[32]ホンデュラス

1.概  説

(1) 中南米諸国の中ではハイティ、ニカラグァ等と並んで最も経済開発の遅れている国の一つである。1982年に軍事政権より民政に移管した。94年1月に就任したレイナ大統領は、軍のシビリアン・コントロールの強化、義務徴兵制度の廃止、警察の文民移管に向けた憲法改正等、歴史的な業績を残したものの、大規模停電等による低成長率(94年)、インフレ昂進(96年25%)、基礎穀物の不足(96年)等の経済運営の失策により、政権支持率は低迷したままであった。
 98年1月に就任したフローレス大統領は、前政権の財政赤字大幅削減の実現を受け、社会的不均衡の是正を伴った経済発展を目指している。
 外交面では、基本的に対米関係を重視するが、冷戦後の変化を受け、自立的関係の樹立を目指しており、中米・カリブ諸国、南米諸国との結束を維持・強化している。
(2) 経済面では、農林業を中心とするモノカルチャー型経済であり、農業部門がGDPの約1/4(99年:約13.5億ドル)、労働人口の半分以上を占める。高い人口増加率(85―97年平均3.0%)もあり、一人当たりGDP(99年:819ドル)は長期にわたり停滞している。
 95年から、IMFと合意の上、財政赤字削減、生産奨励、物価対策、金融自由化等を内容とする新経済政策に取り組み、実質GDP成長率も95~97年は回復基調に乗った。特に97年の経済成長はコーヒー、バナナ、マキーラ(保税加工区)を中心とする輸出の好調に支えられたもので、外貨準備も過去最高の約5億ドルとなり、過去3年連続で25%を超えていたインフレ率も13%台となる等、マクロ経済指標は軒並み好転した。フローレス政権は消費税率の引き上げ、電話公社(HONDUTEL)の民営化案の国会承認等財政再建に取り組み、IMFとのESAF3年間協定調印がほぼ確実と見なされていた。98年10月、ハリケーン・ミッチによって約50億ドルの経済的被害を被ったことにより、経済計画の大幅な変更を余儀なくされた。フローレス政権は国家再建マスタープランを99年4月に作成し、同プランに基づき復興に努めている。
 財政赤字はカジェハス政権(89~93年)からの大きな負の遺産で、累積債務による元利支払いが、予算の約30%(98年度:約3.2億ドル)を占め、社会経済政策実施の上で大きな足枷となってきた。この傾向はハリケーン・ミッチによって悪化したが、ハリケーン被害の深刻さからホンデュラスはHIPCイニシアティブの早期適用を求め2000年7月、IMF、世銀はホンデュラスを拡大HIPCイニシアティブ適用国として承認した。
(3) 我が国とは1932年に外交関係が開設され伝統的に友好関係にある。大喪の礼、即位の礼に世界で最初に大統領が参列を表明する等、友好関係はより緊密化している。97年3月には、レイナ大統領、99年7月にはフローレス外相が訪日している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) ホンデュラスは中南米諸国の中で最も開発が遅れた国の一つであり、開発ニーズが高いこと、また、ホンデュラスの安定は中米地域の平和と安定に重要な意義を有していること等を考慮し引き続き援助を実施していく。
(2) 有償資金協力では、79年度以来、電力、通信、道路の分野のプロジェクト借款、構造調整借款ほか、債務繰延べも含め総額約434億円の協力を行っている。なお、同国は2000年7月、拡大HIPCイニシアティブの適用が決定されており、新規の円借款の供与は困難である。
 無償資金協力では、75年度に初めて食糧援助を行って以来、農業、保健・医療等の分野を中心に協力を行っている。また近年は、ハリケーン被災等もあり、橋梁等基礎インフラ分野に対する協力も実施している。
 技術協力では、農業、保健・医療、通信・放送などの分野を中心に各種形態により協力を行ってきており、特に98年度までの青年海外協力隊員派遣累計は700名で、中南米諸国中第1位でありホンデュラス側の評価も高い。また、プロジェクト方式技術協力を1件実施中である。開発調査については、運輸、保健等の分野で協力を行っている。
(3) 98年11月、ハリケーン・ミッチによりホンデュラスの人口の3分の1に当たる220万人が被災した際には、我が国は国際緊急援助隊として初の自衛隊の派遣を行った。陸上・航空自衛隊員185名のほか、外務省、JICA職員を加え総勢205名の緊急援助隊は、現地の青年海外協力隊員の通訳等の協力の下、首都テグシカルパで医療・防疫活動を2週間実施し、4,031名の診察と約3万m2の防疫を行った。
 また、99年2月に復興支援のニーズを見極めるために政策対話ミッションを派遣するとともに、99年度には、「子供の疾病対策計画」に医薬品・冷蔵庫購入資金を、2000年度には、ハリケーンで被災した7橋梁の復旧のための無償資金協力を供与するなど、復興支援を行っている。また、99年12月には、防災分野におけるプロジェクト形成調査を実施した。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
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