我が国は、エジプトにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び92年2月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等におけるエジプト側との政策対話、ならびに国別援助計画を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
民間資金やOOFとの連携を重視しつつ、インフラ整備への民活導入を支援する。また、各種産業の育成、輸出振興を通じ、貿易・投資拡大のための支援を行い、重要な外貨源である観光業の振興も支援する。インフラ整備に当たっては、新しい情報通信技術の利用の可能性も検討する。
(ロ) 農業生産の拡大
食料の国内需要増大をまかない貧困を緩和するためにも農業生産を拡大する必要性は高い。農業生産性向上のための農業基盤整備や食糧増産援助を実施してきており、これらを継続すると共に、農業・農村開発、農業生産技術の向上、農産物加工・流通の改善及び水産業の振興等の分野においても支援する。
(ハ) 保健・医療の充実、社会福祉の向上
小児医療や看護婦の育成といった従来の協力とともに、保健・医療の質、特に基礎医療分野におけるサービスの質の向上を図り、死亡率の低下や治癒率の向上に資する支援を行う。また、環境保健等への対応、保健・医療システムの改善、社会福祉の向上を図る。
(ニ) 人材育成、教育の充実
人材育成、教育の充実は、あらゆる分野の基礎となり、エジプト自身による持続的開発を支えていく礎ともなるため、教員の再訓練などの支援を行い、長期的視点に立って基礎教育、人材育成分野の底上げを目指す。また政府の効率性改善の観点から、組織のスリム化、公務員の質の向上を目指した研修員の受入を継続する。
(ホ) 環境の保全、生活環境の向上
環境モニタリングや産業汚染対策、風力や太陽光のようなクリーンエネルギーの分野において緊密に協力していく。エジプトの持続的な成長を可能とするため、安全な飲料水の安定供給などを含む生活環境の向上及び環境の保全を目指した包括的な支援を実施する。
なお、我が国は、GII(人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ)の人口分野における重点国の一つとして同国を位置付けている。
(3) 有償資金協力については、債務を段階的に実質50%削減するとの91年5月のパリ・クラブにおける合意を受け、同年7月より実質的な債務削減を実施していたため、新規円借款の供与を実施してこなかったが、96年10月に経済改革プログラムに関するIMFとの合意が成立したこと及び債務削減の最終段階に移行したことを踏まえ、96年11月の中東・北アフリカ経済会合のカイロ開催の機会に新規円借款の供与再開検討の意図を表明した。99年4月のムバラク大統領訪日時に正式に円借款再開要請があったことを受け、具体的優良案件の形成・検討を進めているところである。
無償資金協力については、食糧・農業分野、保健・医療分野、水供給分野等の基礎生活分野を中心に、運輸・交通分野等幅広い分野で援助を実施してきており、「スエズ運河架橋建設計画」等複数年にわたる比較的大規模な案件も多い。
技術協力については、農業、保健・医療、工業、運輸・交通等の広範囲の分野に、プロジェクト方式技術協力、開発調査等を中心に積極的に実施している。我が国とエジプトは、98年10月には、我が国のアフリカ諸国に対する効果的かつ効率的な技術協力の一形態として「アフリカにおける南南協力の推進のための日・エジプト三角技術協力計画」に関する枠組み文書に署名し、具体的な行動計画を作成のうえ実施していく方針である。かかる協力は、今後の国造り・人造りが課題となっているパレスチナ人を対象にしても強化されていくべきである。
なお、資金協力と技術協力との効果的な連携は援助の質と実効性を高めるものであり、「カイロ大学看護学部」、「水道技術訓練研修センター」及び「環境モニタリング研修センター」に対するプロジェクト方式技術協力は無償資金協力との連携で実施されている。