地域によっては、交通網・通信体系の整備など、開発に際し国の枠にとらわれない広域的なアプローチが有効な場合があり、また、感染症・寄生虫症の問題など域内を視野に入れた協力が不可欠な場合がある(注)。更には紛争終了後、敵対していた関係国への復興支援においては両国が等しく裨益するような案件への協力が、紛争の再発を防止する意味からも極めて重要となる場合がある。日本も、これまで複数国にまたがる地域を対象として、より効果的に援助を実施するために様々な試みを行っている。
例えば、南部アフリカのザンビアとジンバブエの国境を跨ぐチルンド橋は、両国間の人・物資の往来に不可欠であるのみならず、インド洋につながる交通の要衝であるため、南部アフリカ全体にとっても極めて重要な役割を果たしている。しかし、老朽化や、狭い幅員といった構造上の問題が存在し、交通量が制約されていたことから、日本は、99年度から両国に対し新たな橋の建設のための無償資金協力を実施した。建設完了後は、チルンド地域をはじめとする両国のみならず、南部アフリカ開発共同体(SADC)域内の経済発展に寄与することが期待される。また、インドシナ地域を中心とするメコン川流域においても、同地域をタイからヴィエトナムまで横断する「東西回廊」と呼ばれる交通網整備計画が援助国、世銀、ADB等のドナー協調により進められており、日本もこれまで約40億円の無償資金協力を供与し、優先度の最も高い工区約73kmの道路建設に着手している。
なお、98年度より、複数国にまたがる広域インフラ案件に対する円借款については、関係国の中で最も所得水準の低い国に対する供与条件を一律に適用することとしており、こうした措置を通じて地域協力の進展を促し、支援を強化していくこととしている。