世界の平和と安定に向けた軍縮・不拡散や紛争予防への取り組みは日本外交の重要な柱である。これらの課題と開発協力との係わりは近年ますます重要となっており、ODA大綱「原則」においても途上国の上述の分野における努力を慫慂するとともに、ODAについても様々な関連の取り組みが行われている。
紛争は、人道上の問題を引き起こすと同時に、これまでの開発の成果を損なうものである。また紛争後の復旧・復興やその後の開発を困難とする様々な傷跡を残す。特に、対人地雷の規制は、国際的な軍縮・不拡散の一つの流れであるとともに、紛争等の際に埋設される対人地雷による被害は、途上国の住民一人一人の生命や生活に直接的な影響を与え、この問題への対応は「人間の安全保障」の観点からも重要な課題である。紛争問題への取り組みについては、解決に向けた政治的努力とともに、紛争の潜在的要因への対応を通じた紛争発生の予防、紛争発生時の緊急人道支援、更には紛争終結後の復興・開発支援など様々な段階で開発協力を積極的に活用していくことが重要である。
冷戦後、軍縮・不拡散の分野において提起された小型武器の非合法製造、取引、移転、拡散、蓄積の問題は、緊急人道支援活動や、紛争後の復興・開発を阻害し、紛争を長期化、悪化させる要因になっている。このため、日本は紛争終了後に小型武器が問題となっている国、地域における同問題の解決に向けた取り組みを開始している(注1)。なお、日本がカンボディアにおいて取り進めている「武器回収の代価としての開発を提供するプロジェクト」については、軍縮と開発を組み合わせた包括的なアプローチとして国際社会において注目されている(注2)。
本章では、こうした「紛争と開発」に関する日本の取り組みについて、具体例を挙げて述べたい。
なお、紛争と並び、地震や洪水といった自然災害は、途上国における人々、特に貧困層の生活を根底から覆すものであり、「人間の安全保障」の観点からも重大な問題である。このような観点から、日本は、途上国における大規模な自然災害に対し、救助チーム・医療チーム等国際緊急援助隊の派遣、緊急援助物資の供与、あるいは緊急無償資金援助による緊急人道支援活動を行っており、2000年中はインドネシア・スマトラ島での地震災害のほか、モザンビーク等南部アフリカでの洪水災害などに際し支援を行ったほか、2001年1月に、エルサルバドルやインド西部において大規模な地震が発生した際に、医療チームの派遣、テント・毛布や医薬品・医療資機材の供与、緊急無償援助等を通じた支援を実施している。特に、インド西部地震災害に対しては、自衛隊の部隊等からなる国際緊急援助隊が緊急援助物資を自衛隊輸送機で被災地まで輸送し、テント設営技術指導等の災害応急対策活動を行った。