10. ノールウェー

(1) 援助政策等
 ノールウェーは、1995年12月に議会において承認された「変化する世界-途上国に対するノールウェー政策」を現在の援助政策の基本方針としており、優先的な政策は、南北問題に関わる南地域の持続的発展が可能となるよう、経済・社会及び政治上の改善に貢献することである。具体的には、(イ)平和、人権及び民主化、(ロ)貧困国及び貧困層の経済的、社会的発展、(ハ)世界的な環境等の健全な管理、(ニ)社会における男女平等の権利・機会、(ホ)紛争及び自然災害に関わる経済的困窮の防止と軽減、といった課題への取り組みに貢献すべく、優先的に支援を実施することとしている。
 また、ノールウェーは「2000年以降のノールウェーの債務救済戦略」("Toward the year 2000 and beyond:the Norwegian debt relief strategy")と題する債務救済戦略を99年に国会で承認し、この中で世界で初めて片務的債務救済を導入した。この戦略計画に従って、ノールウェー政府は、2000年4月から7月にかけて、タンザニア、セネガル、ベナンに対して合計45.5億ドルの債務帳消しを実施している。
 さらに、2000年5月、開発援助大臣は議会において開発援助政策を表明した。同政策は、(イ)開発援助を今後国民総所得の1%まで高めること、(ロ)貧困撲滅のための保健・衛生、教育分野への支援の重点的実施、(ハ)「良い統治」、民主主義、人権の尊重の促進を優先課題とすること、(ニ)効果的な援助のための調整、地域評価の定期的実施、(ホ)民間企業、団体、研究機関との協力の促進、(ヘ)政府の援助政策に関するNGO等からの意見の尊重、(ト)援助における国際的協調、特に被援助国主導の協調を歓迎すること、(チ)援助の「質」を重視した評価の実施、(リ)国民への情報提供努力、を内容とするものである。
 ノールウェーの99年ODA実績は、13.7億ドル、対GNP比0.91%(DAC報告ベース)であり、対前年比3.7%の増加である。
 なお、2000年予算では108.6億NOK、同0.89%を計上し前年比6.5%増と前年を上回る伸び率となっている。
 二国間援助は10.07億ドルで、99年は、セルビア、モンテネグロ、ボスニア等への援助が増加した結果、アフリカへの援助は全体の39%に低下した(98年は46%)。
 ノールウェーは、12カ国(モザンビーク、タンザニア、バングラデシュ、ザンビア、ウガンダ、エティオピア、エリトリア、ジンバブエ、ニカラグァ、マラウィ、スリ・ランカ、ネパール)を援助優先国としており、そのうち9カ国は後発開発途上国(LLDC)に属する。
 国際機関を通じた援助は3.63億ドルであり、特に国連関係機関を重視している。

図表―135 ノールウェーの二国間ODA上位10ヶ国
図表―136 ノールウェーの二国間援助地域別シェアーの推移


図表―137 ノールウェーの二国間援助分野別シェアーの推移


(2) 実施体制
 ノールウェーにとって、対外援助は重要な外交政策となっており、国会が政策・予算の策定に大きく関与している。援助政策は外務大臣及び開発援助大臣と議会の協議を経て決定されるほか、対外援助予算も国別、地域別割当を国会が議決し、内容の変更には国会の承認が必要になる。
 援助政策の立案、多数国間開発援助、緊急援助は外務省が行うが、現在の外務省はかつての開発協力省をその機構に取り込んでおり、外務大臣及び開発援助大臣の2大臣が一つの省(外務省)内に存在している。また、これまでノールウェーの開発援助政策は、「アフリカ、ラテン・アメリカ、アジア、中東、オセアニア及び開発援助局(いわゆる「二国間局」)」の開発政策課が所掌していたが、2000年10月に機構改革を実施し、開発援助政策課、評価課からなる「開発協力政策局」を新設した。これは、国のみでなく地域という観点からも問題解決を図ること、及び、バイとマルチを通じた取り組みをリンクさせることにより、幅広い視点から開発援助政策を企画・立案することを目指すものである。同局に加え、二国間局、人権・民主主義・人道援助局、及び、多数国間局が関係部局として開発援助に携わっている。
 一方、二国間援助については、ノールウェー開発協力庁(NORAD)が執行している。NORADは、管理局、技術援助局、広報・文化協力局、地域局、民間セクター開発局、市民社会局の5つの部局で構成されており、2000年5月現在、本庁に239名を擁する他、アフリカ、アジア等の19か国のノールウェー大使館に援助要員を合計85名派遣している。

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