VII 大洋州地域


1.概  説

(1) 大洋州地域の島嶼国・地域(以下、島嶼国という)は、域内では突出した人口・面積を有するパプア・ニューギニア(PNG)を除くと陸地総面積わずか9万km2で、いずれも人口100万人未満の小規模国家により形成されている。我が国が政府開発援助(ODA)を供与している島嶼国は、メラネシア(PNG、ソロモン、ヴァヌアツ、フィジー(一部ポリネシアに区分される)等)、ポリネシア(トゥヴァル、サモア、トンガ、クック諸島等)、ミクロネシア(キリバス、ナウル、ミクロネシア、マーシャル、パラオ等)の三つに大別される。人種・民族問題の存在、外国人行政官の存在等、それぞれが異なる伝統的社会基盤と旧宗主国、施政国等の影響とを混在させており、独特の社会環境を形成している。
 西カロリン諸島からメラネシアにかけての西太平洋の諸国は、面積も比較的大きく、PNGの金、銅、ニュー・カレドニアのニッケルに見られるように地下資源に富む国もあり、比較的土地生産性も高い。これに対して、中部太平洋のミクロネシアからポリネシアにかけては火山島や珊瑚礁島が多く、火山島が比較的肥沃な土壌を形成し熱帯性農作物の栽培に適しているのに対し、珊瑚礁島は生産性が著しく低いとの違いがある。
(2) これら島嶼国の地場産業はその殆どが一次産品依存型であるため、国際市況価格の影響を受け易く、品質の面からも十分な競争力を備えておらず、経済的に脆弱である。そのため、総じて旧宗主国等による無償援助を中心とする各種援助、あるいは出稼ぎ労働者の本国送金に大きく依存している。雇用確保の見地から、行政部門の肥大化と硬直化が見られ、その財源を外国からの財政支援に依存する側面もある。また、独立後間もないことから人材、経験の不足により政治・社会体制が十分に整備されていないことに加え、国土の拡散性、国内市場の狭隘性、国際市場からの地理的隔絶とこれを補完するための運輸・通信手段の不備、一部を除き天然資源に恵まれていないこと等から、多くの困難に直面している。
 また、旧宗主国の「援助疲れ」により財政支援は大幅に削減され、従来の依存関係が薄れてきていることから、これら島嶼国は、外貨獲得手段の多元化を図るとともに、公共部門の縮小、貿易・投資・観光促進を通じた民間セクターの育成努力等新たな経済運営を強いられている。
(3) 我が国政府の大洋州地域との関係は、第一次大戦時より第二次大戦終了までのおよそ30年にわたるミクロネシアの委任統治に始まる。その後も島嶼国の独立に伴い、友好協力関係を推進してきている。また、広大な漁業水域を有するこの地域は我が国遠洋漁業にとり伝統的な漁場である。更に、近年に至り、これら地域諸国の対日期待感の高まりに伴い要人等の交流も活発化しており、関係は一層緊密化しつつある。
(4) 島嶼国の間では、島嶼国の首脳で構成される「南太平洋フォーラム(SPF)」や経済・社会開発プロジェクトを実施する「太平洋共同体(PC)」等の地域機関を中心とした地域協力が進んでいる。また、SPFは89年より我が国を含む主要域外国との年次対話を行っている。我が国は89年当初よりほぼ毎年外務政務次官が出席しており、99年10月にパラオで開催された第11回域外国対話では東外務総括政務次官(当時)が出席し同地域への協力重視の姿勢を確認した。SPF側も96年の首脳会議コミュニケにおいて、我が国の安保理非常任理事国選挙立候補に対する「強く、かつ一致した」支持を表明する等、対日関係重視を打ち出している。96年6月には、ハイレベルの政策対話ミッションをパラオ、マーシャル、ヴァヌアツ、サモアの各国及びSPF事務局に派遣し、経済協力関係を含め幅広い議題について対話を行った。98年7月~8月には、堀元駐フィジー大使及び長谷川前駐豪大使を代表とするハイレベルの政策対話ミッションを10カ国・地域に派遣した。2000年4月には97年10月に開催された日・SPF首脳会議に続く2回目の会議として「太平洋・島サミット」を、森総理を議長として宮崎において開催し、「太平洋フロンティア外交」の提唱と「宮崎イニシアティブ」の発表等多くの成果を挙げた。
 また、我が国は毎年SPF議長を訪日招待し、日・SPF関係の促進に努めており、99年12月には、ナカムラSPF議長(パラオ共和国大統領:当時)が訪日した。
 なお、2000年5月及び6月にそれぞれ、フィジー、ソロモンにおいて政変が起きたことを受け、国際社会は、両国の民主化に向けた努力を注視している。

図―1 大洋州地域



表―1 大洋州諸国の人口、一人当たりGNP及び我が国との関係
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