IDB)については域外国中第1位、欧州復興開発銀行(EBRD)については米国に次ぐ第2位、アフリカ開発銀行(AfDB)については域外国中米国に次ぐ第2位、アフリカ開発基金(AfDF)については拠出国中第1位となっている。

3. 国際開発金融機関の最近の活動

 国際開発金融機関の最近の活動は、次の分野に重点がおかれている。
(1) 世界の経済危機への対応
 97年のアジアでの危機発生後、ロシア、中南米に拡がった危機への対応が引き続き国際開発金融機関の重要な課題となった。国際開発金融機関はIMFとともに、危機下の国々に対する迅速な資金供給を行いつつ、構造改革支援、金融部門や企業再構築等の分野での技術支援等を通じて、危機の影響を被った国々が持続可能な経済成長軌道に復帰し、国際的な信任を回復することを支援し、ひいては、国際金融システムの安定性を回復することに貢献している。こうしたマクロ経済、金融部門、企業部門への支援と並行して、危機の社会的弱者、貧困に与える影響にも留意し、構造改革を実施中の被支援国が社会的安全網(ソーシャル・セーフティ・ネット)を強化することも支援している。
(2) 貧困削減の重視
 国際開発金融機関は、国連やOECD/DACで取り上げられた2015年までの貧困人口率半減等の新開発戦略の目標(国際開発目標)の達成に向けても努力している。サハラ以南のアフリカや南アジアでは依然貧困が深刻であるが、97年から99年にかけては、ハリケーン・ミッチやエル・ニーニョ現象による自然災害、コソヴォ紛争等に伴う大量の避難民の発生、復興支援の需要増大など、貧困を巡る新たな課題に直面した時期でもあった。国際開発金融機関は、引き続き、サハラ以南のアフリカ等において、経済的機会の創出や裨益層が広範に及ぶような経済成長の実現、初等教育、基礎保健等基礎的社会サービスの供給、人的資本開発等を支援することにより、貧困削減努力を支援する一方、自然災害、紛争などによる貧困問題の発生に対しても、自ら支援を行うばかりでなく、支援国会合を開催し、復興計画作りを支援することを通じて、資源動員にも努めた。
(3) パートナーシップの促進
 ODAが世界的に減少傾向にある中、限られたODA資源を効果的・効率的に活用するための努力の一環として、被援助国・ドナー間のパートナーシップ、援助協調の促進・強化が喫緊の課題となっている。国際開発金融機関も援助協調の促進に努めており、99年1月には、ウォルフェンソン世銀総裁が被援助国、ドナー、民間セクター、市民社会間のパートナーシップを重視した包括的な開発フレームワーク(CDF)を発表して、国際的に注目を集めた。
(4) 重債務貧困国の債務救済
 重債務貧困国(HIPCs)の債務問題に関しては、99年のケルン・サミットにおいて、ODA債権の削減率の100%までの引き上げを含む「より早く、より深く、より広範な」債務救済を行うことにつき合意されたが、2000年4月には、我が国の自主的な追加措置として、01国際的な枠組みの下での非ODA債権削減率の90%から100%までの拡大、02世界銀行の多国間債務救済基金に対する、既拠出分と合わせ2億ドルまでの拠出、03無償資金協力の拡充、を含む重債務貧困国に対する様々な方法による支援の継続を発表した。
 また、2000年7月に行われた九州・沖縄サミットでは、ケルン・サミットにおいて合意された重債務貧困国に対する債務救済イニシアティブ(拡大HIPCイニシアティブ)の迅速かつ効果的な実施に向け取り組みを強化することにつき合意された。これに関連し、2000年中に20ヶ国がイニシアティブの「決定時点」に到達するよう協力することが合意されたが、2000年末現在、22ヶ国が「決定時点」に到達し、この目標は達成された。
(5) その他の主な支援活動
 汚職に代表される貧弱なガバナンスは、開発効果を阻害し、貧困層が本来得られるはずの機会を奪ってしまう。こうした観点から、国際開発金融機関は、公的機関の説明責任の明確化、政策決定プロセスの透明化、途上国における「良い統治(グッド・ガバナンス)」の確立を支援している。
 また、民間セクターは経済成長の原動力であるという認識から、国際開発金融機関は、民間セクターの途上国における投融資に対し支援を行う他、民間セクターの活動の基盤となる法制度、市場等の環境整備を促進している。
 持続可能な開発の実現に向けて、環境の保護も国際開発金融機関にとって重要となっている。具体的には、案件審査における環境影響評価の実施、環境管理のためのキャパシティ・ビルディング(能力開発)、法・規制の整備、エネルギーの効率的利用等を行っている。

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