[13]トルコ

1.概  説

(1) 政治面では、99年4月の総選挙で民主左派党、民族主義者行動党が躍進し、両党に祖国党を加えた3党から成る現エジェビット連立政権が誕生した。2000年5月には、任期満了に伴う大統領選挙が行われ、セゼル憲法裁判所長官が共和国第10代大統領に選出された。内政上の課題としては、99年11月に死刑判決が確定したオジャランPKK(クルド労働者党)党首の死刑執行問題、PKKテロ問題の沈静化に伴い国内問題としてその比重が高まっているイスラム主義勢力への対処、及び経済構造改革の継続等が挙げられる。
(2) 外交面では、OECD及びNATOの加盟国として欧米寄りの穏健かつ現実的な路線を基調とする一方、旧ソ連邦のNIS諸国(特にトルコ系諸国)の独立後は同諸国との関係を重視している。また、近隣の東欧及び中近東諸国とも善隣友好関係を志向し、外交の多角化に努めている。99年12月のヘルシンキ欧州理事会においてEU加盟候補国の地位が認められたことにより、停滞しつつあったEUとの政治的関係が改善されたほか、2000年1月及び2月には、ギリシャとの間で約40年振りに外相の相互訪問が実現し、二国間関係の促進が図られるなど、欧州との関係に大きな前進が見られている。
(3) 経済面では、トルコ政府は98年以来、IMFの協力を得てインフレ率の低下と財政収支の改善に向け経済構造改革を着実に進めてきたが、99年6月には新銀行法、同8月には社会保障制度改正法案を成立させ、投資紛争に係る国際仲裁制度の導入が可能となるよう憲法の改正も実現、さらに、公共企業体の民営化も順調に進めている。
 99年8月のトルコ大地震によってトルコ北西部の先進工業地帯の大部分が被災したこともあり、同年の経済は大幅なマイナス成長となり、低下傾向にあったインフレ率も再び上昇する等客観的には不利な数字を残したが、IMFはトルコ政府の財政改革に向けての前向きな取り組みを高く評価し、スタンド・バイ・クレジットの供与を決定している。
(4) 我が国は1925年に中近東地域における最初の大使館をトルコに開設して以来、今日に至るまで良好な外交関係を維持しており、両国間における要人の往来も活発である。最近では96年5月に池田外務大臣(当時)、99年8月には高村外務大臣(当時)が同国を訪問し、95年2月にチルレル首相(当時)、2000年4月にはジェム外相が、また6月の小渕前総理大臣の葬儀にはエルシュメル副首相がそれぞれ来日した。
 貿易関係については、我が国はトルコから加工食品、金属原料、葉煙草、敷物等を輸入し(99年輸入額約1億2,200万ドル)、また、同国には自動車、電気機械、原動機等を輸出している(同輸出額13億9,300万ドル)。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) 我が国は、トルコが、(1)穏健かつ現実的な外交路線を基調とし、欧米先進諸国との協調並びに隣接する東欧諸国、NIS諸国及び中近東諸国との善隣協力関係を志向し、地域の安定化に貢献していること、(2)大きな人口を有し、また、市場経済・対外開放政策の推進を通じて、経済的潜在性が高いこと、(3)アジア、中近東及びヨーロッパの結節点に位置し、その地理的重要性が高いこと、(4)従来より我が国と良好な二国間関係を有していることから、対中近東地域援助の重点国の一つとして積極的に協力を行っている。
 なお、同国は一人当たりGNPが比較的高い水準にあることから、有償資金協力及び技術協力を中心に援助を実施している。98年9月には経済協力政策協議を実施し、今後の我が国の援助のあり方についてトルコ側との政策対話の結果、環境(都市環境の改善、海洋汚染対策)、経済社会開発促進のための人材育成、地域間格差是正のための農漁業等主要産業の振興及び保健・医療等基礎生活分野の改善、南南協力を重点的に支援していくことが確認された。
 今後とも、同国の政治的・経済的安定を支援するため、有償資金協力及び技術協力を中心に積極的な援助実施を検討していく方針である。
(2) 99年度までの我が国の援助累計実績についてみると、有償資金協力は4,200.99億円(交換公文ベース)、技術協力は296.41億円(JICA経費実績ベース)で、それぞれ中近東域内第2位と、積極的に協力を行っている。
(3) 有償資金協力については、これまで運輸、エネルギー、水供給分野をはじめとするインフラ整備を中心に実施してきている。但し、同国の所得水準が我が国円借款供与基準を上回るようになったことから、今後は原則として環境案件に限って例外的に検討を行うこととしている。無償資金協力についても同様に、同国の比較的高い所得水準に鑑み、一般無償資金協力は実施していないが、文化無償協力をほぼ毎年度実施している。またトルコ内でのNGO活動支援のため草の根無償資金協力を2000年度に導入した。
 技術協力については、保健・医療、運輸・交通、鉱工業等の広範囲の分野で、プロジェクト方式技術協力、研修員受入、専門家派遣、開発調査等を実施している。また、96年度より中央アジア・コーカサス地域を対象とした第三国研修を実施している。
(4) トルコ北西部で、1万7千人以上にのぼる死者を出した99年8月の大地震の際、我が国は、直ちに国際緊急援助隊救助チームと医療チームを派遣するとともに、総額約100万ドル(のち200万ドル追加)の緊急物資、緊急無償援助を実施したほか、耐震診断専門家チーム、及び、阪神・淡路大震災の経験を生かすべく、ライフライン復旧専門家を派遣した。また復旧・復興のために緊急に必要な物資の輸入に充てるため、例外的に商品借款236億円を供与した。加えて、住居を失った被災者のために仮設住宅計約2100戸を供与、専門家チームによる建設指導も行った。我が国支援による仮設住宅の「日本村」では、コミュニティー支援も行っており、両国の友好のシンボルとなっている。
 このように、我が国は救命、物資、資金、技術とあらゆる手段をもって全面的に支援を行っているが、今後のトルコの復旧・復興努力に対して、必要な協力を行っていく方針である。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績

DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
前ページへ 次ページへ