[10]パプア・ニューギニア
1.概 説
(1) パプア・ニューギニア(PNG)は、太平洋島嶼国中最も広い国土と多数の人口を有し、かつ資源にも恵まれ、1975年の独立以来、域内における中心的国家の一つである。99年7月にスケイト前首相の辞任を受け就任したモラウタ新首相は前政権の財政運営を厳しく批判し、経済・財政危機に陥っていたPNG再建のために、(イ)政府関係機関の権威回復、(ロ)通貨・物価の安定、(ハ)国家財政の安定化、(ニ)経済成長への障害の除去、(ホ)ブーゲンビル和平プロセスの促進、を掲げ新たな政策を取りつつある。
ブーゲンビル問題については、97年以降、ニュー・ジーランドを仲介とした和平に向けた動きが活発化し、98年1月、「リンカーン和平合意」(恒久停戦、PNG政府軍の段階的撤退、近隣諸国による停戦監視団の派遣等)が採択され、2000年3月には、住民投票による自治政府発足までの間、PNGの法令に基づいた暫定州政府を発足させることが合意された。
(2) 外交面では、豪州及び太平洋島嶼国との協力関係重視を基本としつつも、豪州依存からの脱却を指向し、諸外国との関係緊密化へと多角化を進めてきている。同国は93年11月APECへの正式参加が認められ、太平洋島嶼国はもとより、ASEAN諸国や東アジア諸国との関係強化を図っている。
(3) 経済面では、自給自足経済と貨幣経済が混在する二重構造を有し、一次産業を主体としている。主要輸出産品は金、銅、石油、木材等であり、特に、金、銅は輸出額の約6~7割を占めている。主な貿易相手国は我が国、豪州、ドイツ、米国等である。
モラウタ首相は悪化していた経済を立て直し、マクロ経済安定化を図るため、IMF・世銀との構造調整協議を重ねるとともに、我が国を含むドナー各国に財政運営安定化のための支援を要請、我が国もこれに応える形で2000年8月に5000万ドル相当の構造調整融資の供与を行った。PNGの経済指標はこれらの支援の効果もあり、徐々に好転しはじめている。
(4) 我が国との間では、独立以来、友好関係を構築している。経済面では、我が国はPNGにとり第二位の貿易相手国(第一位は豪州)となっている。97年3月には日・PNG航空協定が締結され、7月に国営・ニューギニア航空の関西空港乗り入れが開始されたが、98年4月同社の経営不振のため我が国との直行便の運航は停止された。
97年10月には、日・SPF首脳会議にゲニア外相が訪日し、2000年4月には、太平洋・島サミットに出席するため、モラウタ首相が訪日した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
PNGは、南太平洋フォーラム(SPF)、太平洋共同体(PC)を通じた南太平洋諸国との友好関係の維持・発展を重視、域内最大国として指導的地位にあり、我が国とは独立以来一貫して友好的な関係を維持してきている。最大の援助国である豪州が援助を増加させていないこともあり、我が国に対する期待が高まっている。以上を踏まえ、我が国は同国の開発ニーズに即した幅広い援助を実施している。我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)は、大洋州地域では最大の受取り国となっており、同国にとり85年以降は我が国が、豪州に次ぐ第二位の二国間ODA供与国となっている。
我が国はPNGの独立前から開発調査を実施し、独立当初より無償資金協力、研修員受入れ等の技術協力等の経済協力を実施してきている。有償資金協力については、道路・空港、エネルギー等インフラ整備、農業開発等について協力を実施している。また、2000年8月には、世銀との協調融資により同国の経済構造改革を支援するための構造調整借款を供与している。
無償資金協力では従来より教育、保健・医療分野及びインフラ整備を中心に援助を行ってきており、域内第一位の供与実績となっている。近年は運輸、通信等のインフラ整備に対しても供与されている。98年度から2カ年にわたり、「ハイランド国道ウミ橋架け替え計画」を実施し、地震等により一部が崩壊した同橋の整備を行った。また、99年度には、「放送教育用教材センター整備計画」を実施し、放送教材開発のための施設や機材の整備を行っている。97年の旱魃被害に対し、災害緊急援助と食糧援助を実施し、また、98年7月の津波災害に際して、国際緊急援助隊医療チームを派遣するとともに、緊急無償資金(30万ドル)及び医薬品等の緊急援助物資の供与を行った。
技術協力については、79年に青年海外協力隊派遣取り極めを締結したほか、83年にはJICA事務所も開設されるなど、技術協力実施体制は整備されている。99年度までの協力隊派遣累計実績では343名となっている。また、漁業関係をはじめとする専門家チーム派遣、単独機材供与も頻繁に実施され、森林研究所に対するプロジェクト方式技術協力や、ポートモレスビー市首都圏下水道整備にかかる開発調査、太平洋青年招へい事業が実施されるなど多岐にわたって協力が行われている。
なお、99年10月には、プロジェクト確認調査団を派遣し、個別プロジェクトに関する協議を通じて援助重点分野、今後の援助の方向性等について意見交換を行った。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
(参考4)豪州の対パプア・ニューギニア援助政策
二国間ODA全体の約7割(96年度)を占める主要援助国の豪州は、今世紀末までにPNGへの財政援助を全てプロジェクトまたはプログラム形式の援助に置き換えることとしており、PNG政府も92年にこれに合意した。95年には2000年までをカバーする援助協定が締結され、運輸・交通セクターの支援の重視が打ち出されている。
前ページへ 次ページへ