日本のODAの供与対象国が150を超える中で、着実に援助活動を続けていくためには、援助活動に従事する関係者の安全確保が欠かせない。援助関係者の安全対策は、ODA大綱上も実施体制等の強化を図る上で重要な課題として位置づけられ、従来からできる限りの措置を講じてきている。しかしながら、援助関係者が活動する途上国の治安状況は様々であり、また刻々と変化しているのが実情である。安全を脅かす要因も、テロや暴動、内戦などの極限状況から日常の一般犯罪に至るまで多様である。99年8月には、キルギス共和国でJICAから派遣された4人の資源開発調査団員が武装勢力に誘拐されるという深刻な事件が発生したほか、2000年以降もソロモン諸島やジンバブエ共和国において、治安状況の急激な悪化に伴い、援助関係者が国外へ一時退避するといった事態が発生している。
これらの事件をはじめとして、援助関係者の安全に関わる事件を教訓としながら
(注)、外務省は、技術協力の実施機関であるJICAと緊密に連絡を取りつつ、援助関係者の安全確保のため様々な対策を実施してきている。
具体的には、

専門家・協力隊員の派遣に際しては、派遣先国の国内治安状況等安全の確認を行い、安全に懸念のある国については派遣決定前に現地での安全確認取り付けを条件とするほか、派遣前の研修において安全対策についての講義を実施する、

調査団の派遣等に際しても、安全対策の基本や海外の治安状況等に関し、渡航前の説明を実施する。また、

在外公館、JICA事務所等のない国への専門家や調査団の派遣に当たっては、派遣前のブリーフィング実施は勿論のこと、通信手段の確保という観点から、インマルサットを携行させ、派遣期間中も随次現地情勢について連絡をとるようにしている。
この他、

JICA本部より毎年、特に安全に懸念のある国から7~8ヶ国を選び安全確認(対策)調査団を派遣し、治安状況、犯罪の趨勢を調査の上、安全確保の方法等について現地大使館をはじめ関係者と協議している。更に、

JICA在外事務所においても大使館をはじめ関係者とも協議の上、任国の治安情勢を分析し安全対策関連のマニュアルを作成するほか、緊急連絡網を随時更新したり、住宅の防犯設備設置、警備員の傭上、緊急警報装置設置を行う等安全配慮に努めている。
更に、

JICAによる現地での安全関連情報収集能力強化のための安全対策クラークの配置拡充、

JICA本部における安全関連情報分析能力の強化と現地との連絡強化のための安全情報室の設置や安全対策アドバイザーの配置を行い、こうした措置を通じて安全・治安状況の見直し体制そのものを強化しながら安全対策の一層の改善・強化に努めている。