4.有償資金協力の実績

(1) 供与額は前年度比2%増
 1999年度の有償資金協力(円借款)実績(交換公文ベース)は、25ヶ国(うち債務繰延は7ヶ国)、77案件に対し1兆515億円であった。このうち債務繰延を除いた新規円借款分は513億円減少(前年比5%減)し、1兆335億円であった。
 地域別にみると、アジアに対する円借款が引き続き最大であり、そのシェアは82%と前年の92%を10%下回った。中近東、中南米のシェアは5%以上上昇し、特に中南米地域については、98年度末時点で未署名であったペルーの事前通報済み案件の交換公文が署名されたことなどが要因となって前年度0.9%から7.8%へと大幅に上がっている。
(2) 社会インフラ分野のシェア増加
 分野別配分を見ると、途上国のインフラ整備の強いニーズを反映して、運輸、電力、通信等を含む経済インフラ分野に対するシェアは48.2%と引き続き最大のシェアを占めているものの、近年の貧困問題や環境問題に対する高い関心を反映し、社会インフラ分野のシェアが前年度の19.0%から26.2%に増加した。更に、形態別配分を見ると、98年度にアジア通貨危機対策として供与されたセクター・プログラム・ローンや構造調整借款などのプログラム型借款の割合は、前年度36.2%から大幅に減少し17.3%となった。
(3) アジア通貨・経済危機への対応
 1997年夏に発生したアジア通貨危機に対応するため、98年4月、アジア諸国の構造調整努力を支援するための足の速い円借款について3年間の緊急特別金利制度(金利1.0%、償還期間30年(うち据置10年))を設けたほか、通貨価値が大きく下落した国に対しては直近の為替レートに従い計算した所得水準に基づいて円借款の適用金利の引き下げ(インドネシア、マレイシア、フィリピンに適用)を行った。また、98年10月には総額300億ドル規模の資金支援を含む新宮澤構想を発表し、順次支援を具体化した。更に、98年11月に発表された緊急経済対策を受け、99年度から3年間で総額6,000億円を上限とするアジア諸国等の経済構造改革支援のための特別円借款が創設された。特別円借款については、99年度に2ヶ国(ヴィエトナム、マレイシア)、3案件に対する約751億円(交換公文ベース)を供与したが、内外の関心・期待は高く、2000年1月には、対象国をこれまでの「経済危機の影響を受けているアジア諸国等」から「経済危機の影響を直接または間接に受けたアジア諸国を中心とする開発途上国」に拡大すると共に、対象分野についても、情報通信、輸送基地、送配電、下水道、廃棄物処理、工業団地等を新たに加えることにした。
(4) 調達条件
 99年度は一般アンタイド83.1%、部分アンタイド1.6%、二国間タイド13.4%、日本タイド1.9%であった。98年度において一般アンタイド91%、部分アンタイド7.4%、二国間タイド1.6%であったことと比べると一般アンタイドの割合は低下しているが、これは我が国の有する技術やノウハウを活用するため、国際ルールの範囲内で一部の案件についてタイド性条件(部分アンタイド、二国間タイド及び日本タイド)を適用したためである。

図表―72 円借款供与実績の推移(債務繰延を除く)


(注)交換公文ベース

図表―73 円借款分野別実績の推移(商品借款及び債務繰延を除く)
図表―74 円借款実施状況(地域別)の推移
図表―75 99年度までの累計で見た円借款供与額上位20ヶ国
図表―76 99年度円借款供与額上位10ヶ国(1999年度)

5.国際機関に対するODA実績

 国際機関を通じた援助は、それぞれの機関の有する専門知識や経験を活かした援助を世界的なネットワークを通じて行ったり、複数の国や地域にまたがる援助を調整したりする等、二国間援助にはない長所を有している。しかし、近年、多くの国の財政状況が厳しくなっていることを受けて、多くの国際機関は、限られた資金をより効果的、効率的に活用することが必要となっていることから、人員削減、国際機関相互の事業の重複の回避、他の援助国・機関との連携の強化等に努めている。
 日本は、これまで二国間援助を補完するものとして、国際機関を通じた援助を積極的に行ってきており、99年は、対前年比128.1%増の48億8,760万ドルとなった(以下ドルベース)。このうち、国連諸機関を中心とする国際機関向け贈与は、前年比16.7%増の8億1,327万ドルであった。また、開発に必要な資金を融資する世銀等の国際開発金融機関に対する出資・拠出(EBRD向け拠出も含む)は、アジア危機支援関連の拠出が大幅に増えたことから、前年比185.2%増の40億7,433万ドルであった。
 また、国際機関を通じる援助がその国のODA全体に占める比率について見ると日本の場合、97/98年の二カ年平均で24.5%であり、近年の傾向と同様、DAC諸国の平均(同期間、32.8%)を若干下回っている。

図表―77 主要援助国のODA総額に占めるマルチ援助額の割合
図表―78 国際機関を通じたODA実績の推移
図表―79 国際機関に対する各国拠出(1999年実績)

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