[16]モロッコ

1.概  説

(1) 国事全般にわたり国王自らの親政により決定されるという権力構造を基礎としている。一方で一定の民主化措置の導入も進めており、96年9月の2院制導入等を内容とする憲法改正の国民投票を踏まえて、97年11月及び12月には両院の選挙を実施し、その結果、98年3月に野党(当時)・中道・無所属による連立政府(首相は社会主義政党出身)が成立し現在に至っている。
(2) こうした中、ハッサン2世国王が99年7月に逝去、皇太子がモハメッド6世として即位した。同国の政治・社会情勢は、故ハッサン2世国王の38年間に亘る親政下において、比較的安定的に推移してきた。新国王は前国王の国家発展事業の継承を表明している。同国王は、貧困対策等の社会政策を重視し、「弱者のための王」のイメージを打ち出すとともに、民主化、経済自由化等各種の改革を進めている。
(3) 外交面では非同盟及びアラブ諸国との連帯を標榜しつつ、現実的かつ穏健な外交政策を追求するとともに、西側諸国とも良好な関係を維持している。
 中東和平問題については、パレスチナを支援する一方、イスラエルともパイプを有し、同問題の平和的解決のため尽力している。94年には第一回中東・北アフリカ経済サミットを主催。キャンプ・デービッド首脳会談後モロッコを訪問したアラファト・PLO議長はモハメッド6世が委員長を務めるOICエルサレム委員会の開催を要請した。また、湾岸諸国とは王室を通じた緊密な関係にあり、特に、故ハッサン2世国王はアラブ世界において歴然とした影響力を有してきた。西サハラの領有権問題については、国連監視下の住民投票の実施が、特定部族の有権者認定を巡る当事者間の争いにより数度延期され、その実施は2002年以降になる見通しである。現在、ベーカー特使(元米国務長官)が仲介努力を行っている。
(4) 経済面では、従来より旱魃等の気象条件による農業生産の不安定性、世界の埋蔵量の約75%を占めるリン鉱石、石油の国際市場価格変動等の影響で、外的要因により経済変動が大きいという脆弱性を抱え、恒常的な貿易収支赤字状態にある。また、若年層の高失業率、貧富の格差、地方と都市部の格差等の社会問題を抱えている。これまで世銀・IMFの支援を得て、徴税能力の強化、税制改革、公共投資の増加、予算編成能力の強化、一般歳出の合理化、関税合理化、柔軟な為替レートの設定、対外債務管理能力の強化等を内容とする包括的な構造調整を行っている。
 現在、2010年までにEUとの自由貿易圏の樹立を目指し努力を行っており、国内的には本年より新5カ年計画をスタートさせ、強固かつ持続的な成長の確保と社会階層間及び地域間の格差を是正し安定した社会を作り上げるべく積極的に取り組んでいる。
(5) 我が国との関係は従来より良好であり、要人往来も比較的活発である。貿易関係については、我が国はモロッコから魚介類等を輸入し(98年輸入額2億6,239万ドル)、同国に自動車、映像機器、精密機械等を輸出している(同輸出額1億3,642万ドル)。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 我が国は、モロッコが、(1)穏健かつ現実的な外交政策をとり、北アフリカ・地中海地域の安定勢力となっており、中東和平問題の解決にも尽力していること、(2)83年以降積極的に構造調整に取り組んでいること、(3)民主化努力を着実に推進していること等に鑑み、有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の各形態により積極的に援助を実施している。99年7月に経済協力政策協議を実施し、(1)主要産業の一つである農業及び水産業の開発・振興の支援、(2)限られた水資源の効率的利用のために、農業用水、飲料用水確保のための水資源開発のための支援、(3)持続的経済成長を支える基礎インフラ整備分野への支援、(4)都市・地方間の格差是正のための地方開発分野への支援、(5)発展のための持続可能性確保のための環境分野での支援の5分野を重点とすることを確認した。なお、技術協力においてはこれらに加えて資源開発を中心とした鉱工業分野も重点対象としている。今後とも、同国の民主化、経済改革努力及び同国の最重要課題の1つである社会格差是正努力を支援するため、各形態による積極的な援助実施を検討していく方針である。
(2) 有償資金協力については、93年の債務返済の開始を受け新規円借款の供与を再開して以降、ほぼ毎年円借款を供与している。無償資金協力については、86年度に一般無償資金協力対象国に移行して以降、保健・医療、水供給分野等の基礎生活分野、農業分野、水産分野を中心に援助を実施している。技術協力については、無償資金協力との連携によるプロジェクト方式技術協力、無償、有償資金協力との連携を念頭に置いた開発調査を積極的に実施しているほか、農林水産、鉱工業、運輸・交通等の分野を中心に各形態で積極的に協力を実施している。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
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