[5]エクアドル

1.概  説

(1) 1822年の独立後、一時期を除き政情は安定せず、クーデターによる政権交代が繰り返されたが、1979年の民政移管後は民主体制が維持されている。98年8月、マワ前キト市長が大統領に就任し、深刻な財政赤字の改善のため、補助金の削減、金融取引税の導入を行ったが、厳しい経済状況が続く中、マワ政権の経済政策に反対する抗議行動等が頻発した。2000年1月末、先住民組織が一部軍人と共に国会を占拠し、一時暫定政権の設立を宣言したが、その後すぐにノボア副大統領(当時)が軍の支持を得つつ、議会の承認を経て新大統領に就任し、事態は収拾した。ノボア大統領は、ドル化政策を含むマワ政権の経済政策を引き継ぎ、3月には、ドル化のための経済変革基本法が成立した。また、4月にはIMFをはじめとする国際金融機関より今後3年間で総額20億ドル以上にのぼる融資が決定し、5月には公務員の給与等の値上げ、燃料価格の引き上げ等を内容とした経済・社会政策が発表されている。
(2) 外交面では、内政不干渉、民族自決、国家間の平等、軍縮支持などを基本方針とし、米国、欧州、環太平洋諸国との関係強化に力を注いでいる。また、アンデス共同体の加盟国として、アンデス・グループの政治的結束への努力も行っており、特にコロンビア、ヴェネズエラとは密接な関係を有している。ペルーとの間には長く国境問題が存在し、95年1月には軍事衝突も発生したが、マワ前大統領が、98年8月の就任以降フジモリ・ペルー大統領(当時)との直接交渉に乗り出し、リオ議定書保証国(米国、ブラジル、チリ、アルゼンティン)の四大統領の提案に基づき、同年10月最終合意に至り、99年5月には国境の最終画定を終えた。
(3) 経済面では、石油輸出国(92年OPECより脱退)であり、経済は石油に大きく依存するとともに、バナナ、コーヒー、カカオを中心とする農業や水産業が主要な産業となっている。貿易面でも、石油が輸出額の3割以上を占め、水産加工品(主にエビ)、コーヒー等の一次産品が残りの輸出のほとんどを占めている。
 72年に石油の輸出が始まると、第一次石油危機による原油価格の高騰を受けて石油輸出額は急増し、高い経済成長を遂げたが、86年以降、石油価格の下落、87年の地震災害、コーヒー価格の急落、洪水等の影響を受け、経済は深刻な打撃を被った。
 近年も、国際石油価格の低落、97~98年のエル・ニーニョ現象に起因する集中豪雨により海岸部を中心に大きな被害が発生するなど、元来の財政赤字に加え、経済的に非常に困難な状況にある。現政権の課題は、財政赤字の解消、ガス・電気補助金廃止(IMFの要望)、海岸部州の復興、電気通信会社等の民営化、原油等の伝統的輸出産品に対する過剰依存状況からの脱却等となっている。
(4) 我が国との関係は、伝統的に良好である。94年にドゥラン・バジェン大統領が、95年にはレオロ外相が、99年3月にはアヤラ外相が訪日している。また、93年11月には常陸宮同妃両殿下がエクアドルを訪問している。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) エクアドルは、伝統的に我が国と友好関係にあること、南米諸国の中でも開発の遅れている国の一つであり開発需要が大きいこと等を考慮し、無償資金協力及び技術協力を中心とした援助を実施している。99年2月には政策協議調査団を派遣し、貧困対策、生活環境関連等のインフラ整備、環境保全、防災等の分野における協力を重視していくことを確認した。
 また、ペルー・エクアドル国境問題和平が達成されたことを受け、99年8月にはエクアドル・ペルー国境地域開発に関するプロジェクト形成調査団を派遣するとともに、同地域の開発支援を目的に、資金協力、人的交流等を実施している。
(2) 有償資金協力では、これまでエネルギー分野における協力を行ったほか、電気・通信分野と農業分野に対しても協力を実施、また、債務繰延べも行っている。
 無償資金協力では、77年度以来、水産分野での協力を行っているほか、文化無償、災害緊急援助を行っている。また、91年度以降、医療・保健、飲料水供給、運輸分野等において一般プロジェクト無償資金協力を行っている。
 技術協力では、保健・医療、運輸・交通、エネルギー、通信・放送、水産の分野を中心に各種形態により協力を行っている。また、90年度より海洋研究センターに関するプロジェクト方式技術協力を行い、91年度より青年海外協力隊の派遣も実施している。開発調査については、運輸、鉱工業等の分野で協力実績がある。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施草の根無償資金協力案件
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