(1) 1980年のクーデター以降、軍事評議会が事実上政権を握っていたが、87年末に新憲法の下で行われた総選挙の結果、7年ぶりに民主政治が復活した。96年5月に総選挙、引き続き同年8~9月に大統領選挙が行われ、軍の支持する国家民主党(NDP)候補のウェイデンボスが大統領に就任したが、経済運営の失敗等により、同政権に対する国民の不満が高まり、99年5月には首都パラマリボで抗議行動が発生した。同大統領は総選挙を2000年5月に繰り上げ実施する旨発表し、抗議行動を終息させた。2000年5月の総選挙では、現与党は惨敗し、前与党ニューフロント連合が大躍進し、フェネチアン元大統領が再任された。
(2) 外交面では、旧宗主国オランダとの関係が中心となっている。必然的にオランダからの経済援助が占める割合が大きいが、近年オランダからは、援助効果が見られないとの消極的評価に加え、97年8月には国際刑事警察機構(ICPO)に対し麻薬取引容疑でボータッセNDP党首の国際指名手配要請があり、蘭・スリナム関係は悪化した。このため、前政権はオランダ一辺倒の外交を脱却し、多角的外交を推進したが、新政権発足により蘭・スリナム関係の改善が見込まれる。
(3) 経済面では、鉱工業(ボーキサイト、アルミニウム)を主要産業としており、ボーキサイト産業は輸出額の7割を占めている。石油と金も今後は有望視されており、政府は天然資源の有効利用で一人当たりGDPを2001年までに2,000ドル(97年1,320ドル)を目指すとしている。なお、97年には初の石油精製所が完成し、これまで野放しに密掘されていた金も政府が規制に乗り出している。
スリナムは主要外貨獲得源であるアルミナの輸出がふるわず慢性的な外貨不足にあり、基幹産業に必要な原材料、機械部品の輸入停滞、諸物資の欠乏現象が顕著で、インフレが進み国民生活に大きな影響を与えている。他方、95年後半より、物価の安定、通貨価値の回復が見られ下り坂をたどっていた経済に明るい兆しが見られており、GDP成長率も96年には3.0%、97年には5.0%と堅調に伸びている。
(4) 我が国との関係は、93年より開始された日・カリブ協議(カリブ共同体との政策対話)等を通じ強化されつつある。貿易関係では、スリナムからエビを輸入しており、スリナム沖合のエビ漁場では我が国の漁船が操業している。