(1) 1958年の大統領選挙により民主政治の基盤が築かれ、二大政党による民主体制が継続していたが、98年12月の大統領選挙では、40年間の二大政党制による政治、司法の私物化を排するとして抜本的な政治改革を提唱するチャベス候補が当選した。チャベス大統領は制憲会議開催による新憲法の制定を最大の公約に掲げ、就任来政治改革に優先的に取り組み、99年には制憲会議開催のための国民投票、制憲会議議員選挙、新憲法に関する国民投票を行った。2000年7月には政治改革の集大成となるメガ選挙が実施され、チャベス大統領が再選されたほか、国会議員及び州知事選挙においても与党が大躍進を遂げた。
(2) 外交面では、米国との関係を重視しているが、OPEC(石油輸出国機構)の穏健派としてOPEC加盟国間の協調のために努力しているほか、中米、カリブ諸国との関係を重視し、メキシコとともにこれら諸国に特恵的に石油の供与を行うサンホセ協定などを通じて影響力を保持している。更に、アンデス・グループ、リオ・グループとの関係強化に努めている。94年末カルデラ大統領(当時)が米州マイアミ・サミットにて提案した「米州汚職防止条約」は、96年3月、カラカスにおいて21カ国により署名された。
(3) 経済面では石油に大きく依存する経済構造となっている。石油部門がGDPの約22%、総輸出額の約66%、公共部門収入の79%(95年)を占めている。石油以外にも、天然ガス、石炭及び水力のエネルギー資源並びに金、ダイヤモンド、鉄鉱石、ボーキサイト等の資源も豊富である。また、オリノコ川流域に超重質油(オリノコ・ヘビーオイル)が豊富に存在する。
(4) 96年以降、構造調整政策の進捗及び堅調な石油収入を背景に、マクロ経済指標が好転し、国際的信用の回復が図られたが、97年秋のアジア経済金融危機等により景気が後退。99年4月以降、原油価格が大幅に上昇したにもかかわらず景気は引き続き低迷し、国内総生産は約7.2%の大幅なマイナス成長になり、失業率も上昇した。インフレ率は20%に低下したが、引き続き高水準にある。他方、財政赤字は解消されなかったものの、大幅に改善し、外貨準備高も維持され、国際収支の改善と共に為替も安定的に推移した。チャベス大統領は、貧困者対策用の社会関連プロジェクトを掲げたものの、景気浮揚策を打ち出せず、景気は回復の兆しを見せていない。99年末の豪雨災害の影響等もあり、厳しい状況が続くと見られている。
(5) 我が国との関係は伝統的に良好である。92年、我が国皇族として初めて皇太子殿下が御訪問されたほか、93年には武藤外務大臣(当時)が訪問、97年2月にはリバス外相、99年10月にはチャベス大統領が訪日するなど友好関係は進展している。
我が国はヴェネズエラに対し主に自動車、機械等を輸出しており、アルミ地金(全輸入額の6割以上)、石油、鉄鉱石等を輸入している。日本からの対ヴェネズエラ投資は88年より鉄鋼、石油化学、自動車等の分野で大型投資が行われ、投資額は急速に増大した。その後、90年代に入り、我が国のバブル経済の崩壊、ヴェネズエラの金融危機等により投資は停滞したが、96年上半期以降やや持ち直している。