[22]ニカラグァ
1.概 説
(1) 1979年の革命において中心的役割を担った左翼のサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)のオルテガ議長は85年に大統領に就任したが、その後急激に左傾化した同政権に反発した反政府勢力(コントラ)との間で内戦が勃発した。88年、国際社会の圧力もあり、暫定停戦合意が成立した。
90年に国連等の国際監視の下で民主的な大統領選挙が実施され、国民野党連合(UNO)のチャモロ候補がオルテガ候補を破り、90年4月にチャモロ政権が誕生した。同政権はコントラの武装解除及び軍の削減を実施し、10年近くに及んだ内戦を終結させた。更に国家再建に取り組み、政治面では国内和解、民主化進展、外交面では、米国、西側諸国との関係修復、国際金融機関への復帰、中米統合プロセスへの参加等大きな成果を収めた。96年10月の大統領選挙の結果、97年1月に自由同盟のアレマン政権が発足した。新政権の最大の課題は、土地所有権問題の解決、経済再建等である。
(2) 経済面では、農牧業主体の経済であり、農牧業はGDPの約25%を占める。主要農産物はコーヒー、牛肉、砂糖である。90年のインフレ率は13,490%を記録したが、チャモロ政権の経済安定・構造調整計画の成果もあり、91年以降低下し99年は11.2%であった。99年の経済成長率は7.0%を達成した。他方、依然65億ドル(99年末)にのぼる対外債務や高い失業率、貧困層の増加等解決すべき課題も多い。更に、98年10月末のハリケーン・ミッチは経済に大打撃を与えた。
(3) 94年に開始されたIMFの拡大構造調整融資(ESAF)は、コンディショナリティ不履行のため中断されていたが、アレマン政権は税制改革や国立銀行の民営化を断行し、98年3月にESAF(2000年までの3年間で100.9百万SDRの融資)の再開にこぎつけた。
(4) ニカラグァは重債務貧困国(HIPC)に認定されており、債務削減措置である拡大HIPCイニシアティブの適用を申請中であり、2000年12月、世銀及びIMFのそれぞれの理事会において拡大HIPCイニシアティブの決定時点への到達が承認された。
(5) 我が国とは1935年に外交関係を開設した。91年2月には、チャモロ大統領が、ニカラグァ大統領としては初めて我が国を公式訪問し、両国関係の緊密化に大きく寄与した。また、アレマン現大統領も2000年5月に来日した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 内戦状態の終結を受け、チャモロ政権は西側諸国より経済援助を得て経済の再建に取り組んだ。我が国はニカラグァの安定にとって民生の向上、経済の早期回復が極めて重要であり、また、中米の安定が中南米の平和と安定に寄与することを踏まえ、ODA大綱の原則に則り、民主主義の確立と経済再建に対する同国の努力を積極的に支援する方針である。
ニカラグァにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年12月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるニカラグァ側との政策対話を踏まえ、我が国は、対ニカラグァ援助方針として以下を重点分野としている。
(イ) 社会開発・貧困対策分野
未だ経済発展の素地が整っていないニカラグァにおいては、経済改革の底支えのためにも保健・医療、教育、低所得者住宅、農業水産振興分野への協力が重要である。
(ロ) 社会・経済インフラ
内戦による破壊、長期にわたるメンテナンス不足に加え、ハリケーン・ミッチ(98年10月)に代表される自然災害によりインフラ不足が深刻な状況にあり、道路、橋梁、港湾、灌漑、エネルギー関連等への協力が重要である。
(ハ) 環境
持続可能な開発のためには、水供給、下水・排水対策、人口増加率の高い首都圏での廃棄物処理への協力が重要である。
(ニ) 民主化・経済安定化支援
我が国は、ニカラグァに対し民主化と経済安定化のための直接的な支援を行ってきたが、今後とも、NGO活動の重要性をも念頭に置き草の根無償の活用を継続していく。
我が国は従来ニカラグァに対しては技術協力及び災害援助を中心とした援助を実施してきたが、90年の内戦終結を機に無償資金協力を中心に援助を大幅に拡充しており、現在、同国への援助形態は多岐にわたっている。また、97年6月には、政府ミッションを派遣し、アレマン政権と初の政策協議を行い、94年12月に合意された上記重点分野を引き続き重点分野とすることを確認するとともに、先方より、その中でも農牧、保健・衛生、地方格差是正(低開発地域である大西洋側地域の開発を重視)の取り組みについて要望があった。更にハリケーン・ミッチ被災後、99年2月に政策協議を行うとともに、同11月には防災分野におけるプロジェクト形成調査団を派遣した。
(2) 有償資金協力について、我が国は民主政権成立後の経済再建支援のための国際的な資金協力体制作りに積極的に参加し、構造調整借款のほか、経済復興計画(第二期)に対して94年に38.78億円の円借款供与を行った他、99年には債務繰り延べを行っている。なお、同国には債務削減措置が適用されており、新規円借款の供与は困難である。
無償資金協力については、90年4月の内戦終結後、民主化支援の観点から大幅に協力を拡充し、また、98年にハリケーン・ミッチで社会基盤が大きな被害を受けたこともあり、医療・保健、基礎インフラ整備を中心に積極的な協力を実施している。
技術協力については、ニカラグァが内戦状態にあった89年度までは研修員受入れを中心とした協力を行っていたが、90年度以降は研修員受入れの拡充に加え、91年度よりは専門家の派遣を開始した。また91年7月に青年海外協力隊派遣取極を締結し、初の協力隊員を派遣した。開発調査については、都市の環境、交通等の分野で協力を行っている。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度実施開発調査案件
(参考2)99年度実施草の根無償資金協力案件
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