(1) 我が国は、アジア・太平洋地域の平和と安定及び発展にとりカンボディアの安定が不可欠であり、カンボディアが和平合意後の荒廃した国土の復旧・復興及び民主化を達成していくため、新政府が安定した政権を維持する必要があるとの認識の下、同国の復興及び民主化に向けた努力を積極的に支援することとし、DAC新開発戦略の重点国として、我が国ODA大綱を踏まえつつ協力を行っている。
なお、我が国は97年7月の二大政党間の武力衝突以降、カンボディア政府が、(1)パリ和平協定を尊重し、(2)現在の憲法及び政治体制を維持し、(3)基本的人権や自由を保障する((4)自由公正な選挙の実施に向け努力する)、との前提の下、現地の治安状況の改善等を慎重に見極めつつ、援助を実施することとしてきている。
重要な点として、DAC新開発戦略の具体的実施、ハード面及び法制度支援等ソフト面の協力、官民の有機的な連携、インドシナの広域的視点からの開発、治安への配慮等が挙げられる。
(2) 我が国は、カンボディア側との政策対話を踏まえ、人道援助を中心に緊急に必要とされる援助を実施するとともに、中長期的な視野に立って、(1)経済インフラ、(2)保健・医療等の基礎的生活分野、(3)農業、(4)人材育成等の分野を重点分野とし各種スキームを有機的に連携させて支援を行うこととしており、これまで無償資金協力及び技術協力を実施してきている。
(3) 我が国は、カンボディアの和平・復興及び安定に向け種々の外交努力を行ってきている。92年6月に「カンボディア復興閣僚会議」を主催したのをはじめ、中長期的な復興援助の調整メカニズムとしての「カンボディア復興国際委員会」(ICORC)の議長を93年から3年間務めた。また、96年7月には国際支援の新たな援助調整会合として、「第1回カンボディア支援国会合」(CG)が東京で開催され、我が国は世銀と共同議長を務めた。97年7月の二大政党間の武力衝突の際には、我が国はカンボディアによる自由公正な選挙実施を働きかけるとともに、政治的膠着状態打開のため4項目案を提出するなど積極外交を展開し、98年の選挙に際しては、資金協力及び人的支援を行った。
99年2月に開催された第3回支援国会合(CG)では、同国における兵員削減、森林保全、行政改革の必要性について確認され、それぞれのフォローアップのためのモニタリング会合を定期的に開催することで合意した。
我が国は、同支援国会合をカンボディアの発展と繁栄とプロセスの開始への重要な節目と位置付け、(1)退役軍人支援分野、(2)地雷除去・被災者支援分野、(3)森林保全分野、(4)基礎生活分野、(5)インフラ整備等無償・技術協力を中心とした支援を表明した。また、有償資金協力についても支援の可能性を検討していく旨表明した。2000年5月にパリで開催された第4回会合では、カンボディア政府の改革に向けた強い姿勢を受け、総額約5億5千万ドルの支援が表明され、我が国も総額1億4千万ドルの支援を表明した。
(4) 99年度における我が国の対カンボディア経済協力は、総額154.4億円、有償資金協力が41.42億円、無償資金協力が86.03億円、技術協力が23.3億円である。
有償資金協力については、同国がLLDCであり、政治的に不安定であったことから従来は見送ってきたが、最近の政治的安定及び新政権による経済再建のための種々の政策の着実な実施に鑑み、「シハヌークヴィル港緊急リハビリ事業」に対し、41.42億円の円借款を供与した。
無償資金協力では、運輸インフラ(道路・橋梁)整備を中心に、社会インフラ(上水道・電力)、農業案件、保健医療分野案件、選挙支援、食糧援助、ノンプロ無償を行っている。技術協力では、従来より保健・医療、農業等の分野を中心に行っており、最近は重要政策中枢支援として法制度整備支援を99年3月より実施している。地雷対策として98年度にはカンボディア地雷対策センター(CMAC)への90万ドル拠出及び専門家派遣を行った他、無償資金協力案件「地雷除去活動機材整備計画」(98年度、4億7,000万円)、「第2次地雷除去活動機材整備計画」(99年度、3億3,000万円)を実施しており、また、草の根無償を活用したNGOへの援助を行った。
開発調査については、経済・社会インフラ、農業を中心に実施してきているが、政策支援型案件や地域全体の開発に役立つ案件についても前向きに検討していく方針である。
またカンボディアにおけるユニークな協力として、93年度よりUNHCR(94年度からはUNDP)に対する我が国の拠出金を活用して派遣されるASEANの専門家と我が国の専門家、青年海外協力隊員とが共同で技術協力を行う「カンボディア難民再定住・農村開発カンボディア計画」(いわゆるカンボディア三角協力)が実施されている。更に「日・インドシナ友情計画」の下、95年度から毎年30名のカンボディア青年を我が国に招へいすることとしている。なお、98年7月の選挙運営への協力のため、580万ドルの国連開発計画(UNDP)信託基金への拠出を行うとともに、ノンプロ無償見返り資金のうち約300万ドルの使用を承認している。また、32名の選挙監視要員派遣を行った。そのほか、我が国は、カンボディアの法制度整備にも協力している。
(5) カンボディアの女性が経済・社会開発に果たしている重要な役割に鑑み、途上国の女性支援(WID)の分野での協力を強化している。例えば、草の根無償資金協力による各地の「WIDセンター」建設支援、カンボディア女性問題省への専門家派遣、「インドシナ地域WIDセミナー」(東アジア地域の概説参照)の結果を踏まえ96年11月に開催された「カンボディア国別ワークショップ」への協力、女性を主たる対象とした農村金融開発を行っている現地NGOへの支援、開発福祉支援事業による貧困軽減に向けてのリプロダクティブヘルス向上計画、母子保健に関するプロジェクト方式技術協力等が挙げられる。
また、カンボディアは、日米コモン・アジェンダにおけるWID分野での連携対象国とされており、日米両国は、女性を主な対象とした農村開発金融を行っている現地NGO支援を行うなど、成果を上げている。