2.政府開発援助実績

(1) 我が国の大洋州地域に対する援助は、島嶼国の国家規模が小さいこともあり99年において総額1億3,800万ドル、我が国二国間援助全体に占めるシェアは1.3%である。
 国際機関を通じる援助としては、我が国はUNDPの日本WID(途上国の女性支援)基金への拠出により、99年よりフィジー等の域内の女性の経済的自立支援を実施している。
(2) 無償資金協力については、水産、教育、保健・医療、運輸等の分野を中心に供与してきており、99年度実績は53億円(E/Nベース)となった。
 技術協力は、水産業、保健・医療等を主な分野として専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊の派遣等を行っている。また、水産資源、海底資源、上水道、運輸インフラ等に関する開発調査を行ってきている。
 有償資金協力については、パプア・ニューギニア(PNG)に対して、水力発電、道路・空港等のインフラ整備、農業開発及び構造調整のための円借款、フィジーに対して上水道整備のための円借款を供与してきている。
 更に、経済協力に係る意見交換のため、95年1月にはマーシャル、ミクロネシア、パラオに政策協議調査団を、98年3月にはフィジー、サモア、99年3月にはトンガ、ヴァヌアツ、99年10月から11月にかけて、ミクロネシア、キリバス、PNG、ソロモンにプロジェクト確認調査団を派遣した。
(3) 2000年4月、宮崎で開催された「太平洋・島サミット」の総理基調演説において「太平洋フロンティア外交」を提唱、我が国として、グローバル化に伴う諸課題に共に取り組むべく、包括的かつ積極的な対太平洋島嶼国外交を展開していく方針を表明した。また、これを具体化するため、経済協力を含む一連の取組を「宮崎イニシアティブ」として表明し、案件の実施に努めているところである。


3.我が国政府開発援助のあり方

(1) 大洋州地域の位置付け
 島嶼国は、いずれも若い独立国として、何よりもまず「人造り」を必要としていること、一次産業依存型経済であり農業・漁業分野の開発・振興が急務であること、基礎生活分野の整備が求められていること等の共通点を有している。しかし、その国家・経済規模、天然資源の有無、伝統的社会基盤、政府の開発計画立案・実務能力等が各国毎にかなり異なっているため、各国毎にその発展段階に応じて開発ニーズを把握し、そのニーズに即したきめ細かい援助を行っていく必要がある。
 また、戦前我が国の委任統治下にあり、我が国に対する重要な漁業資源の供給源でもあるミクロネシア三国(ミクロネシア、マーシャル、パラオ)は、米国との自由連合盟約下にあるが、盟約期限(ミクロネシア、マーシャルは2001年、パラオは2009年)を控え米の財政支援が大幅に削減される見込みであるため、我が国からの援助への期待が一層高まっている。
(2) 我が国の大洋州向け援助の基本方針
 大洋州地域は我が国との関係も深く、また、漁業、林業等の資源供給先として重要である。これらの国々は国家規模が極めて小さいこと、一次産品に大きく依存していることから、天災や一次産品の国際市況といった外的要因に対して脆弱である。また、国土が広大な地域に散らばり、国内市場が狭く、国際市場から地理的に遠い等、開発上の困難を抱えている。更に、住民への適正な保健医療サービスの提供も課題となっている。一方で、広大な排他的経済水域を有していることから、漁業及び海底鉱物資源に対する期待は大きく、また我が国の海上輸送路という点でも重要である。
 このため、経済改革及び民間部門の育成による経済的自立達成の必要性が域内各国の共通認識となっており、各国は行財政改革に自ら努力している。
 以上を踏まえ、我が国としては、次の諸点を重視して支援を行う。
01 経済・社会活動の基盤となり、島嶼国の抱える拡散性・地理的隔絶性を克服するための経済・社会インフラの整備(保健医療を含む)
02 経済構造改革への支援
03 民間部門の振興に資する人材育成
04 環境保全対策への支援
05 遠隔教育を通ずる人材育成・技術移転等複数の域内国を対象とする広域的な協力の推進
(3) 大洋州地域の特殊性を勘案した援助
 島嶼国は、概して人口・経済規模が小さく地理的に分散している。また、開発計画立案能力、プロジェクト形成能力、リカレント・コスト負担能力が十分でない場合が多く、立案段階から協力を進める等地域の特殊性を勘案した方法での援助を検討していく必要がある。
 島嶼国が拡散性、遠隔性を克服し、国際市場に参入するためには、運輸・通信手段の充実も不可欠であるが、大洋州地域を総合的に捉えたアプローチも不可欠である。具体的には、地域協力の枠組みで地域国際機関に対する協力として、88年度よりSPFに対し資金協力を行っている(99年度は約40万ドルの拠出に加え、「太平洋・島サミット」において提唱した「日本とSPF諸国のパートナーシップの強化」の経費として100万ドルを追加拠出した。)。島嶼国の経済的自立を支援するためには民間セクターの育成が不可欠であるため、96年10月我が国はSPF事務局と共同で東京に「太平洋諸島センター」を開設し、島嶼国と我が国との間の貿易・投資・観光開発の促進に努めている。
(4) 援助調整・協調
 我が国が援助を実施する際には、二国間協力における援助調整及びそれを補完する観点からの国際機関(UNDP、ADB等)との協調も重要である。そのため、各国別援助調整のためのUNDPラウンド・テーブルにも参加している。
 また、大洋州地域における援助協調の動きとしては、珊瑚礁保全やトンガ学校教育に関する日米協力、島嶼国の地域保健水準の向上に関する日豪協力があり、更に、南太平洋大学の遠隔教育に対する支援を豪州及びニュー・ジーランドと共同で実施している。

表―2 大洋州地域に対する我が国二国間ODA実績
図―2 大洋州地域及び全世界に対する我が国二国間ODAの形態別構成(99年、支出純額)



表―3 大洋州地域に対する我が国二国間ODAの形態別・国別・年度別実績

(1) 有償資金協力
(2) 無償資金協力
(3) 技術協力
表―4 大洋州地域に対する我が国無償資金協力の分野別実績

(1) 全体内訳
(2) 一般無償内訳
表―5 大洋州地域に対する我が国技術協力の年度別・形態別実績
表―6 大洋州地域に対する我が国技術協力の分野別人数実績(99年度までの累計)
表―7 大洋州地域に対するDAC主要援助国の二国間ODAの推移
表―8 大洋州地域に対するDAC主要援助国の国別二国間のODA実績(98年)
表―9 大洋州地域に対するDAC諸国・国際機関のODA実績

ODA NET
政府貸付
無償資金協力
技術協力
ODA NET
政府貸付
無償資金協力
技術協力
前ページへ 次ページへ