(1) 90年8月、イラクは突然クウェイトに侵攻したが、国連安保理決議に従った多国籍軍の武力行使により、91年2月には軍事的に敗北してクウェイトより撤退し、同年4月停戦に至った。なお、北イラクはクルド人勢力の支配下にある。
(2) 経済は、原油輸出に大きく依存しているが、クウェイト侵攻を機に国連による厳しい経済制裁が課されるとともに多国籍軍の攻撃により工業施設やインフラが破壊され、同国経済は大きな打撃を受けた。停戦後、破壊された施設のうち約8割以上が既に修復されたとも言われるが、現在も継続中の経済制裁のため、国内経済は相当の打撃を受けている。他方、イラク国民の窮状に鑑み、95年4月、国連の監視の下、人道物資購入のためイラクの限定的石油輸出を認める安保理決議986が採択され、96年12月より現在に至るまで継続的に実施されている。また99年12月には、安保理決議1284が採択され、石油輸出額の上限が撤廃された。同決議では、軍縮分野での協力を条件に、経済制裁を一部停止するとの新たな概念が導入されたが、イラクが同決議に協力するかどうかが注目されている。
(3) 我が国は、従来、イラクから原油等を輸入し、同国に機械、鉄鋼等を輸出していたが、90年8月に制裁措置が導入されて以来、両国間の貿易は原則として停止してきた。しかし、96年12月に安保理決議986が実施に移されたことにより、国連の承認を得た上で、少量ではあるがイラク石油の輸入、人道物資の対イラク輸出が再開された。