99年度の無償資金協力実績は、全体で1,670件(うち1,264件が
草の根無償)、供与額合計は約2,422億円となっている。98年度実績(1,511件(うち1,064件が草の根無償)、約2,622億円)と比較すると、金額にして7.63%の減少となった。
また、2000年度無償資金協力予算は、総計約2,405億円となっており、99年度予算と比べると1.14%の増加となっている。
(1) 地域別実績
99年度の地域別割合は、アジア42%、アフリカ27%、中南米12%、中近東11%、東欧・中央アジア6%及び大洋州2%となっている。98年度の実績と比較すると、アジア向け支援は、経済通貨危機からの回復について重点的に支援を行い、特にカンボディア、ラオスへの供与額が10%前後増加しまた、フィリピンへの供与額も構造調整支援の実施などにより大幅に増加したこと等から、引き続き高い割合を維持している。中南米は一昨年のハリケーン災害からの復興支援が昨年度よりも減少し実績・割合とも低下した。中東はインフラ案件の実施が進捗したこと及びジョルダンに対する
ノン・プロジェクト無償を引き続き実施したこと等により実績・割合はやや増加した。
(4)
緊急無償
緊急無償については、99年度において合計36件、総額約134億円を実施した。このうち、災害緊急援助としてトルコ及び台湾の地震災害に対する支援、コソヴォ難民等に対する支援等計約106億円、民主化支援として、インドネシア総選挙への追加支援、イエメン大統領選挙支援等計約5億円の支援を行った。また、復興開発支援ではパレスチナ支援、コソヴォ支援等計約23億円を実施した。
(5)
文化無償協力
99年度においては、57件を実施した。機材の種類別では、劇場など文化施設関連機材が最も多く、次いで文化財・遺跡保存関連機材、楽器、大学など教育施設関連機材の順となっている。地域別では、中南米地域が最も多く、アジア地域が続いている。
他の先進国の援助疲れの中、開発途上国のニーズはますます多様化しており、日本に対する支援の期待は大きくなっている。このような状況の中で、99年の技術協力の実績は、3,596億円であり、うちJICAを通じた技術協力実績は1,563億円であった。
JICAの技術協力実績(99年度)を地域別に見ると、アジア(42.3%)、中米(20.4%)、アフリカ(15.6%)、中近東(9.7%)大洋州(2.8%)、欧州(2.7%)、国際機関(0.7%)、となっており、我が国のODA全体と同様に、アジアの占める割合が大きくなっている(但し、地域分類不能分を除いて計算)。
アジアにおいては、東・東南アジアが1997年に発生したアジア経済危機からの回復に取り組む一方、南西アジアは市場経済原理を積極的に導入し、マクロ経済の安定を重視する開発政策を積極的に推進している。これらアジアに対するJICAの技術協力実績は、研修員受入は12,342人(世界全体の64.9%、対前年比1,801人減(1998年度からの大幅減は、アジア経済危機に対する支援として補正予算により実施した「現地国内研修」の有無による))専門家派遣は3,351人(同57.6%、対前年比495人増)、調査団派遣は4,748人(同52.2%、対前年比581人増)、
青年海外協力隊派遣は972人(同27.1%、対前年比59人増)となっている。
中近東地域では、政治的、経済的、社会的に多様であることから、大きくいって環境配慮と資源(水資源、観光等)の有効的活用を共通の重点項目として協力しているが、この地域に対するJICAの技術協力実績は、研修員受入は1,169人(世界全体の6.1%、対前年比50人増)、専門家派遣は638人(同11.0%、対前年比228人増)、調査団派遣は1,072人(同11.8%、対前年比310人増)、青年海外協力隊派遣は218人(同6.1%、対前年比33人増)となっている。
アフリカに対しては、この地域の独自性と多様性に照らし共通の重点項目として、基礎教育、保健医療、水資源開発、農業開発、生計向上、経済インフラ、環境保全に対する協力をJICAを通じて実施しており、研修員受入は2,172人(世界全体の11.4%、対前年比350人増)、専門家派遣は576人(同9.9%、対前年比154人増)、調査団派遣は1,194人(同13.1%、対前年比52人減)、青年海外協力隊派遣は907人(同25.2%、対前年比37人増)にのぼった。
また、開発調査は全体で251件の協力を実施した(98年度の実績は269件)。
さらに、援助効率促進のため、30ヶ国弱へプロジェクト確認調査団を派遣するとともに、約50件のプロジェクト形成調査団及び64人の企画調査員の派遣を行った。
国際緊急援助の過去1年間(99年4月~2000年8月)の実績は次の通りである(資金的援助については
1.(4)緊急無償参照)。
(1) 人的援助(
国際緊急援助隊の派遣)
この99~2000年は、トルコ、台湾、インドネシアにおける地震災害、モザンビーク等南部アフリカ諸国での洪水災害など、98年に引き続き世界的に大規模な自然災害が多発した年であった。
このような状況の下、日本は過去1年(99年4月~2000年8月)で合計11チーム(275人)の国際緊急援助隊を派遣した。内訳は、救助チームが2チーム(149人)、医療チームが6チーム(101人)、専門家チームが3チーム(25人)であった。
救助チームの2件は、大規模な震災に見舞われたトルコ(99年8月)及び台湾(99年9月)への派遣であった。トルコへは地震発生約41時間後に被災地入りするという極めて迅速な派遣となり、また、台湾では、日本の救助チームが他国の救助チームに先駆けて最も早く被災地入りし、救助活動を行った。このような日本の迅速な支援は現地報道等で大きく取り上げられ、多くの賞賛を得た。
医療チームは、トルコ及び台湾に派遣された他、大規模な洪水災害により多数の死者を出したモザンビーク(2000年3月)及び地震災害を被ったインドネシア(2000年6月)へも派遣された。これら医療チームは、災害直後の外傷患者等に対する外科的治療のみならず、時間の経過と共に変化する医療ニーズを敏感に捉え、内科や小児科、感染症等に対する診療、さらに、災害後の精神的不安の症状を訴える被災者に対しての心のケアを行うなど幅広い医療活動を行った。
また、トルコ及び台湾地震災害では、建築物の耐震診断専門家チームも被災地に派遣され、災害後の応急復旧面での助言・指導を行い、先方関係機関より高い評価を得ている。
さらに、トルコ地震災害に際し、住居を失った被災者のために兵庫県より無償にて提供を受けた仮設住宅500戸を「ぶんご」など3隻の海上自衛隊艦船でイスタンブール港まで輸送した。同時に、仮設住宅建設指導を行う専門家チームを現地へ派遣し、約1ヶ月に渡り現地の建築業者に対して仮設住宅の建築指導を行った。
(2) 緊急援助物資の供与
緊急援助物資の供与は、99年度において22件実施した(2000年度は8月現在で2件)。特に、トルコ地震災害(99年8月及び11月)に対し、日本は3度にわたり緊急援助物資の供与を実施し、そのうち2回目の供与では民間緊急援助物資輸送業務として、民間より無償で提供された約1600万円相当の小麦粉、粉ミルク、乾パン、缶詰、水などの食料品を毛布、発電機等の緊急援助物資と共に被災地へ輸送した。